ワークライフマネジメント
1. 基本的な考え方
JSRでは、サステナブルな成長、レジリエントな組織の実現に向けて組織と従業員の競争力を向上させるために、DE&I風土の醸成と、その上に成り立つ「①柔軟な働き方が可能となるような労働環境・各種制度・ITインフラの整備」「②多様で柔軟な働き方を各職場で受け入れ、互いに支え合い、組織の力に変えて成果を最大化するワークスタイルイノベーション(働き方の進化:WSI)」の2つの柱が不可欠であると考えています。
具体的には、従業員は必要に応じて各種制度やインフラを適切に使い、主体的にワークライフマネジメントを実践して、健康で活力ある働き方を実践します。各職場では、自部署のありたい姿を実現できるよう、従業員の柔軟な働き方を実現できるような業務マネジメント・ピープルマネジメントや、心理的安全性のあるチームづくりを進めるとともに、先端デジタル技術の積極的な活用などによる飛躍的な生産性向上に取り組みます。
これらの環境は従業員のエンゲージメントを高めます。また、働きやすさと働きがいのある職場は、イノベーションや競争力を生み出します。これがひいては個人と組織がともに、持続的に成長していくことにつながっていきます。
2. 推進体制
労働環境の整備や各種制度の方針策定・設計、導入は人財開発部が、ワークスタイルイノベーションの方針策定や施策の企画実行はダイバーシティ推進室が中心となって進めています。両者は中期的な人財戦略のもとで緊密に連携しており、方針や制度、取り組み内容を適宜経営層へ報告するとともに、従業員へもイントラネットを活用して周知しています。
3. 柔軟な働き方を支援する制度
(1)柔軟な働き方を支援する制度
JSRでは、育児、介護、怪我や病気の治療と仕事とを両立させやすい環境をつくるため、各種の支援制度を整えてきました。また、このような様々な背景をもつ従業員のため、両立支援制度(社内、社外の制度を含む)を紹介するガイドブックを従業員に配布して、制度の周知に努めています。
従業員の多様な働き方を支援するため、在宅勤務制度の事由要件緩和に加え、一律の期間制限(月5日まで)を撤廃して業務や部門ごとに柔軟に応じるようにする制度変更の実施、1時間単位で年次有給休暇を取得できる時間単位年休制度の導入、育児・介護のための短時間勤務適用期間の延長、若年層従業員への年次有給休暇付与日数の増加(初年度14日)など、様々な取り組みを進めています。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||
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利用者数 | 女性 | 14人 | 15人 | 21人 | 13人 | 16人 |
男性 | 61人 | 59人 | 101人 | 87人 | 74人 | |
取得率 | 女性 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
男性 | 42.7% | 50.9% | 72.7% | 81.3% | 89.2% |
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||
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復職率 | 女性 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
男性 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | |
1年後定着率 | 女性 | 100% | 95% | 89% | 81% | 100% |
男性 | 97% | 100% | 96% | 59% | 95% | |
3年後定着率 | 女性 | ー | 96% | 95% | 84% | 53% |
男性 | ー | 98% | 92% | 64% | 70% |
ライフステージ | 使用可能な制度 | 詳細 |
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出産前 (不妊治療中、妊娠期間中) |
