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JSRグループのサステナビリティJSRグループが取り組むべき
マテリアリティ

JSRグループでは、持続可能な地球環境や社会の実現に貢献するため、マテリアリティ(重要課題)を特定しています。その過程で、「JSRグループにとっての重要度(内部要因)」と「ステークホルダーにとっての重要度(外部要因)」を2軸としたマトリクスを使用して整理を行いました。そのうえで、自社グループにとってもステークホルダーにとっても重要度が高い課題を「JSRグループの考えるマテリアリティ」としました。

2017年にスタートした中期経営計画「JSR20i9」では、JSRグループが取り組むマテリアリティをCSR活動の推進という観点で、「事業活動で貢献する社会的課題」「事業活動によって生じる社会的課題」「事業活動の基盤となる課題」の3つの切り口に分け整理しました。2020年、新しい中期経営計画を策定するにあたり、マテリアリティの見直しを検討しております。2019年に実施した有識者との対話では、マテリアリティを考える際に事業領域と経営基盤に分け、二元論で考える必要性が指摘されました。この指摘をマテリアリティの見直し検討に取り込むこととし、「事業活動」「経営基盤」の2つの切り口に分け再整理を行ったうえで、まず「事業活動」に関しては、自社の社会への貢献度を計測する「JSRサステナビリティ・チャレンジ」を実施することとしました。

※ JSRサステナビリティ・チャレンジ:5事業部に対し、社会へのポジティブ/ネガティブインパクトをヒアリング調査のうえ、JSRグループの事業活動で生じるプラスとマイナスの重要インパクトをまとめる取り組み

この「JSRサステナビリティ・チャレンジ」において、「事業活動」を通じてJSRグループが提供できるアウトカムのインパクトを、「生活の質・幸福への貢献」、「健康長寿社会への貢献」、「地球環境保全への貢献」の3つに集約しました。そして、これらのインパクトを「事業活動」におけるマテリアリティであると位置付けました。

※ アウトカム:社会への提供価値

「経営基盤」の領域に関しては、ESGすなわち社会/環境/ガバナンスの3つの切り口に分け、現在認識しているマテリアリティを分類しました。今後、新中期経営計画を策定する過程を通じて、JSRグループが一体となり共通して取り組んでいくべきマテリアリティを吟味し、絞り込みと再整理を行ってまいります。以下の図は、現状のマテリアリティの捉え方をお示しするものです。

事業活動 企業活動

なお、これらのマテリアリティについては、社会からの要請の変化、様々なステークホルダーからの意見やニーズによって変わっていくものであると考えており、以下の運用によりマテリアリティの見直し・特定を行ってまいります。

1) 毎年の妥当性確認は、有識者、従業員、レスポンシブル・ケア活動などでのエンゲージメントを通してチェックを行う

2) 新たな中期経営計画策定のタイミングで、有識者の方々との意見交換を通して、マテリアリティを特定する過程の透明性や納得性を確保しつつ定期見直しを実施する

2020年度は、「JSRサステナビリティ・チャレンジ」を通じてJSRグループの社会へのインパクトを整理した取り組みについて、日本政策投資銀行 竹ケ原様からご意見をいただきました。
今回竹ケ原様から頂戴したご意見を参考に、JSRグループが目指すべきマテリアリティの在り方を含め、今後のサステナビリティ推進活動深化に向けた取り組みの検討を行ってまいります。

社会へのインパクトを計測する試み
「JSRサステナビリティ・チャレンジ」について

『JSRグループのマテリアリティとSDGs』をテーマに行われた2019年ダイアログにて、日本政策投資銀行執行役員 竹ケ原啓介様には「インパクトの重要性」をご指摘いただいていました。そこで今回、JSRグループによる社会へのインパクトを計測しようという「JSRサステナビリティ・チャレンジ」について、その試みや成果への評価を竹ケ原様にうかがいました。

保安管理の基本方針

竹ケ原 啓介氏(たけがはら けいすけ)
日本政策投資銀行 執行役員
経済産業省「環境イノベーション・ファイナンス研究会」委員・
「TCFDコンソーシアム企画委員会」委員

— 今回の「JSRサステナビリティ・チャレンジ」という試みについて、どのように評価されますか?

