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 サステナビリティ推進
担当役員メッセージ

サステナビリティの推進を専任する取締役としてJSRグループ全体のマインドセットの変化を促進します。 サステナビリティの推進を専任する取締役としてJSRグループ全体のマインドセットの変化を促進します。

サステナビリティ推進担当役員の役割

 私が今回就任したサステナビリティ推進担当役員とは、いわゆるCSO「Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者」のことで、サステナビリティを事業戦略に統合することが主な役割として期待されています。これまで社内取締役には、事業の全体を見渡すことのできる人物がそろっていた中に、サステナビリティの推進を専任する取締役として私が加わりました。これは、エリック ジョンソンCEOが、これからの経営に「サステナビリティ」が非常に重要であると考えていることの表れであると感じています。CSOを取締役会に加えたことで、経営トップとしての姿勢を誰もが目に見える形で体現し、社内のみならず対外的にも、自らの考えを明確化する意図があります。

 「サステナビリティ」と「レジリエンス」という言葉に焦点があてられたのも、エリックCEOになってからのことです。中期経営計画策定の議論を進めるうえで、「現状維持」や「守り」のニュアンスを持つ「サステナビリティ」だけではなく、前向きで力強いイメージを持つ「レジリエンス」も導入されたのですが、この二つの言葉を合わせて使ったことに大きな意味があると考えています。


 私の考える「レジリエンス」を持った組織とは、今のような不透明な時代にあって予測のつかない事態が起きた場合にも、グローバルに社内外の知を結集してその時々に合わせた最善策を素早く実行できるという、強靭かつしなやかで伸びがある組織です。そのためには、個人レベルと会社レベルの両方で専門性を高め、普段から知識を蓄積していくことが重要であると考えています。個人では、常に自分で考える習慣を持ち、多様性を認め合って人の意見にも耳を傾けながら、最後には自分自身で判断するスキルを持ち、会社ではそうした個の力を一つに結集するためのコミュニケーションが普段から取れていることかと思います。こうした姿勢を常に高く維持できていれば、底力がある「レジリエンス」を持った組織と呼べるのではないでしょうか。

 JSRグループが、将来にわたって持続可能かつ社会から必要とされるには、製品や財務基盤の優秀さなどの企業価値だけではなく、さらなる新たな企業価値を築き上げることが必要であり重要です。この「新しい企業価値を創り出す」という決意を明確なカタチにしていくことが、CSOである私の仕事だと認識しています。まずはJSRグループという会社が、従業員にとって誇れる会社であるべきです。そのためには自分と会社と社会の関係性について、よく認識しなければなりません。日常業務の中では、具体的な計画やアクションは非常に重要なものではありますが、気持ちの切り替えや発想の転換といった「マインドセットを変える」ことで本当の意味での社会とのつながりを認識することが、自分の仕事の価値を認識するうえで重要だと思います。これは個人のモチベーションを上げ、仕事の生産性向上にもつながっていきます。できる限り多くの従業員がマインドセットを変えられるように働きかけたいと思います。

「JSRサステナビリティ・チャレンジ」の成果と今後のビジョン

 当社では、2019年度より現在の事業活動を通じた社会への影響を定量的に確認する「JSRサステナビリティ・チャレンジ」活動を実施しています。JSRグループとして、サステナビリティを事業戦略の中に取り込むことを目的にすべての事業部門でサステナビリティも含めた長期的な展望を描いてもらいました。その中で、各事業部のキーパーソンを集めて検討する体制を構築できたことは一つの成果でした。「JSRサステナビリティ・チャレンジ」では、本当に様々な意見が提示され、自分たちが今まであまり重きをおいていなかったこと、新たな側面から捉え直すことを洗い出すことができました。同じ事業を推進していく中でも、違う観点、違う尺度がある──それらを事業部のキーパーソン自らが見つけ出していったところに、とても大きな意義を感じています。

 現在策定中の次期中期経営計画では、各事業部の立場から「JSRサステナビリティ・チャレンジ」の成果として、経営・財務的な側面ばかりではなく、サステナビリティやESGの視点から中長期で注力していきたいことを明示してもらう予定です。それは決して財務的価値と相反するものではなく、マインドセットを変えて事業を見つめ直せば、それは同時にサステナビリティにも貢献できるということがわかってくるはずです。CSOとして、まずこの中期経営計画への明示を実現すべく取り組んでいきたいと思っています。

