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コンプライアンス

1. 基本的な考え方

ステークホルダーと良好な関係を築き、信頼され、必要とされる企業市民となることを目指しています。法令を遵守することは当然のこととして、経営方針「ステークホルダーへの責任」を果たすために企業倫理を実践します。

2. JSRグループ企業倫理要綱

JSRグループでは、国内外のグループ各社が一体となって企業倫理活動の推進を図っています。そのために、企業理念体系を反映した、グローバル共通の具体的なガイドラインとして、「JSRグループ企業倫理要綱」を制定しています。

これは、グループ各社が経営方針「ステークホルダーへの責任」を果たしながら企業活動を展開するために、各社の役員と従業員(社員、嘱託社員、契約社員、パート社員、派遣社員)の一人ひとりが遵守すべき行動規範です。当社グループは、グループ各社の役員・従業員にこの行動規範に反する行為を行うことはさせません。また、当社グループは、役員や従業員がこの行動規範に反する行為を命じられるようなことがあった場合に、当人がその実行を拒んだことで不利益を被るような扱いをしません。

※ 企業理念体系:企業理念、経営方針、行動指針を企業理念体系としています。

JSRグループ企業倫理要綱の図

3. 推進体制

企業倫理委員会が中心となってコンプライアンス活動(企業倫理活動)を推し進めています。同委員会が、グループの法令遵守状況の確認とフォローアップ、人権の尊重に関する取り組みの推進も担っています。

推進体制の図

4. 企業倫理活動

企業倫理活動を、以下の3つの柱で進めています。

(1)JSRグループ企業倫理要綱の周知、教育

JSRグループは、グローバル共通の行動規範として「JSRグループ企業倫理要綱」を制定し、その内容を周知しています。日本語版のほか、英語版、中国語版(簡体字および繁体字)、韓国語版およびタイ語版を発行して、各国のグループ会社の役員と従業員が母国語(もしくはそれに準じる言語)で「JSRグループ企業倫理要綱」を理解しやすい環境を整備しています。

JSRグループ国内全従業員を対象に毎年、企業倫理要綱を題材としたイーラーニングを実施しており、機密情報の管理、パワーハラスメント防止、データの改ざん防止などのテーマを織り込んでいます。新入社員研修、新任管理職研修などの階層別教育においても企業倫理に関する教育を実施しています。特にハラスメント教育に関して、上位職・管理職などを対象に、いじめやハラスメントの報告、実例の扱いに関するマネジメント研修を行っています。

JSRグループ企業倫理要綱
(日本語版:2023年1月1日改定、その他の言語:2021年1月1日改定)

(2)企業倫理意識調査

JSRグループは、国内外グループ各社の役員・従業員を対象に企業倫理意識調査を毎年行い、企業倫理上の課題の把握と改善に努めています。調査結果は、企業倫理委員会での報告を経て役員会議に報告されます。その後、社内イントラネットに、調査結果の概要とそこから抽出された課題、またそれらについて説明した担当役員のメッセージを掲載し、従業員にフィードバックしています。海外グループ会社においては、現地の文化などを踏まえた方法で、ローカルスタッフを含む従業員の企業倫理や法令遵守の意識強化を図っている例もあります。

(3)ホットライン(内部通報制度)

JSRグループでは、内部通報制度として「企業倫理ホットライン」を導入しています。これには当社やグループ企業各社の企業倫理委員会を窓口とする「社内ホットライン」、社外の弁護士や専門機関を窓口とする「社外ホットライン」「取引先企業ホットライン」の3種類が存在します。このうち、社外の専門機関を窓口とする社外ホットラインでは、日本語、英語、韓国語、中国語、タイ語を含む16か国語での対応が可能で、海外の事業所も利用しやすい体制を構築しています。
コーポレートガバナンス・コードにおいては、内部通報にかかる体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置を行うべきとされています。この点を踏まえ、社外ホットライン窓口からの通報は、事務局と常勤監査役に同報される体制としています。個々の通報案件については、該当する会社の企業倫理委員会事務局が、関係する部門に対して事実関係の調査を要請します。その報告をふまえ、対策案を協議・決定したうえで、対策を実施し、結果をフォローします。フィードバックを希望する通報者へは、一連の対応状況と結果を、通報を受けた窓口から連絡しています。
これらホットラインをより活用しやすいものとするために、社内イントラネットやWeb版社内報のトップページにアクセス先を掲載・掲示しています。

