ホームCSR事業活動で貢献する社会的課題 E2イニシアティブ®・環境配慮型製品

SRI指標と銘柄への組み入れ

事業活動で貢献する社会的課題 E2イニシアティブ®・環境配慮型製品

1.基本的な考え方

JSRグループが掲げる「E2イニシアティブ®」は、私たちが製品を作り、事業を展開していくうえで「環境面での価値創出」を常に意識するための重要かつ明確な考え方です。また、事業活動を行う中で、環境負荷・資源・気候変動などの問題の解決に取り組むための考え方でもあります。

2.「E2イニシアティブ®」の展開で環境問題に取り組む

「地球」という惑星で人間と多くの生き物が共存していくために、私たちは環境問題に真剣に取り組まなければなりません。JSRグループでは、環境への負荷低減と、製品における環境面での新たな事業機会創出を両立するという視点から、「E2イニシアティブ®」という考え方を導入しています。
「E2イニシアティブ®」とは環境を軸とした事業機会の創出を図る「Eco-innovation」と、CO2排出量削減を中心とした「Energy Management」、つまりは「攻め」と「守り」両面での価値創出を追求していこうとする考え方です。これは価値の軸をこれまでの「差別化」か「コスト」かの二元論から転換し、「環境性能」という軸と両立させることが不可欠になってきたことを反映しています。
製品開発時の設計段階から製品の使用段階までを含めた「LCA(ライフサイクルアセスメント)」評価で「環境負荷」を捉えることで、事業を通じて環境問題に取り組んでいます。

E2イニシアティブ®

3.LCA・LCIへの取り組み

LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)とは、製品の原料調達から製造・販売・使用・廃棄に至るまでのライフサイクルにおける環境影響を定量的に評価する手法のことです。

LCA・LCIへの取り組み

LCAを実施するには、製品を製造する際の投入資源、排出環境負荷等各段階でのCO2排出量(LCIデータ)を算出する必要があります。
代表的な合成ゴムのLCIデータ算出については、合成ゴム業界全体で取り組み、JSRも参加しました。
算出結果については、(社)産業環境管理協会LCAフォーラムのデータベースに登録しています。また、ファイン製品のLCIデータについては、生産工程のCO2発生量を把握しています。
LCAを研究開発段階から導入し、CO2排出量を考慮しながら製品設計を進めていくシステムの運用を開始し、約50製品群(代表グレード83種)のLCAを試算しました(2017年3月31日現在)。
今後も、新たに開発された製品群、グレードについてLCAの試算を進めていきます。

4.環境配慮型製品での貢献(攻めのE2イニシアティブ®

① 地球環境問題解決に大きな可能性をもたらす低燃費タイヤ用合成ゴムSSBR

環境に優しく、かつ確実に安全に止まる性能を維持する低燃費タイヤ。その原料として、JSRグループの溶液重合SBR(SSBR)が高い評価を得ています。JSRグループでは、タイヤが止まるために必要なゴムの特性は変えずに、ゴムと補強材の分子が密に結びつきやすくする技術によって内部摩擦の発生を抑えて、転がり抵抗が低くなるようにSSBRを設計しています。タイヤの原料から使用、廃棄までのライフサイクルの中で最も環境負荷の高い使用時の負荷低減に役立っています。
自動車のエンジンがモーターに代わってもタイヤは必要であり、環境基準の高い日本や欧州、また交通による環境負荷低減が喫緊の課題である新興国でも、SSBRのニーズは高くなっています。日本では四日市工場、タイではJSR BST Elastomer社と2か国にて生産中で、2018年からはハンガリーのJSR MOL Synthetic Rubber社でも生産を開始する予定です。低燃費タイヤの世界的な需要に応えることで、グローバルな環境問題に応えていきます。

SSBR
JSR BST Elastomer社(タイ)のSSBRプラント

JSR BST Elastomer社(タイ)のSSBRプラント

SSBR生産能力

※転がり抵抗:タイヤが回転する時に進行方向と逆向きに生じる抵抗力。タイヤの変形、接地摩擦、空気抵抗が原因。

② 低炭素社会を実現するリチウムイオン電池電極用バインダー

リチウムイオン電池電極用バインダー
水分散型は点接着により電気抵抗を低くできます

JSRグループは、エネルギーの有効活用や低炭素社会の実現のために需要が高まっている、リチウムイオン電池の電極のバインダー(接着剤)を提供しています。
リチウムイオン電池は電気自動車やハイブリッド自動車の中に入っており、通常の乾電池同様、プラスとマイナスの電極があります。
これらの電極は、銅箔やアルミ箔(集電体)に、活物質と呼ばれる炭素材料や金属酸化物粒子を接着したものです。JSRグループが提供するバインダーは、この接着に使用されています。
当社グループのバインダーは、樹脂が水に分散したタイプで、環境負荷が少ないことに加えて、活物質間の導通の妨げになっていた樹脂の接着面積を大幅に下げながら接着することが可能となり(点接着)、電気抵抗が低い電極を作ることができるという特徴があります。
当社グループのもつ高分子の設計技術、水系分散技術、電池性能評価の技術が優れた性能を発揮する電極を可能にしました。
電気自動車だけでなく、パソコンや携帯電話、電気掃除機といった幅広い製品に当社の素材が使われています。

