JSR、ポリマー型抗菌成分添加の糸・不織布で抗菌性能を確認
JSR株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO:エリック・ジョンソン、以下「JSR」)は、国立感染症研究所と共同開発した薬剤耐性菌*1に効果を発現するポリマー型抗菌成分*2を、糸及び不織布に添加し抗菌性能を確認いたしました。作製した糸及び不織布は、黄色ブドウ球菌と大腸菌を99.9%以上低減*3し、更に糸では新型コロナウイルスとネココロナウイルスに対して99%以上のウイルスの数を低減*4させる効果が認められました。
ポリマー型抗菌成分は、高い耐熱性と両親媒性による樹脂との良好な相溶性があります。そのため、既存の加工プロセスを用いて、ポリプロピレンのマルチフィラメントによる紡糸、メルトブローン法による不織布、溶融押出法によるフィルムの作製が可能です。また、既存の汎用プラスチック(ポリプロピレン、ABS樹脂、ブタジエンゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン、3Dプリンター用樹脂)を製造する際に使用する添加剤として活用することもできるため、医療現場における院内感染抑制や在宅医療や介護現場での衛生状態の向上に貢献することが期待されます。
今後、当社はポリマー型抗菌成分が含まれる汎用プラスチックのSIAA*5「抗菌マーク」の取得に向けた申請を予定しております。
尚、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究開発課題「抗生物質の再評価と既承認薬の再配置による新規抗菌薬の創製」)より支援を受けたものです。
*1 薬剤耐性菌
世界的に臨床上の問題となっている抗菌薬が効かない細菌。代表的なものとして、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、薬剤耐性緑膿菌、薬剤耐性アシネトバクター等があります。
*2 ポリマー型抗菌成分
両親媒性であるため水溶液として、また、油溶性であるためプラスチック添加剤としての使用が可能です。急性経口毒性(5%水溶液)、変異原性、一次皮膚刺激性、感作性、について安全性が確認されております。当社の液晶ディスプレイ材料技術を用いて開発されました。
*3,4 試験結果
一般財団法人日本繊維製品品質技術センターにてJISL1902:2015に則り実施されました。
*5 SIAAマーク
抗菌製品技術協議会(SIAA)が制定した抗菌のシンボルマークです。抗菌性、安全性、適切な表示、の3つの基準を満たした製品に、SIAAマークが表示されます。