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CSRレポート2014

トップコミットメント

取締役社長 小柴満信

真のグローバル化を実現し、
「Materials Innovation」で
世界に挑み続けます。


新しい枠組みに移行する世界の中で、結果を出す

JSRグループが中期経営計画「JSR20i3」を進めてきた2011年から2013年までは「不確実性」と「多様化」が時代のキーワードでした。2014年に入り、経済状況の好転も目に見えるようになって、世界が次の新しい枠組みに移行しつつあるという実感が強まっています。
「JSR20i3」の3カ年は、2020年に向けた「成長への始動」をテーマに取り組んできました。結果として、売上高は過去最高に近い水準まで近づけられましたが、利益の面では当初目標に届きませんでした。石油化学系事業がこの3カ年に過去最高益を達成した一方で、デジタル産業のコモディティ化の影響を受けたファイン事業では、市場での優位性が相対的に下がり収益が低迷したことなどが影響しています。しかしこの間、成長戦略の明確化と大型投資の意思決定を行い、これからの新しい世界の枠組みの中で、JSRグループが大きく成長するための基盤を整えることができました。
今年度からスタートさせた、2016年度を最終年度とする新中期経営計画「JSR20i6」では、結果を出すことに重きをおき、これまでに打ってきた布石をしっかりと収益に結び付けていきます。

事業活動のすべてを、社会への価値創造につなげる

石油化学系事業では、低燃費タイヤの世界的な需要増加を見込む一方、日本国内ではエチレンセンターの再編が進行しており原料確保が課題となります。こうした要因を踏まえ、低燃費タイヤ用合成ゴム事業において、市場と原料の双方が存在する地域への進出を進めています。タイでは、JSR BST エラストマー社のプラントが2013年度より稼働を開始し、将来の需要増を見据えて第二期工事にも着手しました。また、ハンガリーにも2014年3月に合弁会社を設立、これから製造プラントを新設し、2017年の販売開始を予定しています。
ファイン事業では、市場の変化を捉えながら当社グループのグローバルなネットワークも活用し、高度化する顧客のニーズに応えていくことに加えて、センサー分野などの新事業領域においても当社グループの技術を役立てていくことで、より快適で便利なユビキタス社会の実現に貢献していきます。
3本目の事業の柱である戦略事業では、リチウムイオンキャパシタとライフサイエンスの2つの分野に注力します。革新的な省エネルギーを実現するリチウムイオンキャパシタは、ハイブリッドのエンジンを持つ建設機械やバスといった大型のものを効率的に動かす用途などで需要が増大すると考えています。一例として、2013年には英国空港内のバスで実用化されました。ライフサイエンス分野では、次世代の医薬品を開発するためのプロセス材料に注力します。抗体医薬の開発には高いコストがかかっていますが、そこに私たちの新しい技術を投入し、製造コストを例えば半分に下げたり、従来では取り出すことができなかった薬効のある成分を効率的に取り出したりするような破壊的なイノベーションの実現を目指しています。
リチウムイオンキャパシタを含む環境・エネルギーの分野は、環境保全をコストではなくチャンスと捉え、新たな事業機会の創出「Eco-innovation」と環境負荷低減「Energy management」の両面からなるコンセプトである「E2イニシアティブ®」を基盤としています。JSRグループが持つ独自のマテリアルを活かし、環境性能と経済性の双方に優れた製品を打ち出していくという目標のもと、低燃費タイヤ用合成ゴム、サーマルマネジメント材料、植物由来の樹脂などを提供し、さまざまな用途で環境負荷の低減に貢献しています。同時に、製造工程での負荷削減も進め、国内3工場トータルのCO2排出量を1990年度対比で6%以上削減するという目標を達成、今後もさらなる削減に尽力していきます。
生物多様性の保全に関しては、サプライチェーンの分析に基づく原材料調達における配慮、合成ゴムと天然ゴムの生物多様性側面での比較調査や「土地利用通信簿®」を活用しての各事業所での緑地整備などを進めています。これらの取り組みを着実に推進しながら、今後は事業活動に積極的に組み込んでいきます。加えて、地球の貴重な資源である水についても、JSRグループとして何ができるのか議論を深めていきます。
このように、事業活動のあらゆる側面で、企業としての競争力向上と社会への価値創造を両立できるということが、JSRグループらしさであり強みでもあると考えています。

真のグローバル化を認識し、
ステークホルダーへの責任を果たす

私たちが経営方針で掲げる「ステークホルダーへの責任」で、もっとも重視しているのが「顧客・取引先への責任」です。幅広い分野の顧客が革新的な製品をつくりあげるのに欠かせないマテリアルを、優れた品質、サービス、価格で安定的に提供していく。そうすることが企業の持続的な成長とマテリアルを通じて社会に貢献するという企業理念の実現につながると信じているからです。
顧客・取引先への責任を果たすためには、従業員一人ひとりが元気に、高い意欲を持って仕事に打ち込めるような環境を整えることも経営陣の重要な役割です。私を含めた役員による対話会など双方向のコミュニケーションを大切にしているほか、昨年度には、会社と目標を共有しリスクをともに取っている従業員への還元策として、従業員持ち株会への会社からのマッチングを増やしました。また、当社グループでまさに生み出されようとしている「Materials Innovation」の具体例や、それが社会の変化にどのように貢献するかについて、私自身の考えをメッセージとして5回にわたって発信するなど、従業員にもっとワクワク感を持ってもらうよう努めています。
2013年度には、海外売上高比率が初めて50%を超え、そのうち半分が日本国外で製造・販売を行っているという状況です。人員構成も日本に約4,200人、海外に約1,400人という割合になっています。こうしたことから、JSRグループの事業活動は、日本中心から本当の意味でのグローバルに変わってきたと実感しています。これからは、海外拠点間での人事交流や現地での研修など、ダイナミックな人材マネジメントが必要となるでしょう。「JSR20i6」では、従来の人員管理に加えて、グローバルにどんな人材を必要としているか、どんな人材がいて、どのように育成していくかを重視して取り組んでいきます。多様性への理解も重要です。人はそれぞれに多様であるということをよく理解し、それを受け入れられる組織にしていくためにも、これまで続けてきた企業理念浸透活動がさらに重要なものになると改めて感じています。
また、「安全操業」は製造業として常に最大の優先事項です。近年化学メーカーで事故が多発している状況を受け、当社グループでも、これまで常識とされてきた安全活動や手法に問題はないのか、慎重に点検しているところです。
こうした一つひとつの取り組みを積み重ねることが、社会や株主への責任を果たし、価値創造につながっていくと確信しています。

世界で存在感のある企業となるために、
企業理念の実現に挑戦し続ける

JSRグループは、「Materials Innovation」を通じて人間社会に貢献していくことを企業理念に掲げています。この想いを果たすために、国連グローバル・コンパクトへの賛同を表明し、国際社会の中でより責任ある行動の実践を目指しています。オペレーションの水準や効率性、ビジネスの公正さなどは、グローバル基準で認められるものに高め続けていかなければなりません。それと同時に、日本企業としてのアイデンティティもまた、大切にしていきたいと考えています。日本が育んできた技術力や高い品質は、世界の市場で信頼のよりどころとして強い力を持っているからです。
変化し続ける時代を先取りし、新しいやり方に常に挑戦する意識を持ち続け、事業を進めることで、世界で存在感を示す企業グループとなることを目指し、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。

JSR株式会社 取締役社長
小柴 満信

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