短時間勤務制度 | 妊娠中の従業員は、1日2時間まで勤務時間を短縮できます。 不妊治療をしている従業員は、1日4時間まで、月間44時間まで勤務時間を短縮できます。 |
在宅勤務制度 | 自らの業務の生産性向上が見込まれる場合、部門長の判断に基づき、在宅勤務の頻度や期間を個別に設定することができます。 | |
出産 | 産前・産後休暇制度※ | 産前6週間、産後8週間休暇を取得できます。 |
配偶者出産時の特別有給休暇 | 男性社員の妻が出産する際は出産予定日の1週間前から、出生後2週間以内の期間で4日まで、特別有給休暇をとることができます。 | |
育児休業制度※ | 子どもが1歳6カ月になるまで休業を取得できます。 | |
育児休業者への面談制度 | 育児休業中の従業員・会社双方の不安や問題を解決しスムーズな復職ができるよう、従業員の希望によって、所属長との面談を実施します。 | |
育児との両立 | 短時間勤務制度 | 配偶者が就労していない従業員は子供が3歳になるまで、共働きの従業員は子供が小学6年生を修了するまで勤務時間を短縮できます。 |
在宅勤務制度 | 自らの業務の生産性向上が見込まれる場合、部門長の判断に基づき、在宅勤務の頻度や期間を個別に設定することができます。 | |
看護休暇制度 | 同居家族の看護、通院、検診、予防接種などで付き添いのため、通算で年間10日まで半日単位で休暇を取得できます。また時間単位での取得も可能です。 | |
介護との両立 | 短時間勤務制度 | 家族を介護している従業員は、1日4時間まで、月間44時間まで勤務時間を短縮できます。 |
在宅勤務制度 | 自らの業務の生産性向上が見込まれる場合、部門長の判断に基づき、在宅勤務の頻度や期間を個別に設定することができます。 | |
看護休暇制度 | 同居家族の看護、通院、検診、予防接種などで付き添いのため、通算で年間10日まで半日単位で休暇を取得できます。また時間単位での取得も可能です。 | |
介護休暇制度 | 家族を介護している従業員は、通算20日間半日単位で介護休暇を取得できます。また時間単位での取得も可能です。 | |
介護休業制度※ | 家族を介護している従業員は通算24カ月まで介護休業を取得することができます。<br>介護休業は3回まで分割して(通算2年まで)取得することができます。 |
注:各種制度を利用する従業員の希望により、自宅から社内ネットワークへアクセス可能なモバイル機器を貸与しています。
その他、研究部門の従業員向けには裁量労働制度を、交替勤務以外の従業員にはコアタイムのないフレックスタイム制度をそれぞれ整備しています。社会貢献活動のために休暇が必要な場合は、ボランティア休暇として年間通算5日まで有給休暇を取得できます。
JSRは次世代認定マークとして「プラチナくるみん」を、JSRマイクロ九州は「くるみん」を取得しています
JSRは2007年8月、2012年4月、2023年10月に、JSRマイクロ九州は2017年5月に子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受け、次世代認定マーク(愛称:「くるみん」)を取得しました。
さらに、JSRは2023年10月に、より高い水準の取り組みを行っている優良な子育て支援企業が受けられる特例認定「プラチナくるみん」を取得しました。
本認定は、2020年度~2022年度の行動計画(次世代支援育成対策支援法に基づき公表した行動計画)の目標達成状況や、研修等などの各種施策が内容を評価された結果として認定されましたです。本行動計画では男性従業員の育休取得率を30%%以上にすることを数値目標としていましたが、2022年度にはの実績は81.3%%に到達しました。これは2022年度の男性育休取得率の全国平均17.1%%を大きく上回る数値となっています。さらに加えて、JSRの女性従業員の育休取得率は100%%でありとなっており、男性・女性問わず、仕事と育児の両立に対する意識のが高まった結果りから、JSRにおいて育休を取得することはが当たり前になりつつあります。また、育児に関する取り組みだけでなく、経営基幹職(管理職)向けの研修や従業員の社外研修派遣等など、多種多様な取り組みを通じて、多様で柔軟な働き方ができる風土の醸成やキャリア支援を目的として、多種多様な取り組みを整備してきたことも要因の一つです評価されました。