また、国内グループ各社が意識合わせをして課題に取り組むために、国内グループ各社の企業倫理実務担当者とJSR企業倫理委員会とで年1回の定期会議を開催しています。

JSRグループ ホットラインの利用状況(件数)
JSRグループ ホットラインの利用状況(件数)のグラフ
内部通報があった場合の流れ
内部通報があった場合の流れの図

2022年度の通報件数は11件で、うち6件がパワハラに関する通報でした。各案件とも適切に対応しています。

JSRグループ 取引先企業ホットライン

日本国内では、2022年6月から改正公益通報者保護法が施行されました。これを踏まえ、購買取引先が利用できる通報窓口「サプライヤーホットライン」を発展させ、 購買取引先に限定せず広く当社グループとの取引のある企業も利用できる「JSRグループ取引先企業ホットライン」を設置いたしました。
JSRグループ取引先企業ホットラインは、取引における法律違反や企業倫理違反もしくは疑わしい行為を早期に発見して解決するために、お取引先様からの通報を受け付ける窓口です。窓口業務は従業員向けホットラインと同じ社外の専門機関に委託し、通報の秘密厳守と通報者の不利益となる取り扱い禁止を徹底することで、信頼度の向上に努めています。

なお、2022年度のJSRグループ取引先企業ホットラインへの通報件数は0件でした。

5. 法令遵守への取り組み

JSRグループ各社は、法令遵守の体制の基礎となる法令遵守規程を定めています。そのうえで、法令遵守を確実にするため、遵法状況の確認および改善を定期的に実施し、また、法務教育により法令内容の周知・啓発やコンプライアンス意識の浸透を図っています。業務を執行するうえで特に重要な法令については、個別の遵法体制を構築するなど、重点的な対応を行っています。

① 贈収賄防止、不正競争防止への取り組み

JSRグループでは、すべての役員、従業員などが、業務遂行にあたって日本の不正競争防止法、米国の連邦海外腐敗行為防止法(the U.S. Foreign Corrupt Practices Act)、英国の贈収賄防止法(the U.K. Bribery Act)、その他の腐敗防止関連法令を遵守するために必要な事項を定めた、「贈賄防止に関する基本方針」「腐敗防止関連法令の遵守に関する規程」「贈答・接待に関する基準」を制定しています。また、各国の独占禁止法(競争法)を遵守するために必要な事項を定めた、「独占禁止法遵守に関する規則」「米国競争法遵守に関する規則」「EU競争法遵守に関する規則」「韓国公正取引法遵守に関する規則」を制定しています。

また、贈賄防止において重要な代理人などの第三者のデューデリジェンスについては、「代理人等に対するデューデリジェンスガイドライン」を定め、これに従って自己チェックおよび外部のデータベースを利用した調査を行い、贈賄リスクの低減に努めています。

グローバルなイニシアティブへの参画

JSRは、国連「グローバル・コンパクト」のローカル・ネットワークであるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)腐敗防止分科会に参画しています。当該分科会では専門家を招いた講義や、参加企業間で腐敗防止対策に関する情報交換など、様々な活動を行っています。JSRではこれらの活動を通じて、JSRグループにふさわしい実効性ある腐敗防止対策のあり方を探索・検討し、実施につなげています。
腐敗防止対策は、各国の関連法令遵守というコンプライアンス体制推進の側面が強い一方で、根底においては人権・労働・環境に係るグローバルな社会的課題とも密接に結びついています。引き続き、実効性ある腐敗防止対策を実施するとともに、あるべき姿を探っていきます。

また、当社グループは2020年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への支持を表明しました。TCFDへの取り組みの詳細については、下記を参照ください。

