ホームCSRトップ対談/創立60周年を迎えるJSRが目指すCSR経営 ②

SRI指標と銘柄への組み入れ

トップ対談/創立60周年を迎えるJSRが目指すCSR経営 ②

新中期経営計画「JSR20i9」のポイントと
今後の方向性について

成長のシナリオ

ピーダーセン:
2019年度までの新中期経営計画については、どのように進めていこうとお考えですか?
ファイン事業は全体的にシェアを高めることができたのですが、半導体やLCD材料の一部以外はこれ以上のシェアアップは難しく、限界まできたとみています。したがって、今後は事業の成長が市場並みの伸びに止まるでしょう。既存の石化事業も同様にGDP並みの伸びということです。そこで、今後の収益の伸びしろとして3点を考えています。まずは競争力のあるSSBR。四日市とタイのほかにハンガリーにも工場を建設中です。2つ目にファイン事業においての半導体関連材料です。これからますます伸展するデータ社会において、半導体関連材料は伸ばしていきたいと考えています。そして、最後にライフサイエンス事業。これら3つの成長ドライバーでしっかり収益を上げていきます。加えて、グローバルに競争力を高める必要がありますね。その一環として、労働生産性を高めるための働き方改革、すなわち今までとは違う労働生産性を高める働き方にするための取り組みが必要だと考えています。
ピーダーセン:
競争力には、20世紀までの市場においては“自己変革力”“マーケットシェア”“品質”“価格”という4つの軸があったと思います。21世紀の市場では、それらにプラスして“Sustainability Innovation(持続可能性の追求)”という“第5の競争軸”が求められると考えています。つまり、自社の価値向上と、社会や環境の価値創造を完全に同じベクトルで捉える企業が支持される時代になるということです。例えば、気候変動やSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)へのプロアクティヴな対応が挙げられます。また、20世紀型市場における労働生産性は、「投入資源を減らしつつ、同じアウトプットを獲得する」もしくは「投入された資源の効率的活用により、アウトプットを増やす」方向で取り組まれてきました。しかし、21世紀型市場における労働生産性は、「創造性・革新力の発揮により、新しい価値を創出する人材や組織的能力の向上」あるいは「広い層の社員の参画および外部との協働により、限定された部署・社内だけではできなかった価値の創出」という方向になると考えています。

会社組織の中に“デジタルマインドセット”を取り込んでいく

マネジメントが大きく変わるわけですね。
ピーダーセン:
おっしゃるとおりです。P(計画)D(実行)C(確認)A(改善)サイクルという“機能的問題解決”から、“De-framing(いつもの視点を外す)”、“Insight(新しい気付きや洞察を得る)”、“Experiment & Learn(実験して学ぶ)”、“Implementation(実践する)”の“DIE-Iサイクル”という“創造的問題解決”に変わるということです。
“DIE-Iサイクル”ということでは、まさにデジタルレボリューションへの対応がそうだと思います。世の中では様々なところにAIやIoTを組み込んだビジネスが考えられていますが、まずは組織風土の中に“デジタルマインドセット”を取り入れることが重要だと思っています。例えば、AIを活用することで研究開発のスピードを10倍、100倍にアップできる可能性があります。最強の棋士に勝ったことで一躍有名になったGoogleの「アルファ碁」のようなAIの開発には多額のコストがかかります。しかし、半導体業界でいわれる「ムーアの法則」的に漸減し、今はできなくても5年後には我々も手にすることができるようになるかもしれません。ですから、これからの“働き方改革”とは、「ノー残業デイ」とか「プレミアムフライデイ」も大事だとは思いますが、そういった次元だけで考えていてはいけないと思っています。まさに“De-framing(いつもの視点を外す)”で、今までやってきたことを見直して、まったく違う生産性ということを考えていく必要があると思います。今後のターゲットは、ホワイトカラーにおける21世紀型市場の生産性向上にあるということだと思いますね。
ピーダーセン:
全くそのとおりだと思います。
 
対談の様子

対談 ③ 「持続的な成長の実施に向けて」へ