HOME / CSR / CSRレポート2013 / 特集1 未来へつながるものづくり / 医療の現場に変革をもたらすマテリアルの力

CSRレポート2013

医療の現場に変革をもたらすマテリアルの力

世界的な成長分野であり、JSRグループの戦略事業の中でも注目度の高いライフサイエンス分野。
マテリアルでどのような課題を解決し、どんな未来を描こうとしているのかをご紹介します。

医療現場 ※1 コンパニオン診断 薬に対する効果や副作用など、薬に対する感受性の個人差を治療開始前に検査し、
一人ひとりに効果の高い治療に結び付ける診断のこと

北嶋幸子

JSRライフサイエンス株式会社
執行役員
診断試薬材料部長
北嶋 幸子

優れた技術と品質で、創薬に新しい価値を提供する

ヒトの体の中には宇宙空間に漂う星のように、無数の体内物質が存在します。私たちの技術が未知の物質の検出や物質の機能の解明、さらには新しい薬剤の開発に貢献することに大きなやりがいを感じます。
JSRが以前から取り組んでいた診断試薬事業とメディカルポリマー事業に、事業化段階にあったバイオプロセス事業を集約して、2012年にJSRライフサイエンス社がスタートしました。ライフサイエンス分野で社会から期待されるニーズに応え、より迅速な製品開発を進め、メディカル材料事業に特化したサービスや品質保証体制の強化を図るためには、分社化するのが良いと考えました。今後、社会が個別化医療に向かう中、病気の症状を示すバイオマーカーや遺伝子変異などの検出に役立つ高品質の材料や試薬を通じて、JSRグループの力を活かせる分野はますます拡大すると考えています。

個別化医療の研究に役立つ診断試薬材料

JSRは、診断試薬の原料となるポリマー粒子で国内トップクラスのシェアを誇ります。この粒子に特定の物質と結びつく抗体を結合することで、分析の効率を上げる診断試薬をつくることができます。
血液や尿、羊水などの体液に含まれる小粒子エクソソームには、未知のマイクロRNA等の核酸やたんぱく質が豊富に含まれ、これを研究することで診断や治療に役立つのではないかと期待されています。JSRでは、磁性粒子にエクソソームと結びつく抗体を結合したエクソソームキャプチャービーズと、その後の分析に用いる試薬を組み合わせた研究試薬キットであるExoCap®を販売していきます。
将来は、エクソソームの分離手段だけでなく、エクソソーム内に含まれる物質等を検出する試薬のラインアップを増やすなどの展開も視野に入れています。

ExoCap®を用いたエクソソームの分離例

エクソソームの分離例 ※2 プロテオミクス解析 生体内に存在するたんぱく質がどのような役割を果たしているのかを、構造や機能を詳しく
調べることによって明らかにしていくこと

薬づくりを革新するバイオプロセス材料

抗体医薬は病原体に直接作用することから、薬効性が高く副作用が少ないとされており、がんやリウマチの治療薬に使われ始めています。この抗体医薬の製造プロセスの中で、JSRの高分子技術を応用したAmsphere®を用いることにより、主成分である抗体をより早く、より高純度に精製できるようになりました。今後も抗体医薬を用いた先端医療の発展・普及に貢献していきます。

Amsphere®による抗体の精製

Amsphereによる抗体

ライフサイエンス分野のグローバル展開

創薬支援の分野で新しい技術やニーズにスピーディに対応するために、JSRグループの持つ技術を磨くだけでなく、世界各地で戦略的投資や提携も積極的に行っています。

グローバル展開

安田健二

捷和泰(北京)
生物科技有限公司
総経理
安田 健二

捷和泰(北京)生物科技有限公司
~成長市場・中国での医療支援ビジネス~

中国では、国家が農村部への医療普及に力を入れ始めましたが、医療費や保険制度、地理的な問題などから、なかなか病院に行けない、行かない人も多いという現状があります。当社が診断薬中間材料を提供することで、病気の早期発見やより良い医療の提供、医療コストの抑制に貢献していきたいと考えています。
市場としては、ラテックス診断薬と化学発光診断薬の拡大を見込んでいます。JSRが日本で培った高い技術力や製品品質に対する期待が大きい一方、取引先の技術レベルや、高い専門性を持った現地営業人材の育成など課題も多くあります。当社は設立して1年強ですが、中国の医薬分野で存在感を示せるよう、研鑽を続けていきます。

TOPに戻る

CSRレポート2013