JSRは仕事と介護を両立できる職場環境の整備促進のためのシンボルマーク「トモニン」を取得しています
JSRは厚生労働省が定める仕事と介護を両立できる職場環境の整備促進のためのシンボルマーク(愛称:トモニン)を活用し、JSRにおける取組みをアピールするとともに、仕事と介護を両立しながら継続的に活躍できる環境づくりを進めています。
(2)JSR独自の給付制度
健康保険組合や雇用保険による休業期間中の各種給付制度に加え、JSRでは以下の独自の給付制度を設け、仕事と家庭生活の両立を担う社員を支援しています。
- 出産育児一時金付加金(JSR健康保険組合より)
法定の出産育児一時金に加え、女性被保険者の出産に対して1児につき10万円を給付します。 - 育児休業給付(JSR共済会より)
育児休業取得開始から最初の5日間について、本給+調整給の50%の補助金を給付します。 - 育児休業復職支援給付(JSR共済会より)
産前・産後休暇または1カ月以上の育児休業から復帰した従業員に、復職後6カ月勤務を継続した時点で、ここまで両立に努めてきたことへの労いと今後の活躍を期待して、使用目的を問わず、1子につき20万円の支援金を給付します。 - ベビーシッター給付(JSR共済会より)
共働きの従業員が勤務日に利用したベビーシッター費用の半額を補助します(年間40万円まで)。
4. ワークスタイルイノベーション
JSRでは、組織の力を組織の成果として最大化するために働き方を常に進化させていく必要があると考えています。働き方の進化とは、自身の働き方のチェックや振り返りを通してより良い働き方を模索し続けることだけではありません。自身以外の周囲の多様な働き方を知り、理解するとともに、時にはお互い支え合いながら「組織全体としてのより良い働き方」へ進化させることも含んでいます。また、個人と組織が働き方の進化を続けていくことが、外部環境の変化にも柔軟に対応できるレジリエンスな組織へつながっていくものと考えています。
2020年度、新型コロナウイルスの蔓延を機に立ち上げた「新しい働き方プロジェクト」では、これからの働き方として目指す状態を「目的・期待効果に合わせ柔軟な勤務形態・各種ツールを駆使し、行動できている状態」としました。これに向けて、①オフィスのあり方の見直し(特に本社機能)、②利便性・業務生産性の向上に資するIT支援の強化、③生産性・競争力の向上とエンゲージメントを最大化する人事制度の3点について提言しました。
2021年度はこれらに基づき、具体的な施策に取り組みました。①については、感染症対策として在宅勤務が浸透したことから、本社オフィスもテレワークに対応したWeb会議用ブースや小会議室の設置など、実際の働き方に応じた対応を進めています。②については、働き方を可視化するシステムを用いて、新型コロナウイルスの感染拡大開始直後(2020年4~6月)と1年後の同期間(2021年4~6月)の働き方をデータで比較し、従業員へフィードバックするとともに、働き方の継続的な見直しと改善について啓発を行いました。③については、管理職の人事評価制度について、ポスト要件とそれに応じた処遇を明確化する形へと抜本的に変革しました。
加えて、WSI推進施策として、チーム内やチーム間のより良いコミュニケーションやマネジメントに焦点をあて、セミナーやイントラネットでの記事配信を通じて心理的安全性のある職場づくりについて考える取り組みを継続的に行っています。
2023年度のトピックス
WSIマネジメントセミナー
新型コロナウイルス感染症の流行を機に、働き方は急速に変わり、JSR本社においても長期化する在宅勤務下でのチームビルディングやマネジメントの難しさが課題として浮き彫りになりました。また、工場や研究所間の出張や顧客などへの訪問にも制約が生じました。これらを受け、2020年度には、成果を出し続ける組織としてアップデートしていくために、コロナ禍におけるチームマネジメントについて考える「WSIマネジメントセミナー」を各職場の課長層に対して実施しました。セミナーでは、チームの心理的安全性を醸成するために自身ができることや、管理職がマネジメントについて抱える悩みを共有し合い、解消のためにどんな行動ができるかなど、建設的で活発な議論を交わしました。
