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CSRレポート2013

積み重ねた技術力が、新しい事業領域を切り拓く

絶え間ない事業創造から「新しい事業の柱」を築く

日本での合成ゴム国産化を目指し、1957年に日本合成ゴム株式会社として設立されたのが、JSRグループのスタートラインです。以来、石油化学分野でトップレベルの製品を数多く提供してきました。1990年代には、光・電子材料などのファイン事業分野に業容を拡大。石油化学系事業分野で培った高分子技術などを応用し、事業の多角化に取り組んで、高い収益とシェア確保を実現しました。これらは基盤事業として、今日のJSRグループを支えています。
2010年代に入り、JSRグループの成長とともに、企業理念「Materials Innovation」を実現して社会に貢献することの重要性が増しつつあります。そこで「精密材料・加工」「環境・エネルギー」「メディカル材料」の3分野を「戦略事業」と位置づけ、事業の拡大を進めています。折しも、リーマンショックや東日本大震災など、経済やサプライチェーン、エネルギー問題などに大きな影響を及ぼす急変があり、ビジネスのあり方や社会のニーズも変化しています。そうした環境変化にも対応し、技術力を活かして継続的・安定的に成長できる企業を目指していきます。

既存の技術や人材と社外・グローバルの力を結集

戦略事業では、JSRグループの持つ既存技術や、研究開発で見出した「イノベーションの種」をいかに事業に結び付けるかが重要です。そこで、研究開発部門のトップが戦略事業部門の責任者も務め、両部門が密接にかかわり合いながらスピーディに決断できる体制をとっています。研究者が直接顧客のもとに伺ってニーズを掘り下げるなどの活動も盛んに行っており、研究開発と事業の一体化が加速しています。
また、分野によって最先端の研究が北米で行われているものやヨーロッパ中心のものがあり、戦略事業の各ビジネスで重点となる国・地域は基盤事業と異なっています。このため、研究開発や営業の拠点を最先端エリアに置き、最新の動向を迅速に捉えることができる体制も整えつつあります。加えて、戦略事業の推進に必要な極めて専門性の高い技術や知識をスピーディに獲得するため、業務提携や戦略的投資を積極的に行っています。こうした取り組みにより、社内外の専門知識や技術を集結させ、社会に新しい価値を提供できる製品づくりを進めています。

新事業

渡邉毅

執行役員
戦略事業企画部長(当時)
渡邉 毅

戦略事業という「新しい土地」で
ビジネスを進める難しさとやりがい

これまで基盤事業では、特定の顧客と深くかかわりニーズに応え、技術を擦り合わせる「One-on-One」がビジネスの基本でした。しかし戦略事業では、販路や顧客とのチャネルがないところからスタートし、なおかつターゲットはグローバルに据えています。ですから、今までのマインドセットを変えなければと強く感じています。その実現のために、JSRグループの行動指針「4C」の実践が不可欠です。
また戦略事業は、省エネルギーや創薬支援など、将来的により大きな社会課題になるであろうテーマにフォーカスしています。社会への貢献とビジネスが一体化していることが、さらなるやりがいにつながっています。
中期経営計画「JSR20i3」の期間を通じて、戦略事業の基礎的な技術や外部との連携などはできあがりつつあります。計画最終年にあたる2013年度は、ここまでの蓄積を活かして実行あるのみ、という遂行の年と位置づけ、挑戦を続けています。

戦略事業の3つの領域

精密材料・加工

JSRグループが持つ独自の素材技術に、機能性と加工技術を掛け合わせて世の中に新しい価値を提供するのが「精密材料・加工」分野です。ここで生み出される技術は、他の2つの戦略事業の基盤にもなります。
情報機器や精密機器は常に「より軽い、より薄い」製品を目指しており、材料レベルでの革新が求められています。素材をよく知るメーカーだからこそできる技術の組み合わせで、こうしたニーズに応えていきます。

■ ARTON®/OPSTAR®/ELART®(アートン/オプスター/エラート)
タッチパネル

優れた光学特性と耐熱性を持つ透明な「ARTON®」フィルムや反射防止コーティング材料「OPSTAR®」に、精密加工技術を融合して生まれたタッチパネル用透明導電性フィルム「ELART®」。ガラスなどに代わって、スマートフォンのタッチパネル等に使われています。


環境・エネルギー

石油化学に事業基盤を置くJSRグループは、限りある資源を効率よく使うことや、省エネルギーに貢献することが重要であると強く認識しています。そこで、ポリマー技術や素材の力を活かし、エネルギーをコントロールするための製品を提供しています。

■ CALGRIP®(カルグリップ)
CALGRIP

物質が固体から液体に変わるなど状態変化する際に放出・吸収するエネルギーを蓄える、潜熱蓄熱材料「CALGRIP®」。ポリマー技術でパラフィンを固体化し、輸送中の安全性も向上しています。用途に応じた温度で定温輸送に使えるため、生鮮食料品やワクチンなどの医薬品の定温輸送材、また建材や空調等への応用で期待が高まっています。


■ SIFCLEAR®(シフクリア)
SIFCLEAR

耐候性や耐汚染性を向上させ、遮熱効果を持続させる材料が「SIFCLEAR®」です。東日本大震災被災地の仮設住宅に「SIFCLEAR®」を使用した遮熱塗料を無償で施工しました(写真)。東南アジアなど直射日光による温度上昇が課題となる地域でも活用いただけるよう、実績を重ねています。


■ BIOLLOY®(バイオロイ)
BIOLLOY

植物由来材料のポリ乳酸と、熱可塑性樹脂を複合化したバイオ樹脂「BIOLLOY®」。既存の一般的なバイオ樹脂に比べて5倍の耐衝撃性を持つのが特徴です。薄くて軽く地球にやさしい素材が求められている化粧品やシャンプーなどのボトルのほか、自動車内装、OA機器や家電等、さまざまな用途での活用が見込まれています。


■ ULTIMO®(アルティモ)
ULTIMO

長寿命で電気を瞬間的に溜めたり放出することを得意とする蓄電デバイスであるリチウムイオンキャパシタ「ULTIMO®」。工場などの瞬時電圧低下対策に使われたり、建設用機械が回ったり止まったりする際に発生するエネルギーを効率的に再利用するために採用が進んでいます。燃費の大幅な向上など自動車の高性能化にも活用できるよう、研究を進めています。


メディカル材料

健康や医薬に対するニーズはグローバルでますます高まっています。JSRグループは、従来から展開している医療用ポリマー材料に加え、製薬メーカーや研究機関が薬をつくったり、治療法を開発するための手助けとなる「創薬支援」の分野で、素材や技術を活かした貢献をしていきたいと考えています。
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