② 税務への取り組み(基本的な考え方)

JSRグループは、各国の関連法令および規程に則った税務管理と適切な納税を行うことが、各国の経済および社会発展に重要な役割を果たすこととなり、すべてのステークホルダーの支持と信頼に応えることにつながると理解しています。

JSRグループでは、CFO(最高財務責任者)が下記の考えを支持し、税務に取り組んでいます。
『JSRグループでは、移転価格税制・タックスヘイブン対策税制含め、各国の法令に則って適正に納税を行います。』

(1)遵法状況の確認/改善

JSRグループでは、法令遵守規程に基づき、業務を執行するうえで重要である法令を全社重要法令として選定し、毎年1回、グループ全体で、業務執行が全社重要法令に適合しているかを自己チェックする遵法確認を実施しています。定期的にJSRグループ内での不適合事例を情報共有することが、法令違反の未然防止と不適合の早期発見および改善に役立っており、コンプライアンス意識の向上にもつながっています。なお、2022年度の遵法確認において、重大な法令違反は確認されませんでした。

(2)教育・啓発

コンプライアンスハンドブック

JSRグループでは、日本版、韓国版、中国版のコンプライアンスハンドブックを発行して、日本・韓国・中国の各国従業員に対して法令遵守ポイントの周知徹底を図っています。特に中国版と韓国版は、中国・韓国にあるグループ企業だけでなく、中国企業または韓国企業に対して製品の販売やサンプルの提供を行うなどの、ビジネス上で中国または韓国と関わりのある部門やグループ会社にも配布して、中国・韓国における法令遵守のポイントを周知徹底しています。

2022年4月の日本版のコンプライアンスハンドブック改訂に続いて、2022年10月には、関連する法改正を踏まえ、中国版・韓国版のコンプライアンスハンドブックを改訂し、従業員に再配布しました。

コンプライアンスハンドブックの写真
コンプライアンス
ハンドブック

セミナーおよびイーラーニング

遵守すべき法令および関係する社内方針、規程等を周知徹底する目的で、法務教育の一環として、定期的なセミナーの開催、JSRグループ各社の役員と従業員を対象としたイーラーニングの実施などを行っています。2022年度に実施した主要なセミナーは以下の通りです。

  • 2022年6月:腐敗防止関連セミナー
  • 2022年9月:独占禁止法・腐敗防止関連法令・安全保障貿易管理イーラーニング
  • 2022年12月:インサイダー取引防止イーラーニング
  • 2023年2月:独占禁止法セミナー
  • 2023年3月:安全保障貿易管理セミナー

また、企業倫理に関するイーラーニングも実施しました。
これらのほか、赴任者教育(独占禁止法、腐敗防止関連法令などの教育)など、部門や会社ごとに個別の法務教育も実施しています。

6. 個人情報保護への取り組み

JSRグループは、高度情報通信社会における個人情報保護の重要性を認識し、「個人情報の保護に関する法律」に基づいてプライバシー・ポリシーおよび個人情報取扱規程を定めています。あわせて、マイナンバー制度に対応するため特定個人情報取扱規程を定めています。
これらの規程のなかで、関連法令およびプライバシー・ポリシーに基づき、特定個人情報などの「取得」、「保管」、「利用」、「提供」、「開示、訂正、利用停止」、「廃棄」の各段階における留意事項および安全管理措置について定め、特定個人情報などの適正な取り扱いを確保しています。

また、GDPR(EU一般データ保護法)の保護対象となる個人データを取り扱うグループ会社に対して、対象個人データの取得・処理・移転にあたってGDPR遵守体制を構築・運用するためのサポートを行っています。

7. 生命倫理への取り組み

(1)人を対象とする生命科学・医学系研究に対する取り組み

JSRグループでは、主にライフサイエンス事業に関連して、人を対象とする生命科学・医学系研究を実施しています。実施にあたっては各国の法令・規制を遵守しています。また、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合同指針「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づき、本指針に該当するJSRおよび医学生物学研究所(MBL)で必要な社内規程を定めるとともに、研究内容を倫理的、社会的観点から審査するため、社内外の委員から構成される倫理審査委員会を設置しています。該当する研究は、この委員会において審査・承認された研究計画に基づいて実施されます。さらに、このような研究に関係する社員を対象に、生命倫理に関する教育研修を行い、適正な研究の推進に努めています。

