JSR、ANAとSHCデザインが3Dプリント義足を共同開発 

企業情報
JSR株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:小柴 満信、以下:JSR)と全日本空輸株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:篠辺 修、以下:ANA)は、株式会社SHCデザイン(本社:神奈川県茅ヶ崎市、代表:増田 恒夫、以下:SHCデザイン)が製作する『3Dプリント義足』を共同開発し、今後も実用化に向け支援していきます。

世界を見渡せば、開発途上国では紛争や自然災害のほか、偏った食生活からくる糖尿病が原因で下肢を切断し、義足を必要としている患者が推定1700万人(※)と多いものの、現在一般的な金属を用いた義足は単価30~40万円と高価であり、購入できる人はわずかな状況です。
また、日本を含む先進国でも、義足に使用されている金属の錆を敬遠して海辺に近寄れなかったり、温泉の浴場内で義足使用がかなわず不便な思いを余儀なくされるなど、義足歩行者の旅行には様々なハードルがあります。空港の保安検査場では、義足の金属部品がセンサーに反応するため、義足歩行者は再度係員による触手検査を受けなければなりません。

SHCデザインは、このような国内外の義足歩行者の方々が抱えるトラブルやストレスを解決するため、2015年、3Dプリント義足という画期的な製品の開発をスタートさせました。JSRが開発した3Dプリンタ用素材FABRIAL®Rシリーズを使用することにより、実用化を目指します。
この義足は以下のような特徴を持ち、2017年の販売を目指しています。
     ①3種のプラスチック材料のみというシンプルな構成
     ②製造原価は一般的な義足の20~30%程度
     ③金属を一切含まないため、従来の義足に比べ軽量

SHCデザインは、フィリピンにおいて従来より安価な義足をより多くの人にお届けできるよう、国際協力機構(JICA)委託を受け、事業展開のための調査を行っています。日本国内においては旅行の際の心身の負担を軽減し、既存の義足では難しかった体験を可能にする「2本目の義足」としての事業展開を行っていきます。


このSHCデザインのイノベーションに賛同し、ANAは、義足歩行社員による検証と技術的アドバイス・空港における実証実験・空港でのサービス提供検証・SHCデザインの事業展開時の渡航支援等の協力を行うことで、より多くのお客様の快適な空の旅をサポートします。またJSRは、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ(代表・田中浩也教授)と共同開発した3Dプリント用フィラメントFABRIAL®シリーズの提供を通じ、SHCデザインのチャレンジをサポートしていきます。

<FABRIAL(ファブリアル)®Rシリーズについて>

JSRが独自のポリマー技術を活かして開発した3Dプリンタ用フィラメント材料。従来、3Dプリンタ用に使われていた主な素材は強度が低く、加工工程で折れてしまったり、完成した成形品がもろく実用製品化が難しいという課題がありました。今回の義足に使用されるこの新素材は、医療分野も含めた様々な産業で利用実績がある材料をベースに開発され、やわらかくしなやかで、3Dプリンタの用途とデザインの多様性を広げ、実製品の生産を可能にしました。直接肌に触れる素材として、皮膚刺激性テスト(ISO 10993-10準拠)による安全性も確認されています。



(※) WHO(世界保健機関), 2016, “Global Report On Diabetes”、日本下肢救済・足病学会のWEBページ(http://www.jlspm.com/goaisatsu.html)より、SHCデザインが推計