ホームCSRCSRレポート2015省エネルギー・省資源・気候変動対策 トピックス

CSRレポート

SRI指標と銘柄への組み入れ

省エネルギー・省資源・気候変動対策 トピックス

社会に役立つもの、さらには地球環境に配慮していること。
この両面を意識した事業の展開を目指します。

SIFCLEAR®を使用した高耐久防汚塗料を塗装(画像提供:松竹株式会社 株式会社歌舞伎座)

SIFCLEAR®を使用した高耐久防汚塗料を塗装(画像提供:松竹株式会社 株式会社歌舞伎座)

JSR グループが掲げる「E2 イニシアティブ®」は、私たちが製品を作り、事業を展開していく上で「環境面での価値創出」を常に意識するための重要かつ明確な考え方です。また、事業活動を行う中で、エネルギー・資源・気候変動などの問題の解決に取り組むための考え方でもあります。

「E2イニシアティブ®」の展開で環境問題に取り組む

限られた「地球」という惑星で人間と多くの生き物が共存していくために、私たちは環境問題に真剣に取り組まなければなりません。JSRグループでは、環境への負荷低減と、製品における環境面での新たな事業機会創出を両立するという視点から、「E2イニシアティブ®」という考え方を導入しています。
「E2イニシアティブ®」とは環境を軸にした事業機会の創出を図る「Eco-innovation」と、CO2排出量削減を中心とした「Energy Management」、つまりは「攻め」と「守り」の両面での価値創出を追求していこうとする考え方です。これは価値の軸をこれまでの「差別化」か「コスト」かの二元論から転換し、「環境性能」という軸と両立させることが不可欠になってきたことを反映しています。製品開発時の設計段階から製品の使用段階までを含めたLCA(ライフサイクルアセスメント)評価で環境負荷を捉えることで、事業を通じて環境問題に取り組んでいます。

「E2イニシアティブ®」のコンセプト

E2イニシアティブ®のコンセプト

「Eco-innovation」を実践するS-SBRは、事業と
地球環境問題解決に大きな可能性をもたらす

環境に優しく、かつ確実に安全に止まる性能を維持する低燃費タイヤ。その原料として、JSRグループの溶液重合SBR(S-SBR)が高い評価を得ています。JSRグループでは、タイヤの止まるために必要なゴムの特性は変えずに、ゴムと補強材の分子が密に結びつきやすくする技術によって内部摩擦の発生を抑えて、転がり抵抗が低くなるようにS-SBRを設計しています。タイヤの原料から使用、廃棄までのライフサイクルの中で最も環境負荷の高い使用時の負荷低減に役立っています。
自動車のエンジンがモーターに代わってもタイヤは必要であり、環境基準の高い日本や欧州、また交通による環境負荷低減が喫緊の課題である新興国でも、S-SBRのニーズは高くなっています。日本では四日市工場、タイではJSR BST Elastomer社、日本とタイにて生産中で、ハンガリーでの生産も視野にいれています。これらのグローバル展開も、2020年の市場展開を見据え、市場に近くかつ原材料を安定的に調達できる場所で、物流負荷を低減し、供給の安定を図るサプライチェーンマネジメントに基づいて展開しています。E2イニシアティブ®の考え方に立って、低燃費タイヤの世界的な需要に応えることで、グローバルな環境問題に応えていきます。

※ 転がり抵抗:タイヤが回転する時に進行方向と逆向きに生じる抵抗力。タイヤの変形、接地摩擦、空気抵抗が原因。

素材で高性能に貢献

素材で高性能に貢献

JSRグループの発想と技術が、素材の新しい価値を生み出す

CALGRIP®を使用した無電源保冷庫での実証実験(当社四日市工場食堂)

CALGRIP®を使用した無電源保冷庫での実証実験(当社四日市工場食堂)

SIFCLEAR®を使用した防汚遮熱塗料の実績例円柱型タンク(当社千葉工場)

SIFCLEAR®を使用した防汚遮熱塗料の実績例
円柱型タンク(当社千葉工場)

