ESG指数、SRI指標と銘柄への組み⼊れ

事業活動の基盤となる課題 レスポンシブル・ケア

1.基本的な考え方

JSRグループは、「経営方針-ステークホルダーへの責任」および「環境・健康・安全に関する日本化学工業協会基本方針」を参考に環境安全マネジメント方針の推進項目を制定しており、これに基づく具体的な活動計画を策定して、レスポンシブル・ケア®(RC)活動を推進しています。

(1)方針と推進項目

① 環境・安全に配慮した製品の開発

新製品の開発においては、研究開発から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの評価を行い、環境・安全・健康に配慮した製品の提供に努めます。

② 製品に対する環境・安全情報の提供

製品に関する環境・安全情報管理システムを整備し、顧客や輸送業者などにSDS(安全データシート)※1、イエローカード※2を提供しています。

③ 地域社会の安全確保と環境の保全

事業活動に伴う環境影響に配慮し、地球環境対策や事業所の安全対策および大規模地震対策に積極的に取り組み、より信頼感のある事業所づくりを目指します。

④ 環境負荷の低減

化学物質の環境影響調査を行い、計画的に環境への排出量の削減に努めます。廃棄物については、発生量の削減(リデュース)、再使用(リユース)、再利用(リサイクル)を徹底し、環境負荷の低減に努めます。

⑤ 国際事業における環境・安全の確保

国際的な環境安全技術の移転に協力するとともに、海外における企業活動に際しては、国内外の規制を遵守し、進出先国の環境・安全の確保に協力します。

⑥ 社員の健康安全

化学物質およびその取り扱いに関する安全性事前評価を充実し、作業と設備の改善を行うとともに、さらに健康で安全な職場づくりに努めます。

※1 SDS(安全データシート)
Safety Data Sheetの略で、化学製品を安全に取扱うための情報が載っている文書です。労働安全衛生法では、化学物質を安全に取り扱い、災害を未然に防止することを目的に、 化学物質を譲渡・提供する場合には、その化学物質の危険有害性等を記載した文書(SDS)を交付するなど情報の提供が義務づけられています。

※2 イエローカード
危険物・危険品を陸上輸送する際に携行する「緊急連絡先カード」です。事故時の措置などの情報が掲載され、総合的に危険物輸送の安全を図ろうとするもので、運行中は必ず携行するよう国土交通省(自環第48号 平成9年2月18日)および消防庁によって指導されています。

(2)国際的なイニシアティブへの参加

レスポンシブル・ケア®(RC)世界憲章への支持宣言書署名

RC世界憲章支持宣言書

RC世界憲章 支持宣言書

RC世界憲章は、世界のRC活動をさらに充実・強化させるために、国際化学工業協会協議会(ICCA)が制定した化学産業界共通の自主的な活動方針です。
JSRはこの活動方針に賛同しており、RC世界憲章への支持宣言書に2008年10月に署名するとともに、改訂RC世界憲章への支持宣言書にも2015年3月に署名しています。この署名により当社は国内だけでなく、世界的な健康・安全・環境保全の向上に、より一層貢献することを約束しました。

2.RC推進体制

RC推進委員会は、環境安全担当役員を委員長として、JSRグループの環境安全、製品安全、化学品管理などに関する活動方針および活動計画を策定し、その活動結果を管掌しています。
具体的な運営実行は、さらに各種会議や委員会を設置し、計画に沿って活動しています。
また、RC推進委員会で決議した内容は、定期的にCSR会議へ上程し、経営層にも報告しています。

RC推進体制

3.環境安全マネジメント

(1)法規制・各種基準への対応

環境・安全にかかわる法令に関して、新たに公布、施行、改正などが行われた場合、本社担当部門から情報を発信し、周知徹底を図っています。JSRグループでは、法令遵守規程に基づき、遵守すべき法令を国ごとに特定し、毎年業務執行が法令に適合しているかを自己チェックする遵法確認を実施しています。

また、当社はすべての工場において、高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法の認定事業所(者)の取得を積極的に進めています。今後も認証・認定の維持向上を図り、保安防災の継続的改善に努めていきます。