竹ケ原:各事業部を巻き込み、時間をかけてヒアリング調査や議論を積み重ねたプロセスが大変印象的です。実際、全社横断的にこの水準でインパクトの洗い出し作業ができている企業は多くないと思います。しかも、特にポジティブインパクトについて、各事業部からこれだけの切り口や材料が出てきたことには感心しました。また、この作業を事業部単位に留めず、グループ全体のインパクトをポジティブ、ネガティブの両面から把握しようという姿勢は、事業ポートフォリオを巡る議論につながる先駆的なものだと思います。事業部毎の議論の詳細や、グループとして把握することで得られた示唆など、可能な範囲でWebサイトなどを通じて開示されることをお勧めいたします。

— 抽出された社会へのインパクトについて、どのように感じられましたか?

竹ケ原:顧客企業を介して社会への価値提供(アウトカム)を行っているB to Bの特徴を活かしたフレームワークは、マテリアルを通じた価値創造を掲げるJSRグループらしい整理の仕方だと思いました。アウトカムは最終製品を提供する企業に直接的には帰属することになりますが、このフレームワークのおかげで、実はその多くがJSRグループにより提供されている構造がわかりやすく伝わってきます。これは、JSRグループが生み出したインパクトが最終製品を介して社会に与える影響を示していると見ることもできますから、今後、これをより具体的にわかるように提示できると良いですね。そうしたデータのうち開示可能なものがあれば、ぜひ公開することをお勧めします。
また、エラストマーや合成樹脂などのように、既に顕在化している社会課題の解決にポジティブなインパクトを与えている財への言及に加えて、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を踏まえて、いわゆるウィズコロナ・ポストコロナ時代への貢献という側面も紹介してはどうでしょうか。今回のパンデミックを経て、遠隔化、非接触をキーワードに全世界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に加速すると言われており、これが社会に与えるインパクトは非常に大きなものになるでしょう。貴社は、生産性改善や研究開発の効率性改善に向けて量子コンピュータ技術に着目するなど、これまでもDXを先取りしてきた実績があります。電子材料やディスプレイ、ライフサイエンス事業が世の中にもたらす提供価値も含めて、ニューノーマルに向かう社会に与えるインパクトについて、グループとして大きな視点から説明されても良いのではないかと感じました。

— 「JSRサステナビリティ・チャレンジ」について、特に重要な視点は何だと思われますか?

竹ケ原:ESG投資家は、長期投資の前提として、不確実な将来を展望し、想定される様々な変化に対してリスクと機会の両面から備えができていること、すなわちビジネスモデルの持続可能性/レジリエンスを注視しています。ここで重要なのは、将来のビジネスモデルに影響を与える課題を適切に把握し、リスク管理はもとより、これを機会とする成長戦略を提示することです。たとえば、JSRグループにとって、気候変動はビジネスチャンスになるはずです。今回抽出されたポジティブインパクトに照らせば、気候制約が強まれば強まるほど、エラストマーや合成樹脂事業が社会に提供する価値が拡大するシナリオが見てとれます。パワートレインがどのように変化するにせよ、また、モビリティが分散所有に向かうにせよ、シェアリングに向かうにせよ、エラストマー製品が貢献する低燃費性能や耐摩耗性能は、非常に競争力を持つでしょう。また、合成樹脂が貢献する車体の軽量化ニーズもますます高まると考えられます。こうした視点を気候変動以外の様々な社会課題に対して展開していくことが大切です。ウィズ・ポストコロナ時代に重要性を増すデジタル化やヘルスケアなどのテーマを考えても、貴社の強みを語るシナリオは数多くあるように思います。

※ レジリエンス:強靭であること

— JSRのサステナビリティに対して感じられた今後の課題があればお聞かせください。

竹ケ原:JSRグループの特徴を活かすうえで、「長期性」をより強く打ち出すことは有効でしょう。グループとしてのより長期的なビジョン、たとえば2050年の姿を語ることが大切だと思います。主力事業でポジティブなインパクトが期待される気候変動問題では、既に2050年時点での温室効果ガス排出量の「ネットゼロ」が主題になりつつあります。社会にインパクトを与えるパートナーである顧客企業の多くも、既に2050年ビジョンを描き始めています。現状で具体的な数値目標の設定が難しいとしても、トップメッセージなどを通して示されるべきだと考えます。