ホームCSRトップ対談/創立60周年を迎えるJSRが目指すCSR経営 ①

SRI指標と銘柄への組み入れ

トップ対談/創立60周年を迎えるJSRが目指すCSR経営 ①

JSRは2017年12月に創立60周年を迎え、また、本年はJSRグループの新中期経営計画JSR20i9がスタートするという節目の年にもあたる。JSRグループのCSR活動も重要課題の見直しをはじめ、新たなる活動へ動きを進めている。来る10年、30年、さらに次の60年に向けて、JSRが持続可能な企業であり、社会の持続可能性に資するために何が大切なのか。
“レジリエント・カンパニー”の提唱者であるリーダーシップ・アカデミーTACL代表であり、NELIS共同代表でもある ピーター・D・ピーダーセン氏をお迎えし、JSR株式会社 代表取締役社長 小柴満信が意見を交換しました。

※ 危機に直面した時のストレス耐性や回復力が高く、事業環境の変化に柔軟に対応、その中から次の成長の機会を見出し、社会に貢献している企業を示す言葉

<2017年4月18日 JSR本社において>

中期経営計画JSR20i6(2014〜2016年度)の振り返り

事業構造の転換

ピーダーセン:
まず、2014年度から3年間の中期経営計画の取組状況を振り返っていただきたいと思います。
この3年、さらにその前の3年含めての6年間は、次の成長機会をつくる投資期間でした。2008年のリーマン・ショック後に社長に就任し、これから何が起こるか、当社として成長するために何に取り組むべきかを見渡して、既存の石化事業やファイン事業に新規事業としてのライフサイエンス事業やリチウムイオンキャパシタ事業を加えた4つの分野に照準を定めました。そして中期経営計画JSR20i6において、ライフサイエンス事業では大きなM&Aを2件手掛けて300億円の事業規模にまで広げ、2020年度には500億円まで間違いなく伸ばせる状況に至っています。加えて不採算の事業を整理することで、新たな体制として一応は軌道に乗せることが出来たとみています。
ピーダーセン:
課題点は何かありましたか?
石化事業とファイン事業が、グローバルな需給バランスの崩れにより低迷を余儀なくされました。ただし、それも2014年、2015年がボトムで、2016年度の終盤には盛り返してきたので、今は明るい見通しを持てています。総じて言えば、リーマン・ショック後の不況からのリカバリーに2014年頃までかかりましたが、事業構造の転換はできたと確信しています。

社会とのつながりという観点で確認する

ピーダーセン:
私は20数年来、数々の企業に接し、時代を超えて勝ち続ける企業の条件を探ってきました。未来は予測できないからこそ、どんな未来が来ようと、どんと構えていられる“Resilientな(レジリエント=回復力のある)”組織をつくる必要があるという結論を得ています。そういう企業をResilient Company=レジリエント・カンパニーとよんでいるのですが、そうなるためには、“Anchoring(拠り所となる企業理念)”、“Adaptiveness(自己変革力)”、単なるCSRではない“Alignment(社会性、社会とベクトルを合わせる)”の“3A”の要素が求められると思います。業績の低迷期こそまさにその取り組みが求められますが、その点、2000年以降のJSRグループにとっての課題は何だったのでしょうか?
2009年から1年半かけて、次の20年(=2030年)という長期ビジョンを検討した際、マクロなトレンドとして地球温暖化、新興国市場、人口・水・食糧問題、そしてデジタル革命を事業における4つテーマとして導き出しました。まず、“Anchoring(拠り所となる企業理念)”においては、地球温暖化に貢献できるものとして「SSBR」(低燃費タイヤ向け溶液重合SBR)に着目しました。これは、転がり抵抗を低減して燃費を向上させたタイヤ向けの素材で、日本や欧米で需要が急増しています。まさにサステナブルな製品だと思います。一方、“Adaptiveness(自己変革力)”においては、世の中の変化がどんどん加速する中、ややそのスピードに追い付いていない面があったとみています。変化が一層加速する前の、2000年代の途中に気付いていれば変化に対応できていたのではないか、という思いはあります。
ピーダーセン:
好調の時はなかなか気付けないものかもしれませんね。“Anchoring(拠り所となる企業理念)”はいかがですか?もともとの理念や目的などが見えなくなると、ただ「モノ」を作る会社になってしまう可能性があります。
対談の様子企業理念に関しては2011年に見直し、「Materials Innovation-マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」と再整理しました。アンケート調査などを見ると、社内にはよく浸透していると思います。しかし、どこまで実践できているかは、まだ課題があると捉えています。

課題は“自己変革力”

ピーダーセン:
“Anchoring(拠り所となる企業理念)”はいいが、その実践や“Adaptiveness(自己変革力)”に課題がある。まさに自己変革力が試される局面ですね。
当社をもっと飛躍させるためには、研究開発ばかりに任せるのではなく、より事業部と一緒になって事業活動を推進していかなければならないと思っています。従業員意識調査や企業倫理意識調査を見ていると、全体的に満足度・幸福度は高いのですが、会社のパフォーマンスに対しては、満足度は今一歩という結果が出ています。自分たちの部門はいいけど、他部門には課題があるのではないか、という考え方があるように思えます。基本的に従業員が健康で幸せであれば労働生産性は上がるはずだと思っているのですが、どうも私が思っている満足の定義と違ってきている感じがします。
ピーダーセン:
対談の様子部門間で上手に意識を高め合う競争が“Adaptiveness(自己変革力)”の推進力のポイントかもしれませんね。そして、社員が自己変革することでエンゲージメント=思い入れを強める必要があります。そのためには、社員は価値創造のプロセスにもっと参画できると実感することが大切です。健康経営やワーク・ライフ・バランス、育児休暇などの仕組みは大事ですが、会社へのエンゲージメントはそれらで為されるというものでもないだろうし、やはり価値創造のプロセスに貢献できることこそ重要だと思います。
やはり“Adaptiveness(自己変革力)”という部分に課題があるのかもしれません。当社の社員はものわかりがよく、真面目で目標達成意欲も強い半面、チャレンジには及び腰な面があるように思います。弊社の行動指針に4C=Challenge (挑戦)・Communication (対話)・Collaboration (協働)・Cultivation (共育)がありますが、この中のChallengeに重きを置いた人事考課を行った結果、実は短期的になり、届きそうな目標を設定しがちになります。そして逆に組織はチャレンジしなくなる。若い人たちは会社で成功したい・認められたいという人たちがけっこういますので、そうなると結果を出せることを求めるようになってくる。ですから私は敢えて「もっと無駄をしようよ」と言うこともありますね(笑)。

対談 ② 「新中期経営計画「JSR20i9」のポイントと今後の方向性について」へ