JSR、高密着・高分散材料を開発

~エレクトロニクス分野での展開を想定~
企業情報

JSR株式会社(本社:東京都港区、CEO:エリック・ジョンソン、以下「JSR)は、無機-有機素材などの異種材料の界面制御が可能な新材料(開発名:HAGシリーズ)を開発いたしました。極性基の少ない低密着性基材との密着性を確保することができます。また、耐熱、放熱、熱線膨張などの物性制御を目的として添加される無機や有機フィラーなどを高密度、均一分散可能であり、物性のトレードオフを改良するための添加材料としての使用も想定されます。

5世代(5G)・第6世代(6G)移動通信システムや自動運転の本格化などを背景に、通信・モビリティ・エレクトロニクス分野などにおいて、高温や振動など過酷な環境下での高速通信の実現に向けた低誘電基板材料など様々なアプリケーション、デバイスが開発されており、異種界面制御の重要度はますます高まっています。

当社はデジタルソリューション事業における幅広いネットワークや、これまで培ってきた材料設計の知見を武器に、”Materials Innovation”に繋がる新たなソリューションを追究していきます。

なお、本研究内容につきましては2022629()71()に開催される第5回5G通信技術展にて展示しました。

【ご参考】

材料コンセプト

弊社独自の材料設計技術、およびオープンイノベーションから得た新たな技術を駆使することで、新規な界面制御ユニットを開発し、高い密着性や高い分散性を発現させることに成功しました。新たに開発した界面制御ユニット(NewCore)の金原子への安定化エネルギーは、従来のフェニル構造と比べて非常に大きく、密着性や分散性に寄与する界面相互作用が大きいことが計算化学によりサポートされております。

溶解性、相溶性、熱特性、吸水性、電気特性等の物性は、機能性ユニットで設計可能であり、用途に応じた特性を発現させることが可能です。末端機能化も可能であり、硬化樹脂と架橋反応可能な官能基を導入したグレードも提供可能です。

今回開発した本材料は、SDGsを意識し原料の一部にバイオ原料由来成分を用いたことも特徴の一つです。

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当社SDGsへの貢献  

https://www.jsr.co.jp/sustainability/2021/management/sdgs.shtml

様々な異種材料を接合

樹脂に関する幅広い基盤技術を持つ当社の強みを生かして開発した本材料は、様々な組み合わせの異種材料接合においても強力な密着力を発現しました。金などの不活性な金属表面に対しても高い密着力を示すことを確認しています。また、室温ラミネートによる接着性もあり、粘着剤のような用途にも応用可能です。

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接着状態での電気絶縁性は、高度加速寿命試験(HAST試験、121/85%TH/10V条件下)や絶縁破壊電圧評価(25,150℃条件下)により確認しており、高い信頼性を必要とする用途にも使用可能です。

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フィラーの分散にも活躍

例として、シリカフィラーの高い分散性を確認しています。シリカフィラーを本開発材料でプレ分散した分散液*1)を調整後、エポキシ樹脂を追加したフィラー分散液*2)を作製しました。作製した分散液を一晩静置したところ、シリカフィラーの沈殿が見られず、本開発材料の分散剤としての効果を確認しました。本開発材料を使用しないエポキシ樹脂とシリカフィラーの分散液ではシリカフィラーの沈殿が発生します。

*1) シリカフィラー:本開発材料=973 wt *2) シリカフィラー:樹脂成分=7030 wt

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フィルム化も可能

本開発材料を主材樹脂として使用することも可能です。本開発材料へフィラーを分散させた分散液*3)は、高い保存安定性を示すとともに、容易にフィルム化も可能です。フィラー添加系にも関わらず、しなやかな有機-無機複合フィルムが得られ、伸びや靭性を付与することが可能です。冷熱サイクルなどの衝撃試験においても、高い信頼性を示すことが期待できます。また、エポキシ樹脂等を併用することで弾性を制御できることも確認しており、硬化剤の改質材料としての使用も想定されます。

*3)シリカフィラー:本開発材料=70:30 wt

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