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ステークホルダーとの対話 JSRグループが考える重要課題の検証 ①

JSRグループが考える重要課題の検証

ステークホルダーとの対話

JSRグループでは、経営とCSRの一体化を意識し、持続可能な地球環境や社会の実現に貢献するという姿勢を示すため、2015年度に初めて重要課題を特定し、CSRレポートで開示しました。
特定した「安全・防災」「省エネルギー・省資源・気候変動対策」「健康長寿社会」「ステークホルダーとのコミュニケーション」という4つの重要課題について、この1年間取り組んでまいりましたが、今後のより詳細かつ具体的なCSR活動につなげていくために、今回、課題検証のため、様々なステークホルダーの方々から意見聴取するとともに、有識者の方々と意見交換を行うことで、JSRグループ自らが事業を通じたCSR活動の重要性を改めて認識し、多くのステークホルダーの皆さまへの情報開示の進化につなげることを目指しています。
今回の対話会を通じて得られた新たな重要課題およびいただいたアドバイス、ご意見は、今後の活動計画の中に盛り込んでいこうと考えております。

<開催日>
2016年4月19日
<開催場所>
JSR本社役員会議室
<出席者>
有識者:
  • 秋山 をね氏
    株式会社インテグレックス代表取締役社長
    秋山 をね氏

    慶応義塾大学経済学部卒業後、外資系証券会社で主にトレーダーとして勤務。1998年青山学院大学大学院修了。ファイナンス修士。米国公認会計士試験合格。再び証券会社に勤務後、2001年(株)インテグレックスを設立し、社会的責任投資の普及に努める。主な著書に『社会責任投資とは何か』などがある。

  • 本木 啓生氏
    株式会社イースクエア代表取締役社長
    本木 啓生氏

    立教大学経済学部卒業後、1992年から監査法人トーマツ系グループでIT系、戦略系、環境に関するコンサルティングに従事。2001年4月からイースクエアのコンサルティング事業の責任者として、多岐の業種にわたる大手企業を中心に、CSR戦略、コミュニケーション、教育、事業開発などの分野における支援を行う。2011年10月より代表取締役社長。

  • 野田 清穂氏
    経済人コー円卓会議日本委員会(CRT)ディレクター
    野田 清穂氏

    津田塾大学 学芸学部 国際関係学科卒業。英国ヨーク大学大学院 政治学部 公共政策学科修了。環境NGOおよび教育系NPOの活動に携わった後、2012年にCRT日本委員会に入会。現在は、企業向けのCSRコンサルティングに従事するほか、GRI認定G4研修の講師も務める。

JSR: 肩書きは対話会実施当時のもの
平野 勇人取締役(経理・財務、人材開発、広報、グループ企業)
川橋 信夫上席執行役員(研究開発)
中山 美加執行役員(ダイバーシティ推進、経営企画)
捫垣ねじがき 和美部長(CSR)
写真は左から順に平野、川橋、中山、捫垣

※写真は左から順に平野、川橋、中山、捫垣

これからのJSRグループのCSRを考える

捫垣:
2015年度のJSRグループのCSRは、企業理念である「Materials Innovation−マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」に立脚して、「経営とCSRは一体」であることをテーマにし、事業を通じて社会的課題の解決を目指す“攻めのCSR”と、持続可能な企業活動を支える基盤となる“守りのCSR”に分けて体系づけたところが特徴的であったかと思います。
その上で、2016年度、JSRグループとしてCSRにどのように取り組んでいくかを考えるにあたり、あらためて現在の社会的課題と企業理念が合致するテーマを抽出し、重要課題として整理してみました。昨年度が組織の社会的責任に関する国際規格ISO26000における中核主題および課題をベースにして重要課題の抽出・特定を行ったのに対して、本年度はさらに範囲を広げ、昨年9月に国連総会で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)や主要企業が掲げている社会的課題なども検討対象に加え、JSRグループが認識する社会的課題の抽出・整理を行っています。
CSR部内で課題の重みづけを行った原案に対し、顧客、投資家、従業員の各ステークホルダーの意見を聴取し、再整理したものが図Aです。
本日は、重要課題を策定する過程や、整理した重要課題につき、忌憚ないご意見をいただければと考えております。

