水資源の保全
1. 基本的な考え方
水資源は生物の生存に不可欠な資源であり、グローバルにみると、特に淡水は限りある貴重な資源となっています。また、気候変動を背景に、異常気象による自然災害により水資源が影響を受けていることから、化学製品を製造する企業として、水資源を保全することが私たちの務めと認識しています。
JSRグループは、この水資源を、飲料用以外に、製造工程における原料、洗浄水、化学物質の除害装置、および冷却水などに使用しています。そのため、水資源のプロセス内における循環利用などに取り組むとともに、工場外に排出する際にも、適宜、浄化処理や水質確認などを行い、適切な管理と処置を通じて水資源の保全に努めています。
2. 水質汚濁物質への対応
JSRグループは、排水の質に応じて、固形物除去、油水分離、化学的処理(中和など)などを行っています。さらに必要に応じて、生物学的処理(微生物を活用した有機物の分解など)を行うことにより、排水中に含まれる有機物、窒素、リンなどの水質汚濁物質を処理し、その排出量をモニタリングしています。これにより、法の基準値を大きく下回るレベルで排水を管理し、水資源の保全に努めています。
3. 水資源利用について
JSRグループの水資源使用量は、2023年度は3,692千m3(前年度比3%減)、総排水量は3,679千m3(前年度比1%減)でした。
ますます重要度を増している水資源について、今後も適切な管理に努めていきます。
4. 水リスク評価について
JSRグループでは、水リスクを評価するツールとして、WRI(世界資源研究所)のAqueduct Water Risk Atlasを使用しています。2022年度に、国内外の生産拠点につき、現在から2040年までの「水ストレス」評価を行い、「水ストレス」が高い地域を特定するとともに、「全体的な水リスク」の現状評価まで進めました。
2023年度は、国内外のすべての拠点まで対象を広げ、再度現在から2040年までの「水ストレス」および「全体的な水リスク」評価を行いました。
水リスクが比較的高かった拠点については、さらに詳細な調査を進め、それぞれのリスク低減に向けた対策を進めていきます。
5. 水に関するリスク低減への取り組み
JSR Micro N.V. の取り組み
ベルギーに拠点があるJSR Micro N.V.では、特にライフサイエンス部門の生産工程で大量の水を使用しています。その工程排水を、2022年までは場外で産業廃棄物として処理していました。
2023年、敷地内に工程排水の処理施設を建設することにより、この場外での産業廃棄物処理を不要にし、場外処理のための輸送における漏洩汚染リスク回避につなげました。
さらに、この処理設備に水浄化システムを追加することにより、浄化された水を敷地内で再利用することが可能となり、生産に必要な水道水の使用量を抑制できるようになりました。
今後数年間で、工程排水の70%をきれいな敷地内で再利用可能な水にすることを目指しています。
限りある貴重な水資源の循環利用を進めることにより、水資源使用量、産業廃棄物発生量、および輸送におけるCO2排出量の削減に取り組んでいきます。