③ エネルギーの効率的な活用を実現するリチウムイオンキャパシタ

JMエナジー(株)のリチウムイオンキャパシタ「ULTIMO®(アルティモ)」シリーズ
  • ラミネートセル

    ラミネートセル

  • ラミネートセルモジュール

    ラミネートセルモジュール

  • 角型セル

    角型セル

  • 角型セルモジュール

    角型セルモジュール

リチウムイオンキャパシタは、電気を瞬間的に溜めたり放出したりすることが得意で、自己放電が少なく長寿命という特長を持つ蓄電デバイスです。エネルギーの効率的な利用のためにグローバルに注目が高まっており、今後の大幅な市場拡大も見込まれています。
JMエナジー(株)は2008年末、世界で初めてとなるリチウムイオンキャパシタの量産工場を稼働させた、業界ナンバーワン企業です。JSRグループの持つ材料技術・精密加工技術を活かし、より高性能でさまざまな用途に使えるリチウムイオンキャパシタの提供を目指しています。
軽量薄型でコンパクトなラミネートタイプは、放熱性に優れ、設置しやすいため幅広い用途に用いられます。
堅牢性に優れた缶タイプは、一般的には円筒型が多い中、世界初の扁平角缶型を採用し、放熱効率や実装しやすさを向上させています。

④ 省エネルギーに貢献する潜熱蓄熱材料「CALGRIP®(カルグリップ)」

東京大学の次世代省エネ住宅(天井や床に使用)

東京大学の次世代省エネ住宅(天井や床に使用)

「CALGRIP®」を天井に取り付けている様子

「CALGRIP®」を天井に取り付けている様子

一般的な保冷剤と違い、−20度〜80度までの間で一定の温度を長時間保持させることができる材料で、医薬品や食料品の定温輸送や保管の分野に加え、建材や空調等に用いることで節電や温度管理に関わる分野での省エネ効果が期待されています。
エネマネハウス2014(東京ビッグサイト)において、東京大学と千葉大学の次世代省エネ住宅に利用されました。東京大学は天井と床に「CALGRIP®」を設置。昼間に日射熱を蓄熱し夜間に熱を放出することで、冬でも快適な室温を保持できました。今後は、冷暖房器具の使用軽減を通して省エネルギーへ貢献していきます。

⑤ 省エネルギー、環境負荷低減に貢献する水系高耐久防汚性材料SIFCLEAR®(シフクリア)

鹿島工場のブタジエンタンク(右のタンクに「SIFCLEAR®」を使用)

鹿島工場のブタジエンタンク(右のタンクに「SIFCLEAR®」を使用)

高い防汚性を有するため塗料に使用することで汚れがつきにくく、「美観」を長期間にわたって保持することができます。かつ塗膜の耐久性が高いので、塗り直し頻度の削減という省資源に貢献しています。特に、遮熱塗料に使用すると長期間にわたり遮熱性能を保持できるため、省エネに効果を発揮します。さらにVOC※2や臭気を発しない環境配慮素材としても注目されています。

※2 VOC(Volatile Organic Compounds)揮発性有機化合物。

⑥ 植物由来材料BIOLLOY®(バイオロイ)

(上)バイオロイの着色ペレット(下)バイオロイを使用したボトル

(上)バイオロイの着色ペレット
(下)バイオロイを使用したボトル

植物由来材料のポリ乳酸と、熱可塑性樹脂を複合化したバイオ樹脂「BIOLLOY®」。既存の一般的なバイオ樹脂に比べて5倍の耐衝撃性を持つのが特長です。薄くて軽く地球にやさしい素材が求められている化粧品やシャンプーなどのボトルのほか、自動車内装、OA機器や家電等、さまざまな用途での活用が見込まれています。

⑦ 大幅なプロセスの簡略化と環境負荷低減を実現する溶融はんだインジェクション※3用マスクレジスト※4

ICチップ内のトランジスタや配線の微細化が限界に迫る中、ICチップを組み込みデバイスとして仕上げる半導体実装工程から、デバイスの高性能化を目指す動きが活発になっています。JSRと日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)、千住金属工業株式会社(以下、千住金属工業)の3社は、半導体の最先端高密度実装を革新する溶融はんだインジェクション法(Injection Molded Solder; 以下IMS)を開発しました。
IMSは基板上に形成したマスクレジストの開口部に、専用の注入装置を用いて溶融はんだを直接注入する技術です。JSRが開発したマスクレジストは、はんだが十分に溶融する約250℃の高温に耐えることができ、基板上の任意の箇所に30ミクロンという微細はんだバンプ※5パターンが形成できるところまできています。
また、従来の電解めっき法で必要だった、大量のめっき液とそのメンテナンス、および大量の廃液処理が不要となる点、さらにはんだの使用効率が100%で無駄のでない点で、廃棄物が少なく環境にやさしいプロセスです。この方法は、さらに従来手法対比で大幅なプロセス簡略化と環境負荷低減も実現しており、今後の普及が期待されています。

インジェクション法によるはんだバンプ形成プロセス
インジェクション法によるはんだバンプ形成プロセス
完成したはんだバンプ
完成したはんだバンプ
(バンプの直径:50ミクロン)

※3 インジェクション:注入すること

※4 マスク(フォト)レジスト:光によって溶解性が変化する樹脂。ウエハ上に塗布し、露光、現像することでパターンを形成することができる。ウエハの表面を保護する役割を持つ。

※5 バンプ:半導体を基板に電気的に接続するためにハンダを突起状に加工した接続電極

⑧ きしみ音を低減し、グリス塗布や不織布貼付を省けるHUSHLLOY®(ハッシュロイ)

自動車等に多く使われるプラスチック部品の噛み合わせ部等から発生するきしみ音に対し、画期的な効果を有する「HUSHLLOY®(ハッシュロイ)※6」。通常、きしみ音低減の対策として、プラスチック部品へのグリス塗布や不織布貼付等が行われますが、これらが不要になることで部品メーカーの工程短縮につながります。また、素材そのものがきしみ音を低減するため、長期間メンテナンスが不要です。

※6 「HUSHLLOY®」はテクノポリマー株式会社の登録商標