重要課題検証途中のマトリクス図A

重要課題検証途中のマトリクス図A

重要課題を決めていく過程が大切

秋山氏:
まず、企業理念とCSR、社会的課題への取り組みを一体化させているところは、大変素晴らしいと思います。そして、このように一度つくったものに毎年見直しをかけるという姿勢も素晴らしいですね。CSRに対する確固たる軸があると感じます。見直されたCSRの重要課題もわかりやすく整理されていると思いますし、課題に取り組みやすくなっていると思います。そもそも、このように重要課題を特定するという取り組み自体が評価されてしかるべきでしょう。
一方で、立派な企業理念体系を持ち、それに従って活動をしていることが、今回特定された重要課題だけからは見えにくいように思います。整理された重要課題の一つひとつが企業理念とどのように繋がっているのか、個々の企業活動とどう関わっているのかを、わかりやすく示すと良いかもしれませんね。
また、「ガバナンス」「コンプライアンス」「リスク管理」はやはり企業活動の重要な基盤ですので、何らかの記載が必要かと思います。
本木氏:
定期的に見直しが必要と捉えたうえで、その対応をきっちりやられているという印象を持ちました。重要課題の特定についても、よく研究し、過程を大切にしていると思います。特に複数のステークホルダーから意見を聞いて反映させているのは素晴らしいと思いました。その重要課題は、一番右上に「高機能・高品質・安定供給」という本業の強みを置いているところに“攻めのCSR”の姿勢がよく出ていると感じます。そのすぐ下に、「気候変動緩和」や「環境負荷低減」、「安全衛生の向上」といった社会的課題のテーマを置いている位置関係もいいと感じました。
野田氏:
対話会の様子1「CSRレポート 2015」を拝読し、まず感じたのはトップのCSRへのコミットメントの明確さです。日本において、経営とCSRの一体化に本気で取り組むという考え方を示している企業、またそれを実際に示せる企業はとても少ないですが、JSRグループはその数少ない企業の1社であると感じました。また、社員に対して毎年「CSRレポートを読む会」を開催し、浸透を図っているという企業は、私の知る限りほかにありません。化学メーカーは、毒性のある原材料も扱うわけですから、万一事件や事故が起これば社会に与える影響は大きいです。ブランドイメージにもつながることですし、従業員に高い倫理観や企業理念をいかに浸透させるかは重要なポイントです。そういった点でも、素晴らしい取り組みではないかと思いました。
CSRの重要課題の特定に関しては、選定の過程は国際的な基準に照らし合わせても評価できるものですし、挙げられた課題も化学業界において重要である課題が選定されていると感じました。
気になった点は、図Aにおいて、ステークホルダーの視点からの重要度として示されている位置が適正なのか疑問に感じるものがいくつかありました。また、課題の分類に関しても、一つにグルーピングせず、分けたままのほうが効果的な活動につなげることができると思われる項目もあります。
野田さんからトップのコミットメントの話がありましたが、実際に社長はいろいろな視点でCSRに触れています。私個人としてもJSRグループのCSRについて常に改善を目指してきており、現時点で大きなマイナス点はないと認識しています。とはいえ、CSRは常に改善を目指すものとしてこの先どういったことに取り組んでいくべきか、この機会に明確にしていければいいと考えています。
中山:
経営企画部では、社内に企業理念を浸透させる施策の取りまとめをしているのですが、各部門の担当者は半分ボランティア的にやってくれています。つまり、共感し熱心に動いてくれているからこそ、浸透が図れているのだと思っています。
重要課題と企業活動の関係をわかりやすくしていくことは、企業理念やCSRの浸透においてポイントとなる部分です。社内では普段から、企業理念と事業を通じたCSRとがどう関係しているのか、考えて動く必要があると伝えています。図Aの右上に高機能・高品質・安定供給という製品のことが置かれているのは、まさしく“Materials Innovation”の表れであって、当社CSRの象徴的な考え方ではないかと思います。ただし、企業理念と製品との関係が、ご指摘のとおり外部からわかりにくいのであれば、その説明の仕方は今後の大きな課題だと受け止めています。
捫垣:
秋山さんご指摘の社会的課題と事業との関係性については、まだ粗い面もあるのは確かです。ひとつは外部の格付け機関などからくる質問票で聞かれる内容を、社会やステークホルダーが求めていることを反映していると理解することで、どのような社会的課題が重要視されているのかを認識し、それをどう事業と関係づけていくかを考えていくという部分もあるわけです。中長期の課題としてとらえているのでまだ整理しきれていないところがありますが、これらの社会的課題の中から、JSRグループとしてできること、やるべきこと、あるいはビジネスチャンスととらえられるものなどを探っていければいいと考えています。
企業理念の社内浸透については、役員が従業員との対話会を実施するなど、かなりきちんとできています。今後、この活動は、社会的課題への取り組みの中でどう企業価値を創造していくか、あるいは新たなビジネスチャンスを見つけるかという観点を盛り込んでいければと思っています。

対話 ② 「重要課題はグローバルな視点で捉える必要がある」へ