気候変動への対応
推進体制
JSRグループでは、取締役会による監督体制のもと、経営上のリスクとなりうる課題や機会となる事項に対して、適切な対応を検討し、実行しています。さらにJSRグループは、サステナビリティ活動の実務を推進する部門横断の会議体として、最高経営責任者(CEO)兼社長を議長とするサステナビリティ推進会議を設けています。
特に気候変動対応に関しては、サステナビリティ全般の戦略立案を担うサステナビリティ委員会が全社の活動の方向づけを行い、環境安全品質委員会が組織全体の気候変動に係る活動計画を承認、活動結果を評価・検証し、リスク管理委員会が評価を通じて特定した顕在的・潜在的リスクと機会についての対応方針・対応計画の改善と運用管理を担っています。サステナビリティ推進会議はこれら3つの委員会の活動を統括・指導し、年4回の定例会議と臨時会議を通じてマネジメント強化と活動の推進に努めています。
方針/基本的な考え方
JSRグループは、化学製品を製造する企業として、社会が直面する気候変動問題への対応を当社の最重要課題の一つと捉え、脱炭素社会の実現に貢献することが私たちの務めと認識しています。
私たちの化学製品は最終的には様々な製品に使用されるため、製品のライフサイクルにおける温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組むことが必要と考えています。
私たちは、グループ全体でのGHG排出量の算出と把握を進め、製品を生産・提供する様々な過程におけるエネルギー使用量の削減などに取り組むことにより、社会全体でのGHG排出量削減に貢献していきます。
指標と目標
JSRグループは2050年GHG排出量「ネットゼロ」の実現に向けて削減目標を継続的に見直し、高度化させています。
2050年GHG排出量「ネットゼロ」の実現に向けて、2021年に2030年度までの削減目標を策定しました。2025年度には、外部動向をふまえ、1.5℃目標に整合した新たな目標を策定し、更なるGHG排出量の削減に取り組んでいます。
1. 2050年GHG排出量「ネットゼロ」に向けたGHG排出量削減目標
JSRグループは、2021年3月に2050年GHG排出量「ネットゼロ」を目指すことを表明しました。当該目標達成に向けた、マイルストーンとして、「JSRグループにおけるGHG排出量を2030年度までに30%削減(基準年:2020年度比)」という目標を2021年12月に策定しました。
| 目標1 | 2030年度までに温室効果ガス排出量(Scope1+Scope2)を2020年度比30%削減 |
|---|
| 基準年 | 実績 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 指標 | 集計対象拠点 | 単位 | 2020年度*1 | 2021年度*1 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
| Scope1 | JSRグループ | 千トン-CO2e | 35 | 35 | 34 | 34 | 34 |
| Scope2 | 205 | 195 | 180 | 186 | 169 | ||
| Scope1+Scope2合計 | 240 | 230 | 214 | 220 | 202 | ||
| 進捗率 (基準年:2020年度比) |
% | ー | -4 | -11 | -8 | -16 | |
- *12022年4月に事業譲渡した、エラストマー事業を除いた数値
- *2Scope3の排出量は、ESGデータブックに掲載しています。
2024年度は、省エネルギー推進活動の継続的な実施や、購入電力の再エネ切り替えを進めた結果、GHG排出量は202 千t-CO2eと前年度比8%減少し、基準年の2020年度比では16%減少となりました。
エネルギー使用量は、85 千kLと前年度比8%減少しました。
2. 1.5℃目標に整合したGHG排出量削減目標
JSRグループは、2025年度に、パリ協定の1.5℃目標に整合するGHG排出量削減目標へ見直し、Science Based Targets initiative(SBTi)の認定を取得しました。
| 区分 | 目標2 | |
|---|---|---|
| Scope1 | 事業者自らによるGHGの直接排出 | 2030年度までに、Scope1およびScope2のGHG排出量を2023年度比で42%削減すること |
| Scope2 | 他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 | |