各社の倫理審査委員会の委員名簿、規程および議事録要旨は、厚生労働省の研究倫理審査委員会報告システムに登録しています。以下のリンク先にアクセスして、閲覧者用画面ボタンを押して進み、設置機関の名称にJSRまたは医学生物学研究所と入力し、検索ボタンを押して閲覧ください。

(2)動物実験に対する倫理的配慮

化学品や医薬品、医療材料の開発過程において、人体への安全性および有効性を確認するためには、法規制等により動物実験が必要不可欠となります。JSRグループでは、医薬品の開発支援に取り組む中で、各国の法令・規制を遵守した、適正な動物実験の実施に努めています。各社で法令等に準拠した社内規程を定め、動物実験委員会を設置・運営しています。動物実験委員会では、3Rの原則(Replacement:代替法の活用、Reduction:使用数の削減、Refinement:苦痛の軽減)を含む動物福祉、動物倫理および科学的な観点から厳正な審査を行い、適正に動物実験を管理しています。また、動物実験の実施状況については年1回以上自己点検・評価を行い、各種法令や指針に適合していることを確認しています。さらに、JSRグループでは、動物実験代替を可能とする技術の開発にも取り組んでいます。

また、グループ企業のCrown Bioscience Internationalでは、米国、中国の拠点において、国際的な第三者評価機関であるAAALACインターナショナルの認証を取得しています。

(3)遺伝子組換え生物などの取り扱い

JSRグループでは、遺伝子組換え生物や成体幹細胞、ヒト由来試料などを用いて、医薬品開発・製造受託業務や診断薬の探索研究などを実施しています。これらの試料と関連する応用技術に関して、JSRグループでは、各国の法令・規則を遵守するとともに、倫理面にも配慮しながら適切に取り扱っています。

8. 公的研究費の管理・監査体制および研究活動における不正行為に対する取り組み

JSRは、文部科学省・厚生労働省制定の「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」ならびに経済産業省制定の「公的研究費の不正な使用等の対応に関する指針」および「研究活動の不正行為への対応に関する指針」などに基づき、当社における管理責任体制を定めており、通報窓口を設置しています。以下の体制において、公的研究費の適正な運営・管理と研究者による不正行為の事前防止・公正な研究活動を実施しています。

管理責任体制
最高管理責任者 CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)
統括管理責任者 研究企画第二部長
コンプライアンス推進責任者
研究倫理教育責任者
公的研究費による研究開発を実施する組織の長
通報窓口

JSR株式会社 企業倫理委員会事務局
〒105-8640 東京都港区東新橋一丁目9番2号 汐留住友ビル 22F

また、グループ企業の医学生物学研究所(MBL)でも、公的研究費の管理責任体制、相談窓口、通報窓口を公開しています。
詳しくは、以下MBLのホームページをご覧ください。

9. 医療機関等との関係の透明性に関する情報公開

JSRでは、日本医療機器産業連合会の会員企業として、「医療機器業界における医療機関等との透明性ガイドライン」に示された理念および臨床研究法の趣旨と目的を踏まえ、自社指針として「医療機関等との関係の透明性に関する指針」を策定しています。

また、当社の企業活動における医療機関等との関係の透明性の確保および信頼性の向上により、当社の企業活動が、医学・医療工学をはじめとするライフサイエンスの発展に寄与していること、および高い倫理性を担保したうえで行われていることについて、広く理解を得ることを目的として、当社の事業活動に伴う医療機関などへの資金提供実績の情報を公開しています。
詳しくは以下をご覧ください。

また、グループ企業の医学生物学研究所(MBL)では、日本臨床検査薬協会の会員企業として、自社指針と資金提供実績の公開を行っています。
詳しくは、以下MBLのホームページをご覧ください。