認定名JSR事業所認定更新年月
<高圧ガス保安法>
認定(完成、保安)検査実施者
四日市工場2015年9月
鹿島工場2016年3月
千葉工場2017年3月
<消防法>
危険物施設の変更工事に係る認定事業所
四日市工場2016年3月
鹿島工場2016年3月
千葉工場2017年6月
<労働安全衛生法>
第一種圧力容器運転時検査、
ボイラー等の開放検査周期認定
四日市工場2018年3月
鹿島工場2017年1月
千葉工場2018年3月

高圧ガス認定事業所監査

JSRは、高圧ガス認定事業者として、認定事業所である四日市工場、千葉工場、鹿島工場に対し、毎年本社監査を実施しています。2018年度の監査において、すべての認定事業所が保安管理システムに継続して適合していることを確認しました。また、高圧ガス認定事業所であるグループ企業の監査も行っており、当該事業所の保安管理システムの適正な運用に協力しています。

(2)環境マネジメントシステム

JSRは、環境経営を支える環境マネジメントシステムとして、ISO14001を1999年に国内主要3工場で認証取得し、以降、毎年認証を維持しています。2015年9月のISO14001改訂版への対応についても、2018年1月までに3工場とも2015年版への移行を完了しました。

また、JSRグループ各社も製造拠点を中心に認証を取得し、ISO14001規格に準じたマネジメントシステムによる環境保全活動を推進しています。

ISO14001取得状況

国内(9社 16事業所)海外(8社 8事業所)
JSR(株)
日本カラリング(株)
テクノUMG(株)
JSRエンジニアリング(株)
(株)エラストミックス
JSRマイクロ九州(株)
(株)イーテック
JMエナジー(株)
JSRロジスティクス&カスタマーセンター(株)
ELASTOMIX(THAILAND)CO.,LTD.(タイ)
JSR Micro Korea Co., Ltd.(韓国)
JSR Micro, Inc.(米国)
JSR Micro N.V.(ベルギー)
JSR BST Elastomer Co., Ltd.(タイ)
JSR Micro Taiwan Co., Ltd.(台湾)
日密科偲橡膠(佛山)有限公司(中国)
PT.ELASTOMIX INDONESIA(インドネシア)

(3)労働安全衛生マネジメントシステム

従業員や関係者の労働安全衛生上のリスクを管理し、継続的に労働安全衛生システムの改善を図り、業務上の事故や健康障害をなくすため、OHSAS(Occupational Health and Safety Assessment Series)に準拠した安全衛生マネジメントシステムを構築し運用しています。

(4)環境安全監査

① 本社環境安全監査

JSRは、社長を監査チームのトップとした工場・研究所への本社環境安全監査を毎年実施しています。2015年度の監査から、被監査部門が抱える課題の共有と議論を行うスタイルに変更し、さらにトップと従業員の対話会を設け、双方の想いを共有することで環境・安全活動の活性化を図っています。

2018年度の監査では、安全最優先の意識が浸透しつつあり、課題であった設備管理、環境保安要員の確保が進んでいることを確認しましたが、共通課題として、リスク情報の共有化と評価レベル合わせが不足している点、緊急事態の想定と対応の明確化が望まれる点が挙げられました。なお、監査を通じて経営層や本社へ対応を依頼する事項の摘出、提言も行っています。2019年度は、① 保安事故(火災、漏洩)に関するリスク管理状況 ② 不安全行動防止のための取組み状況、および環境・化学品関係法令の順守状況を重点課題として監査します。

  • 現場を視察する小柴社長(当時)

    現場を視察する小柴社長(当時)

  • 小柴社長(当時)との対話会の様子

    小柴社長(当時)との対話会の様子

  • 監査の様子

    監査の様子

② グループ企業環境安全監査

JSRでは、グループ企業と一体になったレスポンシブル・ケア活動を目指すため、製造・輸送・工事にかかわる国内グループ企業に対しても、JSRの監査方式を用いて環境安全監査を実施しています。監査を通して、各社の活動状況を確認すると共に情報の共有化を図ることができました。

