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サプライチェーンマネジメント

1. 基本的な考え方

JSRグループでは、経営基盤におけるマテリアリティ(重要課題)の一つに「サプライチェーン」を掲げています。お客様のニーズに合った「革新素材」「良い製品」を提供し、より良い社会の実現に貢献していくことは、JSRグループの重要な役割です。そのためには、持続可能なサプライチェーンを構築し、健全な調達先から安定的な調達を継続できるよう取り組んでいきます。

2.購買指針・CSR調達方針

JSRグループは、「JSRグループ購買指針」に基づき、すべての購買活動を行っています。指針には、安全、人権、法令遵守、資源保護、環境保護、生物多様性などに十分配慮した購買を行うことを明記しています。

また、サプライチェーンマネジメントの発展がお取引様とJSRグループの相互繁栄につながるとの考えのもと、「JSRグループCSR調達方針」を制定し、6分野36項目の順守をお取引先様にお願いしています。

さらに2021年度からは、社会からの要請やJSRグループの考え方をさらに確実に共有するため、JSRグループのCSR調達方針および人権方針に対する賛同書を回収する取り組みを始めました。海外グループ会社を含む各拠点の購買担当者に対して説明会を開催のうえ、回収率100%を目指し、グループ全体で取り組んでいます。2022年度末時点の回収率は90%となりました。今後は比較的回収率が低い海外のグループ企業への働きかけに注力します。

3.サプライチェーンマネジメントの取り組み

(1)CSR調達アンケート

JSRグループは様々な産業向けに素材を提供し、社会を支えています。安定的に、確かな品質の製品をお客様にお届けすることは、JSRグループにとって非常に重要です。

これを支える活動の一環として、2010年度から、CSR調達に取り組んでいます。JSRグループ購買指針に基づいて、環境面・社会面に関するお取引先様の取り組み状況をアンケート調査で把握し、課題がある場合には調達担当者が直接出向いて、共に課題を解決しています。2013年度までに、原料資材の購入金額の99%をカバーするお取引先様への調査を完了しました。新規のお取引先様にも同様に調査を実施しています。

これに加えて、近年のサプライチェーンのグローバル化に伴い、サプライチェーンにおける強制労働や児童労働、環境破壊、汚職などのリスクも増大していることから、2017年度には調査に使用するアンケートの項目を大幅に刷新、拡充させました。この改訂版アンケートを用いて、2巡目となるアンケート調査も実施しました。

(2)お取引先様の評価

当社では、お取引先様との新規取引開始時はもとより、継続した取引関係のあるお取引先様につきましても、当社の調達評価基準への適合状況を定期的に確認しています。新規取引の候補先については、財務状況や品質管理レベルなどを評価するとともに、取引開始前に安全・環境・品質に関する実地監査を行います。継続した取引関係にあるお取引先様についても、新規取引の際と同様の基準で適宜、再評価を実施します。

特に供給性が低い、希少性が高いなど有事の調達難易度が高い重要原料に関しては、定期的な監査を行い、供給継続性にかかわる事項の実地確認や品質安定化に向けた提案、指導を行っています。

(3)紛争鉱物などへの対応

JSRグループは、サプライチェーンにおいて人権への負の影響を生じさせるリスクが高い紛争鉱物(スズ、タンタル、タングステン、金)については、JSRグループ購買指針に基づき、直接的および間接的な使用も一切認めないという考え方のもと、紛争鉱物の不使用を確認する取り組みを継続しています。

2015年度に、紛争鉱物の使用有無に関する調査を実施し、すべての調査対象のサプライヤーで紛争鉱物の不使用を確認しました。以降も、新規原料の採用時や新規の取引開始時には調査を行い、継続して紛争鉱物の不使用を担保する体制を維持しています。

