気候変動緩和
1.基本的な考え方
地球温暖化による環境問題(森林火災、干ばつ、生活水不足、海面上昇、絶滅危機、生態系影響など)は地球規模で発生しており、日本においても、豪雨による水害、真夏日・猛暑日の増加による熱中症などの健康被害、サンゴの白化現象といった生態系への影響などがみられています。
JSRグループは、この問題を重要課題の一つと認識し、脱炭素社会の実現に向け、製品を生産・提供する様々な過程において必要なエネルギーの使用量削減など、温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでいます。
あわせて、サプライチェーンでのGHG排出量(Scope3)について、環境省発行の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に基づき算出・把握しています。化学製品は最終的には様々な製品に使用されているため、製品のライフサイクルにおけるGHG排出量削減に取り組むことが必要と考えています。今後もグローバルでのGHG排出量算出と把握を進め、社会全体でのGHG排出量削減に貢献していきます。
このほか、日本化学工業協会やTCFDコンソーシアムなどの他団体にも参画し、情報収集などに努めています。気候変動がJSRグループに対してリスクと機会の双方をもたらすことを認識し、シナリオ分析に基づく戦略の策定・実施を進めています。
- Scope1:事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、自社保有車両など)
- Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴うGHGの間接排出
- Scope3:Scope2を除くその他のGHGの間接排出(事業者:原材料の調達、従業員の出張、廃棄物の処理委託など)
2.JSRグループのGHG排出量およびエネルギー使用量推移
前年度に引き続き省エネ活動などに取り組みましたが、生産量増加および海外拠点の追加を受け、2021年度のGHG排出量は1,013 kt-CO2、エネルギー使用量も439千 kLと、いずれも2020年度比で増加しました。(GHG排出量:14%増加、エネルギー使用量:19%増加)
2022年4月でエラストマー事業を分社化しており、分社化後のバウンダリで試算すると、GHG排出量は260 kt-CO2、エネルギー使用量は109千 kLとなります。
引き続き、グローバルでGHG排出量削減に取り組んでいきます。
3.GHG排出量削減の取り組み
(1)JSR 各拠点について
JSRでは、2005年度以降、燃料転換に加え、コージェネレーション設備や汚泥乾燥設備の導入をはじめとする省エネ技術の高度化などに取り組んできました。2013年度時点で、GHG排出量を2005年度比21.6%減と大幅に削減しています。
さらには2019年度、長期目標となる『2013年度対比で2030年度までに15%削減』を掲げました。省エネ活動に加え、高効率設備の導入、再生可能エネルギーの活用などを通じ、さらなるGHG排出量の削減に取り組んでいます。
2021年度は生産量増加の影響もあり、GHG排出量は 618 kt-CO2と、2013年度比で4.4%の削減にとどまりました。なおJSRでは2022年4月にエラストマー事業を分社化しており、分社化後のバウンダリで試算すると、GHG排出量は 77 kt-CO2となります。
あわせて、TCFDの趣旨に賛同し、シナリオ分析による気候変動問題のリスクと機会の特定ならびに中長期的な対応策の策定への取り組みを継続しています。
四日市工場
JSRグループでは環境負荷の低減に貢献する様々な製品を開発しています。四日市工場では本館内の各所に製品を使用し、気候変動の緩和に取り組んでいます。
冷暖房システム
2021年から運用を開始したJSR BiRD※では、地中熱を利用した冷暖房システム(地中熱利用システム)を採用しています。
地中の温度は、夏場は外気温度よりも低く、冬場は高くなります。この温度差を利用して効率的な冷暖房システムを構築することで、冷温水の生成にともなうCO2発生量を従来の空調システムよりも削減し、環境負荷低減につなげました。
※ JSR Bioscience and informatics R&D center。 新規事業の創出に向けて2021年に新設されたJSRの研究施設。
コージェネレーション設備
燃料として天然ガスを使用。
石炭および重油焚き蒸気ボイラーや復水蒸気タービン設備と比較し、CO2排出量を削減。
汚泥乾燥設備
総合排水処理施設から排出される含水率の高い汚泥を乾燥して燃料化することで、場内焼却処理する際に、助燃剤(重油)使用量を削減。
(2)物流:輸送の効率化
輸送においては、輸送の大型化や、トラックから鉄道・船舶へのモーダルシフトを積極的に進め、輸送エネルギー原単位の削減につなげています。2021年度も、製品・原料の鉄道・船舶輸送化を推進した結果、モーダルシフト率は85%と前年度と同様に高い水準を維持し、輸送エネルギー原単位を抑制することができました。2022年度4月からは輸送量の約90%を占めていたエラストマー事業を事業譲渡したことで、モーダルシフト率は大幅に減少する見込みですが、取引先や物流事業者と共に、環境に配慮した輸送効率化に取り組んでいきます。
年度 | 2013 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
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CO2排出量(トン) | 22,960 | 24,437 | 24,208 | 20,211 | 15,517 | 17,686 |
カテゴリ4 原料・資材の輸送、配送 |
10,489 | 13,177 | 13,112 | 10,706 | 7,559 | 8,537 |
カテゴリ5 事業から出る廃棄物の輸送 |
164 | 195 | 202 | 193 | 168 | 201 |
カテゴリ9 製品の輸送、配送 |
12,307 | 11,065 | 10,894 | 9,312 | 7,790 | 8,948 |
輸送量(百万トンキロ※) | 492 | 534 | 514 | 434 | 324 | 377 |
モーダルシフト率(%) | 83 | 86 | 85 | 85 | 83 | 85 |
エネルギー使用量(kL:原油換算) | 9,026 | 9,899 | 9,324 | 7,855 | 6,052 | 6,944 |
エネルギー原単位(kL/千トンキロ) | 0.0183 | 0.0185 | 0.0181 | 0.0181 | 0.0187 | 0.0184 |
※ トンキロ:[貨物重量(トン)]×[輸送距離(キロ)]