顧客・取引先とのかかわりについての考え方
JSRグループの企業理念は、「Materials Innovation マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献すること」です。
顧客のニーズに合った「革新素材」・「良い製品」を提供し、より良い社会の実現に貢献していくことは、当社グループの最も重要な役割であると考えています。
顧客に安心してお使いいただけるよう、当社グループでは品質保証活動、製品安全に対する取り組みにも力を入れています。
また、全ての取引先に誠意をもって接し、常に公正・公平な取引関係を維持するよう努めます。
顧客に対する安全確保
品質保証活動
JSRは全工場でISO9001の認証を取得しています。「RC推進委員会」のもとで、品質方針、品質保証推進計画を策定し、「品質保証推進会議」および工場ごとの「QA*1推進会議」を設置することによって計画に沿った活動を進めています。また、担当役員を監査チームリーダーとする本社QA監査は、各工場に対し定期的に現地監査を実施しています。
*1 QA:Quality Assurance(品質保証)
PLP*2活動
JSRは1994年に「PLP基準」を制定し、製品安全に対する取り組みを強化しました。「PLP基準」には、基本規程に始まり、製品の設計段階から製造、販売に至るまでの製品事故を未然に防ぐさまざまな取り決めがされており、これに基づく活動を行っています。新たに市場に出す製品については、製品の設計段階から「PLPチェックシート」に基づいて製品の安全性をチェックし、部門長の承認を得た後で販売するシステムを構築しています。
また、製品事故の発生防止のために、顧客とのコミュニケーションを通じて情報の入手に努め、品質管理システムの見直しや評価技術の向上等の品質事故の予防強化を通じ、原料調達から物流までのサプライチェーン全体にわたる品質管理の向上を図っています。
*2 PLP:Product Liability Prevention(製造物責任予防)
顧客への環境・安全情報の提供
JSRでは、危険有害物質に限らず、ポリマーを含む全ての製品についてMSDS(製品安全データシート)を整備し、顧客に環境・安全情報を提供しています。
現在のMSDSは、全てJIS Z 7250および労働安全衛生法、PRTR法、毒劇物取扱法に対応しています。さらに、顧客に対して製品に関する正確な内容のMSDSを確実に提出することを目的に、MSDS電子管理システムを構築し、2002年から運用しています。本システムには利用者管理、化学物質の情報管理、作成支援、発行履歴管理の機能を備えており、当社製品についての環境・安全情報を正確かつ迅速に提供しています。
輸送時の環境・安全の維持
JSRでは、物流業務を社外の物流会社に委託しています。輸送時の環境・安全を維持するため、業者を通じて運転手の安全教育はもとより、緊急時の処置と連絡先を記載したカード(イエローカード)を常時携帯させ、輸送時の環境・安全を確保しています。
化学品安全
化学物質管理の基本方針
JSRでは、昨今の世界的な化学物質管理の動向にかんがみ、以下の3つの基本方針を定め化学物質管理に取り組んでいます。
ハザードベース管理*3に代わり、リスクベース管理*4を目指します。
グローバルに統一された様式を用いて、サプライチェーン全体での管理を指向します。
製品の安全に万全を期すため、規制と自主の最適な組み合わせで臨みます。
*3 ハザードベース管理:物質の有害性のみを基準とする管理
*4 リスクベース管理:物質の有害性に曝露量を乗じたものを基準とする管理
国内化学品への対応
- ■改正化審法と化管法への対応
- 2009年に改正された「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)が2010年4月に施行されました。JSRでは、この改正化審法への対応を進めています。
- ■GHS
- GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)とは、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」であり、(1)化学品を危険有害性に応じて分類し、(2)製品の包装容器にラベルで表示し、(3)MSDS(製品安全データシート)に内容を記載し提供することを世界的に統一する仕組みです。国内では労働安全衛生法で対象物質含有製品のラベルとMSDSについてGHS化が義務づけられており、JSRでは対象物質を含有する全ての製品について危険有害性を分類し、ラベル表示の対応を完了しました。MSDSについては2010年12月の期限までにGHS化を完了しました。海外向けにはEU、韓国、台湾、中国など各国で法制化が進められているGHSへの対応を進めています。
輸出化学品への対応
- ■欧州(REACHへの対応)
- REACH(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)とは欧州の「化学品の登録、評価、認可及び制限」のシステムであり、2007年6月より施行されています。REACHでは既存化学物質、新規化学物質の区別なく、年間1トン以上欧州域内で製造・輸入する化学品は一部例外を除き、安全性試験等のデータをつけて登録が義務づけられています。JSRは、欧州に輸出される製品中の登録対象物質をリストアップし、代理人(OR)を通じて予備登録を終了しました。そのうち、2010年11月30日までに登録が必要な物質については、期限内に本登録されたことを確認しました。
- ■米国
- 米国の新規化学物質の届出制度は、環境保護庁(EPA)所管の有害物質規制法(TSCA)および関連する連邦規則により定められています。既存化学物質リストに収載されていない物質を米国へ輸出する場合には、法的手続きを実施しています。