| Scope3 | Scope1,Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) | 2029年度までに、購入した製品・サービス、資本財、上流の輸送・配送を対象とする排出量ベースで、サプライヤーの85%が科学的根拠に基づく目標を設定すること |
当該目標をJSRグループの新しいGHG排出量の削減目標とし、引き続き事業活動に伴う環境負荷の低減を推進していきます。
2024年度のScope1およびScope2のGHG排出量は220 千t-CO2eとなり、基準年の2023年度比では7%減少しました。
| 基準年 | 実績 | |||
|---|---|---|---|---|
| 指標 | 集計対象拠点*3 | 単位 | 2023年度 | 2024年度 |
| Scope1 | JSRグループ | 千トン-CO2e | 37 | 37 |
| Scope2 | 200 | 183 | ||
| Scope1+Scope2合計 | 237 | 220 | ||
| 進捗率(基準年:2023年度比) | % | ー | -7 | |
- *3SBT認定取得に伴い、2023年度および2024年度に関しては、目標1の算定時よりバウンダリを変更し、JSR株式会社が財務支配力を有するグループ企業を集計対象範囲としています。
- *4Scope3の排出量は、ESGデータブックに掲載しています。
取り組み
1. TCFD提言への対応
JSRグループは、2020年10月にTCFD提言への支持を表明し、TCFDフレームワークに基づく情報開示を行っています。
詳細については「TCFDレポート」をご参照ください。
2. GHG排出量の第三者検証
JSRグループが公表する一部のGHG排出量データ(Scope1、2)について、透明性と正確性を確保するため、第三者機関による検証を受けています。
3. 再生可能電力の導入
「JSRグループ全体でGHG排出量を2030年度までに30%削減(2020年度対比)」という旧目標および「JSRグループ全体でGHG Scope 1 + 2 排出量を2030年度までに42%削減(2023年度対比) 」という新しい目標の達成に向け、以下の拠点/企業の全体または一部で再生可能電力の導入を行っています。
この取り組みによって、2024年度にはJSRグループの総使用電力に占める再生可能電力の割合は14.5%に達しました。
| JSR株式会社 | 国内グループ企業 | 海外グループ企業 |
|---|---|---|
|
|
|
4. JSR BiRD 地中熱利用システムを採用
2021年から運用を開始したJSR BiRD*5では、地中熱を利用した冷暖房システム(地中熱利用システム)を採用しています。
地中の温度は、夏場は外気温度よりも低く、冬場は高くなります。この温度差を利用して効率的な冷暖房システムを構築することで、冷温水の生成にともなうCO2発生量を従来の空調システムよりも削減し、環境負荷低減につなげました。
<環境に配慮した施設の特徴>
- (1)アトリウム形状と融合した、⾃然通⾵の取り込み
- (2)アトリウム、居室への床染み出し空調・温⽔床暖房
- (3)杭⻑50mを活かした、地中熱ヒートポンプシステム
- *5JSR Bioscience and informatics R&D center。 新規事業の創出に向けて2021年に新設されたJSR株式会社の研究施設。
5. JSR株式会社 四日市工場 クリーンルーム運転条件最適化によるGHG排出量削減
JSR株式会社の四日市工場においては、工場内で消費されるエネルギーの大部分を占めるクリーンルームの空調を対象に、省エネに取り組んでいます。
具体的には、外気処理空調機の温度・湿度などの運転条件を最適化し、給排気のバランスを調整することで、クリーンルームに対する負荷を抑制しています。
また、2023年度に送水ポンプにインバーター制御を導入し、必要な流量だけを供給する方式に切り替えたことで無駄な運転を抑え、電力消費を削減しています。
これらの取り組みにより、2024年度は取り組み実施前の2022年度比で約1割のGHG排出量削減を達成しました。
今後も、更なる環境負荷低減とエネルギー効率向上を実現し、持続可能な事業運営に取り組んでまいります。
6. 気候変動に関する専門ネットワークとの連携
日本化学工業協会、TCFDコンソーシアム、SCC(半導体気候関連コンソーシアム)などの団体にも参画して情報収集に努め、 気候変動がJSRグループに対してリスクと機会の双方をもたらすことへの認識を深めるとともに、シナリオ分析に基づく戦略の策定・実施を進めています。

