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SRI指標と銘柄への組み入れ

トップコミットメント

経営とCSRの一体化をさらに推進し、
「Materials Innovation」を通して社会における存在意義を高めます

代表取締役社長 小柴満信

先の見えないグローバルの変化に対応する企業活動が
求められている

現在は、圧倒的な力を持ち世界をけん引するリーダーとなる国がいないGゼロの世界と言われています。地政学的なリスクが顕在化しており、原油価格・資源関連企業の業績変動、世界的に進む企業再編、中国巨大マネーの最先端半導体企業への投資の動き、英国のEU離脱にかかる問題、中東情勢・東アジアの混迷、為替の変動、マイナス金利などが、企業経営や事業展開に大きな影響を及ぼす要因となっています。また、ものを所有する価値観からシェアする価値観への変化など、資本主義経済の姿が変わりつつあります。さらに、IoT、AIをはじめとするデジタル化の急進、インターネットの発達による仮想社会の増大といった、今までにない変化が急激に起きています。日本に目を向けると、少子高齢社会が進んでいます。このような社会の構造的な変化が、企業の在り方、個人の価値観、企業と個人の関係を大きく変えようとしているのが現在です。
これらの社会の変化に対応していくためには、社会課題をきちんととらえ経営に盛り込んでいく、経営とCSRの一体化をより一層深化させていかなければなりません。

今、JSRグループが目指すべき課題とは

2015年度は「成長軌道へ」の期間と位置づけた「中期経営計画JSR20i6」の中間地点でした。
石油化学系事業は、合成樹脂事業が健闘したものの、エラストマー事業が国内タイヤ需要低迷、アジア市場の成長減速で販売数量減、加えて市況悪化が継続し減収減益となりました。多角化事業は、ライフサイエンス事業が大きく伸張しましたが、ディスプレイ材料における顧客市場減速の影響が大きく、減収減益となりました。
それぞれの事業においては、国内外における合弁会社の設立や新工場の建設、また資本関係、事業のベースとなる体制の見直しなどを進めました。目標としている財務数値などに向けて、現状の事業展開のミッションは今後も粛々と進めていきたいと考えています。
グローバルに目を向けると、現在、グループ従業員7,000人超のうち約2,300人が海外で働いており、売り上げも約55%を海外が占める状況になっています。今までは日本を中心に各地域を点と点で結ぶ形でグローバル展開を進めてきましたが、今後は、一番大事な市場に意思決定できる拠点を設け、それらの拠点がメッシュで結びついているような新しい形のグローバル対応を進めていきます。
JSRグループは、2017年に60周年を迎えますが、私は、その次の60年に向けての新しい動きを、今、始める必要があると考えています。そしてこの次の60年の経営そしてCSRの課題を考えるにあたってのキーワードの一つはサステナビリティ(持続可能性)であり、もう一つのキーワードがイノベーションだと捉えています。この両方が次の60年の経営とCSRの一体化に欠かせないものであると考え、次代を担う人材とともに、JSRグループにとっての新たな方向性を探っていきたいと考えています。

CSR経営の推進

JSRグループは、企業理念「Materials Innovation − マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」のもと、その実現のための様々な活動を進め、様々なステークホルダーと良好な関係を築き、信頼され必要とされる企業市民になることを目指してきました。
そのために企業理念を実践する経営とCSRを一体のものと捉えて社会的重要課題の解決に取り組んでいます。CSRを、具体的には「攻め(事業戦略)」・「守り(事業基盤)」それぞれの観点から、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の3つの軸で整理して取り組んでおり、この考え方はサステナビリティを考えていく上での基本となります。
「攻め」の観点では、E2イニシアティブ®のコンセプトのもと創り出している環境配慮型製品を一層お客様や社会に浸透させるための施策に注力し、またライフサイエンス事業を拡大していくことで、健康長寿社会に求められる新しい価値を持つ製品・サービスを提供していく考えです。
「守り」の観点でも、サプライチェーンマネジメントやレスポンシブル・ケア活動をE・S・Gの3つの軸それぞれの領域で推進してまいります。なお、安全に関しては、化学産業の一員として安全確保が経営の大前提であると認識しており、安全基盤、安全文化の再構築を継続していきます。2015年度は死亡事故など重大災害こそなかったものの、15年8月3日、同年10月6日の 四日市工場において火災が発生しました。迅速な対応を行い、ボヤ程度で鎮火いたしましたが、近隣の住民の方々含めご心配をおかけしましたことをお詫びいたします。今後も安全は化学メーカーとしての第一義と考え、グループを挙げてレベル向上に努めてまいります。創立60周年を迎えるということは、設備などの老朽化も進んでいるということで、耐震対策を含めた工場の強靭化を引き続き進めていくとともに、古い設備の撤去も考え、次の60年に向けてハード面からも安定、安全操業を目指した取り組みを推進していきます。

「攻め」にしろ「守り」にしろ、サステナブルな企業経営を目指す上で重要なのが人材育成です。これについてはいろいろやってきており、ダイバーシティの面では平成27年度「なでしこ銘柄」に選定されたことは大きな成果と考えています。人材育成については、プライドとモラルの共有が重要です。そのために、社員のみなさんと経営側とのコミュニケーションをさらに進めていき、どんな変化にも対応できる可能性を持つ企業へと進化させていきます。

ステークホルダーへのメッセージ

当社は、グローバル・コンパクトに署名し、10原則を認識してCSRを進めています。特にグローバルに事業を展開する企業として人材の多様化は進めていこうと考えています。ただ多様な人材を新たに採用するだけではなく、社内の人材が持つ多様な能力を発揮してもらうことも考えていきます。変化が速い時代、社内の人材、特に可能性のある若手を教育して新たな分野に対応できるようにすることは重要です。グループの社員には、既存の枠組みや先入観、固定観念にとらわれない自由な発想、多様な価値観を大事に持ち続けてもらいたいと思います。ガバナンスについては、昨年のコーポレートガバナンスコードの発行を受けて体制の整備を進めました。ここでもガバナンスを支えるのは「人」になります。ここでも一人ひとりのプライドと責任を意識した取り組みが重要と考えています。
化学メーカーとして、安全、そして環境に対する取り組みも引き続き注力していきます。前述のように、安全に関しては、最重要事項として取り組みを推進し、特に地域の住民の方、自治体との綿密なコミュニケーションと迅速かつ透明性の高い情報開示を行っていきます。環境に関しても製品を通じての貢献を進めるのはもちろんのこと、サプライチェーンを含めた資源の有効活用による循環型社会構築や地球規模での大きな課題となっている水資源問題に対する取り組みも進めなければなりません。
2015年12月、フランス・パリで開催されていたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、2020年以降の温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』が正式に採択されました。世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑えることが掲げられ、日本は、2030年度に2013年比で温室効果ガスを26%削減、さらに2050年度に80%削減の目標を掲げています。この世界に対する日本の約束を果たしていくために、排出者である企業としてだけでなく、温暖化防止にマテリアルを通じて貢献する企業として取り組みをどう行っていくのかは非常に大きな課題と認識しています。
「Materials Innovation」という企業理念のもと、JSRグループの存在意義を表す言葉を忘れず、より一層の経営とCSRの一体化を通じたサステナブルな社会実現に貢献してまいります。

JSR株式会社 代表取締役社長
小柴 満信