 さらに今後は、事業の変革や経営資源の集約などを行う際にも、事業として継続すべきか否かを決断する一つの尺度としてサステナブルな指標も取り入れていきたいと考えています。「JSRサステナビリティ・チャレンジ」の活動を通じて、各事業部にもこうした考えに対する理解が進みましたので、この流れを絶やさないようにしていきます。たとえば、気候変動に関しては事業部とともにTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言への対応にかなり時間をかけてきました。こうした作業を通じて会社全体のマテリアリティを見直していく中で、JSRグループ全体としてどのように優先順位をつけ、どのようにKPIを策定するかなど、自らの目標・指標を選ぶ際の指針としてSDGsやTCFDなどの国際的イニシアティブを積極的に活用したいと思います。

サステナビリティ推進担当役員メッセージ

注力していきたい施策について

 世界中がコロナ渦にある今、当社でも「新しい働き方」を模索するプロジェクトが進行中です。これは在宅勤務の拡大などに留まらず、新しい働き方に伴う人事制度や評価の仕組みなどを含め、制度の根本的なところから見直す機会が来たのだと認識しています。

 JSRグループがサステナブルな企業であるための基本は、やはり「人」です。たとえ時代が移り変わっても、人材の大切さと労働上の安全を守ることは、その時々の情勢に左右されるものではなく、常に重要視すべきものだと考えています。なかでも「安全」は、当社にとって基本中の基本と言えるもので、長年にわたってしっかり取り組んできております。4年前には「安全衛生基本理念」も策定し、2025年を目標年度とした長期視点で安全文化の醸成に取り組んでいます。安全について必要なことは、このプランを着実にやり抜くことだと考えています。

 また本年3〜4月に各国で緊急事態宣言が発令以降、社内から「研究途上の技術の中に何か使えるものはないか」、「商社機能を持つグループ会社を通じて不足している医療器具を調達することはできないか」など、感染拡大の防止にJSRグループとして貢献できることを模索する声が頻繁に聞こえてくるようになりました。こうした活動を効率的に展開するには、「当社グループにとって社会貢献とは何か」という考え方を明確に示す必要があります。もともと当社グループの企業理念は、「マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します」というものですので、そもそもの生業が社会に貢献しているという自負があります。企業活動を通じた社会貢献とは何か。一般的にはフィランソロピー(慈善事業)的な側面が強調されますが、JSRグループにとって本業以外での社会貢献とは何かについて、改めて考えるべき機会なのかもしれないと思っています。

 これまでは、常に顧客の有無を発想の基盤に据え、様々な選択をしてきましたが、これからは研究開発テーマ選びなどの切り口として「社会貢献」も外せなくなるだろうと考えています。それはまた、SDGsと事業との結びつきにも関係してくるのかもしれません。

企業価値を高めるサステナビリティであるために

 従業員の中でも、特に若い人たちがJSRグループで働き続けたいと思える、またこれから就職を考えている学生たちが入社したいと思える会社にしていきたい──これも、自分がCSOである間にやりたいことの一つです。そのためにも、これからは従業員一人ひとりとのエンゲージメントをより高めていきたいと思っています。

 また、サステナビリティに関する情報発信についても、現在、JSR単体としての情報は充実しているのですが、グループ全体としてどうあるべきかを見直すべき時期に来ていると考えています。グループ会社や関連企業は、国・地域に留まらず立地や文化も異なりますので、皆で一律に同じ活動をしましょうというのは現実的ではありません。一方で、JSRグループとして外すことのできない基本的な理念はしっかり共有し、同じ方向を目指すようにしなければならず、そのために改めて、ネットワークを構築する必要を感じています。

 CSOという役職に就いたからといって、これまでにない特別なことをしましょうとか、斬新な取り組みを考えてくださいなどといったお願いをするつもりはありません。同じ取り組みでもマインドセットを変えることで、価値の捉え方が大きく変わります。サステナビリティは、単に理想を振りかざすものではなく、現実の企業価値につながるものだということを従業員一人ひとりに考えていただきたい、それが私の願いです。

 JSRグループがこれまでに取り組んできた活動の中に、サステナブルな要素、社会や環境に貢献するという要素は必ずあるはずです。これからは今までよりも少しだけ、それらの要素が重要だと意識することができれば、理想論ではなく現実としてJSRグループの企業価値を高めることにつながる。私自身そう信じて、CSOという役割を全うしていきたいと思います。

JSR株式会社 取締役上席執行役員
サステナビリティ推進担当
サスティナビリティ推進部長(CSO)

中山 美加