なお、海外グループ企業に対しては、各国の法令や文化・慣習の違いから、各事業所で抱える課題や悩みが日本と異なることを考慮し、2018年度は監査という形ではなく、現地を訪問しての安全情報交換会という形で実施しました。
さらに、JSR Micro, Inc. JSR Micro N.V. とのEHS(Environment, Health & Safety)会議を日本で実施しました。

2018年度 本社環境安全監査 被監査部門
JSR(事業所)四日市工場 千葉工場 鹿島工場 筑波研究所
JSRグループ企業
(国内)
日本ブチル、エラストミックス、JSRエンジニアリング、イーテック、ジェイエスアールクレイトンエラストマー、JSRライフサイエンス、JSRマイクロ九州、日本カラリング、JMエナジー
2018年度 海外グループ企業 安全情報交換会 実施部門
JSRグループ企業
(海外)
ELASTOMIX INDONESIA、ELASTOMIX(THAILAND)、日密科偲橡膠(佛山)
  • 海外グループ企業との安全情報交換会の様子

    海外グループ企業との安全情報交換会の様子

  • EHS会議における安全体感研修の様子

    EHS会議における安全体感研修の様子

(5)環境功労表彰

環境保全活動のさらなる活性化を目的として、環境製品開発、環境技術開発、環境負荷低減、および地域社会への環境支援等の環境保全に関して優れた貢献をした人に対する表彰制度「環境功労表彰」を設けています。2018年度は、4件で10名が表彰されました。

事業所件 名
四日市工場ドレン作業クローズド化による有害大気汚染物質排出低減
四日市工場色度計導入による着色排水流出防止
千葉工場ガスタンクからの大気へのブタジエン排出抑制
四日市工場プラントからの排水臭気削減

4.化学品管理の基本方針

JSRでは、昨今の世界的な化学品管理の動向を踏まえ、環境安全マネジメントの推進組織にて以下の3つの基本方針を定め、化学品管理に取り組んでいます。

  • ① ハザードベース管理※3に代わり、リスクベース管理※4を目指します。
  • ② グローバルに統一された様式を用いて、サプライチェーン全体での管理を指向します。
  • ③ 製品の安全に万全を期すため、法規制対応に加え自主的取り組みを推進します。

※3 ハザードベース管理:物質の有害性のみを基準とする管理

※4 リスクベース管理:物質の有害性に暴露量を乗じたものを基準とする管理

5.ステークホルダー・エンゲージメント

各ステークホルダーと対話することによりPDCAを回すことで、新たな課題の抽出と改善対応を重ね、よりよい社会の構築へと貢献しています。詳細につきましては、各リンク先をご覧ください。

従業員
:従業員意識調査、企業理念浸透活動、CSR & RC キャラバンなど
地域社会
:社会貢献・地域貢献活動、地域対話会など
お客様
:お客様の満足度調査、CSR質問票への回答、各賞の受賞など
株主
:株主総会、株主および投資家とのコミュニケーション、各種情報開示など

6.法令違反実績開示

2018年度は、環境・安全・品質・製品安全・化学品にかかわる法律に関して、法令違反はありませんでした。
過去に発生した事例について、再発防止対策を継続するとともに、社外事例も含めた定期的な事例教育を行うことにより、再発防止に努めています。

レスポンシブル・ケア®(RC)とは

RCロゴ化学工業界では、化学物質を扱うそれぞれの企業が化学物質の開発から製造、物流、使用、最終消費を経て廃棄・リサイクルに至るすべての過程において、自主的に「環境・安全・健康」を確保し、活動の成果を公表し社会との対話・コミュニケーションを行う活動を展開しています。この活動を『レスポンシブル・ケア(Responsible Care)』と呼んでいます。

1985年にカナダで始まったこの活動は、世界58ヵ国・地域の化学産業界で展開されています(2015年4月時点)。他の産業にはみられないユニークな取り組みとして国際的にも大きな注目を集め、1992年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロ市で開催された地球環境サミット(環境と開発に関する国際連合会議)で採択された21世紀に向け持続可能な開発を実現するために各国および関係国際機関が実行すべき行動計画(アジェンダ21)でも奨励されています。