「Eco-innovation」を実践していくことで、今まで培ってきた技術や既存の素材に新たな付加価値を見出すことができた製品があります。
自動車等に多く使われるプラスチック部品の噛み合わせ部等から発生するきしみ音に対し、画期的な効果を有する「HUSHLLOY®(ハッシュロイ)*1」。通常、きしみ音低減の対策として、プラスチック部品へのグリス塗布や不織布貼付等が行われますが、これらが不要になることで部品メーカーの工程短縮につながります。また、素材そのものがきしみ音を低減するため、長期間メンテナンスが不要です。
潜熱蓄熱材料「CALGRIP®(カルグリップ)」は、一般的な保冷剤と違い、−20度〜80度までの間で一定の温度を長時間保持させることができる材料で、医薬品や食料品の定温輸送や保管の分野に加え、建材や空調等に用いることで節電や温度管理に関わる分野での省エネ効果が期待されています。
水系高耐久防汚性材料SIFCLEAR®(シフクリア)は、高い防汚性を有するため塗料に使用することで汚れがつきにくく、「美観」を長期間にわたって保持することができます。かつ塗膜の耐久性が高いので、塗り直し頻度の削減という省資源に貢献しています。特に、遮熱塗料に使用すると長期間にわたり遮熱性能を保持できるため、省エネに効果を発揮します。さらにVOC*2や臭気を発しない環境配慮素材としても注目されています。
もちろん全くの白紙からの新たな発想や技術の開発も企業の将来を考えた上で重要ですが、今、JSRグループが持っている素材や技術が、全く違う分野で生かせないか、価値を生み出すのではないかという柔軟な発想、そしてそれを世の中の役に立つものにするという展望が、事業を通じた社会への価値創出、つまり「攻めのCSR」につながっていくと考えています。

*1:「HUSHLLOY®」はテクノポリマー株式会社の登録商標

*2: VOC ( Volatile Organic Compounds ) 揮発性有機化合物。

環境配慮型製品基準と評価システムの構築

JSRグループでは、生物多様性保全方針に掲げる「生物多様性に配慮した製品開発を推進します」というコミットメントを達成する目的で、専門家の協力を得て「製品の環境配慮基準と評価システムの構築、ならびに主要製品の評価」をまとめました。この新たな環境配慮型製品基準は、生物多様性保全の観点だけでなく、企業活動を通じた持続可能な地球環境への貢献を強く意識した内容としています。
JSRグループでは、今後も環境配慮型製品の開発・提供を通して、持続可能な地球環境に貢献していきます。

LCA・LCIへの取り組み

LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)とは、製品の原料調達から製造・販売・使用・廃棄に至るまでのライフサイクルにおける環境影響を定量的に評価する手法のことです。

LCA・LCIへの取り組み

LCAを実施するには、製品を製造する際の投入資源、排出環境負荷等各段階でどの程度CO2を排出するか(LCIデータ)を算出する必要があります。
代表的な合成ゴムのLCIデータ算出については、合成ゴム業界全体で取り組み、JSRも参加しました。
算出結果については、(社)産業環境管理協会LCAフォーラムのデータベースに登録しています。また、ファイン製品のLCIデータについては、生産工程のCO2発生量を把握しています。
LCAを研究開発段階から導入し、CO2排出量を考慮しながら製品設計を進めていくシステムの運用を開始し、約79製品群(代表グレード115種)のLCAを試算しました(2015年3月31日現在)。
今後も、新たに開発された製品群、グレードについてLCAの試算を進めていきます。

四日市工場クリーンルームC棟の環境対応でも「E2イニシアティブ®(Energy- Management)」を実践しています

Anjaマネージャー、Bart工場長2014年7月に完成したクリーンルームC棟は、最先端半導体材料開発の中核となる施設です。施設内ではナノメートルレベルの加工が行われるため、非常に高いレベルのクリーン度(空気清浄度)を実現すると同時に、ごく微細な振動の影響も避けるため耐震・耐風の機能を持っています。
施設設計段階から、多様な環境対応が組み込まれ、多くの省エネ・省資源が実現されています。外壁パネルの発泡素材には省エネに必要な断熱能力が従来より圧倒的に高く、かつ、温室効果ガスである代替フロンガスを使わずに製造されたものを採用しました。
また、冬期は低い外気温をクリーンルーム設備の冷却源として利用、また高効率のモーターでの送風等で、電気使用量を減らし、CO2削減に貢献しています。