一方、近年ではコバルトやマイカ(雲母)採掘時における児童労働などの人権侵害への懸念が高まっています。こうした状況も踏まえ、従来の紛争鉱物に加えコバルトやマイカについても問題の有無確認を徹底するため、RMI(Responsible Mineral Initiative)が提供する世界標準のテンプレートであるCMRT(Conflict Minerals Reporting Template)およびEMRT(Extended Mineral Reporting Template)を用いた調査をグループ全体で実施することにしました。国内外のグループ企業に対する説明会を開催したうえで、対象となる鉱物が使用される可能性のある原材料を特定。それらのサプライヤーに当該テンプレートを配布し、回収する取り組みを2022年度に実施しました。

回収率100%を目標として、2022年度には88%のサプライヤーからテンプレートを回収し、これら鉱物の不使用、もしくは問題のない精錬業者から調達していることを確認しました。

回収に協力いただけていないサプライヤーに関しても、引き続き本取り組みの趣旨をご理解いただき、回答をいただけるよう働きかけていきます。

(4)調達担当者の教育と研修

健全なサプライチェーンマネジメントの実践を担保するため、CSR調達や紛争鉱物への取り組みをテーマとした購買部門担当者への教育と研修に注力しています。

新たに購買部門に配属された担当者には、JSRグループ購買指針の十分な理解を促す導入教育を実施しています。また、担当者のさらなる知識習得を促すため、日本能率協会が認定するCPP資格(Certified Procurement Professional、購買・調達分野における専門的な知識を身につけていることを証明する資格)の取得を奨励しており、講習会への参加費用や受験料を会社負担とするなどの支援も行っています。

(5)イニシアティブへの参画

当社は、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのサプライチェーン分科会に参画し、ステークホルダーとの意見交換などを通じて得られた知見を、自社のCSR調達活動の深化に役立てています。直近では、「JSRグループCSR調達方針」の制定や、取引先調査に使用するアンケート項目の見直しなどに、得られた知見を活用しています。

4.グリーン調達、グリーン購入

(1)グリーン調達(原材料)

JSRは化学物質による人の健康や環境へのリスクを最小化するため、サプライチェーンを通じた化学物質管理を目指しています※1。このうち原材料の調達の観点で、2000年にグリーン調達ガイドラインを制定し、環境負荷の少ない原材料を優先的に購入するグリーン調達に取り組んできました。2008年には、化学物質をサプライチェーンで管理すべきとする業界の動きに合わせて、アーティクルマネージメント推進協議会(JAMP)※2に加入。管理対象物質とフォーマットJAMP MSDSplusに対応、2018年からはchemSHERPA(経済産業省主導で策定された新たな化学物質情報伝達フォーマット)へ対応するためガイドラインを改訂し、最新の有害物リストに基づくグリーン調達を行っています。今後もサプライチェーンでの化学物質のリスク管理を効果的に実施するため、情報伝達を重視したグリーン調達に積極的に取り組んでいきます。

  • ※1 化学物質管理「2. 有害化学品の計画的な削減のための自主的取り組み」
  • ※2 アーティクルマネージメント推進協議会(JAMP):アーティクル(部品や成形品などの別称)が含有する化学物質などの情報を適切に管理し、サプライチェーンの中で円滑に開示・伝達するための具体的なしくみをつくり普及させることを目的として、2006年9月に業界横断の活動推進主体として発足。JSRはJAMPへの参加を通じて、その理念の実現に資する活動を推進します。

(2)グリーン購入(事務機器・備品類)

JSRは直接製品や製造に関係しない事務機器、備品類を環境に配慮して購入する活動をグリーン購入と定義し、製品原材料、包装材、製造設備の調達に関するグリーン調達と区別しています。

日本国内では、2000年に「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)が制定されました。さらに2001年の実施にあたって「基本方針」が公表され、その後改定が重ねられています。JSRではこの最新の基本方針を参考にしながら、省エネルギー対策やリサイクル使用率の高い機器・備品類を優先して購入するよう努めています。2022年度は、全事業所での全購入金額161,349(千円)のうち、グリーン購入金額は151,856(千円)となり、グリーン購入率は94%でした。