さらに2021年度は、対象を係長層にまで広げ、感染症の蔓延などに限定せず、どのような外部環境の変化に直面しても、自部署の多様な人財を活かし組織力を強化するために自身が行動できることを考えるセミナーを実施しました。係長層を対象としたことには課長職と係長職間の連携強化を図る狙いがありましたが、2020年度に受講した課長層からの受講の要望も非常に多く、その要望理由からも、DE&I風土の醸成が組織力を最大化するために必要不可欠であるというマインドが広がってきていることが窺えました。
働き方の可視化分析
新型コロナウイルス感染症の影響で働き方は大きく変わり、オンラインツールを使いこなしながら業務やコミュニケーションを行うことが当たり前になりました。また、今後もますますオンラインツールを活用した働き方が加速していくと考えられます。そこで、過去および現状の働き方を視覚的に捉えるため、JSR本社の従業員のうち、約500名を対象にOutlookやTeamsの利用状況のデータを用いて働き方の分析を行いました。新型コロナウイルスの感染拡大開始直後(2020年4~6月)と1年後の同期間(2021年4~6月)のデータを比較すると、メールによるコミュニケーションの大幅な減少が見られ、代わりにスピーディで効率的なコミュニケーションツールとしてチャットの使用が増えていました。一方で、会議時間や労働時間については改善の余地があり、継続的に働き方の見直しが必要であることが明らかになりました。業務の棚卸しやスキルの可視化、RPAなどのシステムも積極的に活用し、働き方をアップデートできるような仕組みづくりを続けていきます。
5. 労働組合
(1)労働組合の活動に関する考え方
JSR労働組合に対して、定例労使協議会、労働協約改定協議などを通じ、常日頃から建設的な意見交換ができる関係の維持に努めています。また、JSR労働組合が掲げる「賃金政策」「労働環境政策」「福利厚生政策」「余暇・広報・ボランティア政策」「組織政策」の観点からも、より良い労働環境づくりにともに取り組んでいます。
(2)行動規範
国内外の労働関係法令を遵守するとともに、労働者の団結権、団体交渉を行う権利をはじめとする労働基本権を尊重します。
(3)当社とJSR労働組合の対話
労働組合法に則り、当社とJSR労働組合は、労働協約を締結しています。そして労働協約の定めに従い、事業上の重要な変更を実施する場合には、事前に労働組合に通知しています。
また、労働組合代表と当社社長や各事業の担当役員との間で、経営環境、事業概況、主要な会社施策、労働組合の取り組みについて、定期的に意見交換、質疑応答し、その内容をJSR労働組合は組合員に発信しています。さらに各層、各事業所レベルでの労使間協議や支部労使協議会、安全衛生委員会などを重ね、相互の理解と信頼を深め、健全な労使関係を維持・強化するよう努めています。2021年度は会社分割に向け協定・規程類改定などについて協議を重ね、円滑な事業運営に努めました。
(4)労働組合と組合員との対話
各職場に職場の意見代表者である職場委員が在籍し、労働組合執行部と職場との情報共有が行われています。また組合員の想いや考え方を組合活動へ反映させるため、定期的に職場討議やアンケートが実施されています。
(5)JSR労働組合の加入者数
2022年3月末時点で、JSR労働組合には、役員・管理職等を除く一般従業員2,746名が加盟しており、加盟率は100%です。なお、上部団体として化学総連に加盟しています。
また、労働組合が組織されている連結子会社を合わせた組合員数は3,775名となり、連結従業員数9,696名における割合は38.9%となります。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | ||
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JSR株式会社 | 加入者数 | 2,588人 | 2,629人 | 2,709人 | 2,799人 | 2,746人 |
加入率 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | |
JSRグループ | 加入者数 | 3,545人 | 3,588人 | 3,739人 | 3,766人 | 3,775人 |
連結従業員における割合 | 49.2% | 41.0% | 41.3% | 40.1% | 38.9% |