- ■韓国
- 韓国の新規化学物質の届出制度は、環境部所管の有害化学物質管理法および労働部所管の産業安全保健法に定められています。既存化学物質リストに収載されていない物質を韓国へ輸出する場合には、法的手続きを実施しています。
- ■中国
- 中国の新規化学物質の届出制度は、国家環境保護総局化学品登記中心所管の新規化学物質環境管理規則に定められています。既存化学物質リストに収載されていない物質を中国へ輸出する場合には、法的手続きを実施しています。本弁法は2010年1月19日に改正・公布、2010年10月15日に施行され、現在改正弁法への対応を進めています。
- ■台湾
- 台湾へ製品を輸出する場合には、毒性化学物質管理法および危険物及有害物通識規則に従って対応しています。台湾では新規化学物質の届出制度の導入が進められています。現在は既存化学物質の届出が終了し、2011年6月に公表される予定です。JSRでは新たな新規化学物質届け出制度への対応を進めています。
業界および国際的な対応
JSRが所属している(社)日本化学工業協会は、PS*5(Product Stewardship)やLRI*6(Long-range Research Initiative)の活動を推進しており、当社は同協会のワーキンググループへの参加や研究資金の一部を負担するなど、それらの活動に積極的に取り組んでいます。
*5 PS(Product Stewardship)
PSとは国際化学工業協会協議会(ICCA)が第一回国際化学物質管理会議(ICCM-1)で公表したGPS(Global Product Strategy)を推進するうえで各企業が自主的に行う活動です。そこでは、化学物質の製造者、供給者、顧客などサプライチェーンの関係者が協力して、安全とヒトの健康の確保および環境の保護を目的に化学物質管理を行います。
*6 LRI(Long-range Research Initiative)
国際化学工業協会協議会(ICCA)の重要課題の一つで、化学物質の環境・安全・健康に与える影響に関する自主的長期的研究計画です。それらの主なテーマは内分泌攪乱化学物質、神経毒性、化学発がん、過敏症です。
グリーン調達の取り組み
原材料に関して
JSRは、従来より原材料および事務機器・備品類に関して、環境負荷の少ないものを優先的に購入するグリーン調達に取り組んできました。また、近年の化学物質をサプライチェーンで管理する業界の動きに合わせて、2008年10月にアーティクルマネージメント推進協議会(JAMP)*7に加入し、グリーン調達ガイドライン*8の見直しを行いました。今後はサプライチェーンでの情報伝達を重視したグリーン調達に積極的に取り組んでいきます。
*7 アーティクルマネージメント推進協議会(http://www.jamp-info.com/)
アーティクル(部品や成形品等の別称)が含有する化学物質等の情報を適切に管理し、サプライチェーンの中で円滑に開示・伝達するための具体的な仕組みをつくり普及させることを目的として、2006年9月に業界横断の活動推進主体として発足しました。
JSRはJAMPへの参加を通じて、その理念の実現に資する活動を推進します。
*8 グリーン調達ガイドライン
JSRはJAMPへの加入に際し、グリーン調達の見直しを行いました。
管理対象物質をJAMP MSDSplus(http://www.jamp-info.com/msds)の管理対象物質に対応させると同時に、フォーマットもMSDSplusに変更しました。さらにグリーン調達の範囲を従来の原材料から包装材、設備にまで広げた取り組みを行っています。サプライチェーンでの化学物質のリスク管理を効果的に実施するため、情報伝達を重視したグリーン調達を推進していきます。
事務機器・備品類に関して
JSRは直接製品や製造に関係しない事務機器、備品類を環境に配慮して購入する活動をグリーン購入と定義し、製品原材料、包装材、製造設備の調達に関するグリーン調達と区別しています。
2000年に「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)が制定され、2001年の実施にあたって「基本方針」が公表されました。当社では本方針を参考にしながら、省エネルギー対策やリサイクル使用率の高い機器・備品類を優先して購入するよう努めています。2010年度は、これまでの品目数による集計に代えて、より実態を表す購入金額による集計を実施
しました。全事業所での全購入金額23,546(千円)のうち、グリーン購入金額は22,440(千円)となり、グリーン購入率は95%でした。
CSR調達の取り組み
JSRではサプライチェーンにおけるCSR活動の実践・推進を目指して、2010年度、「CSR調達」の取り組みを開始しました。取引先の環境への配慮度合いと社会的責任の実践度合いについての基準を設けて、サプライチェーン全体での水準向上を図っています。
具体的には、「購買指針」に基づいて、環境面と社会面についての取引先の状況をアンケート調査で把握し、問題がある場合には、その取引先に調達担当者が直接出向いて一緒に問題を解決する方式をとっています。
初年度の2010年度は、原料資材の購買金額で90%をカバーする国内外の取引先52社について、調査を実施しました。6社が水準に達しませんでしたが、改善指導を実施した結果、うち4社は合格水準に到達しました。
2011年度は、原料資材の購買金額でのカバー率を95%に上げるほか、工事関係の取引先も対象に加える予定です。
個人情報保護
JSRグループは、高度情報通信社会における個人情報保護の重要性を認識し、「個人情報の保護に関する法律」に基づいて、プライバシー・ポリシーおよび個人情報取扱規程を制定、実行しています。