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CSRレポート2012

トップコミットメント

取締役社長 小柴満信

世の中に新しい価値をもたらす
マテリアルを提供する。
その実現に向けて、JSRグループは
イノベーションを推進力に
チャレンジし続けます。


素材メーカーとして、事業継続の重要性を改めて認識した一年

2011年度はふたつの試練に直面しました。東日本大震災とタイの大洪水です。幸い、JSRグループの事業所は大きな直接的被災は免れましたが、東日本大震災の際は原料の調達先が被災して茨城県の鹿島工場が2カ月間の稼動停止を余儀なくされ、タイの洪水では取引先である多くの日系企業の生産に影響がありました。
こうした自然災害に直面して、改めて強く認識したのが「素材産業の裾野の広さ」です。今回は、被災を免れた安全在庫を確保していたこともあり、お客様に大きな迷惑をかけずに済みましたが、当社グループの製品は自動車やライフラインなどのさまざまな重要部品や素材として使われているため、供給が途絶えると困るというお問い合わせを数多くいただきました。
こうした経験を通じて、素材メーカーとして「事業継続の重要性」を改めて肌身で感じた一年となりました。災害や事故が起きた際の初動対応のみでなく、より包括的な事業継続マネジメント(BCM)の見直しも始めています。


マテリアルのイノベーションを通じてビジネスを変革する

JSRグループは、企業理念として“Materials Innovation”を掲げ、マテリアルを通じた価値創造によって人・社会・環境へ貢献することを目指し、行動しています。
2011年度からスタートした中期経営計画「JSR20i3(にせんじゅうさん)」は、2020年に当社グループのありたい姿を描き、それを実現するための第一歩となる3カ年計画と位置づけています。その策定にあたって、2030年に向けて当社グループの事業が置かれている環境分析を行いました。「地球温暖化問題」「新興国経済の発展」「食糧と水」という3つのマクロトレンドの中でも、地球温暖化の問題は重要と捉えています。環境の問題は企業にとってリスクとなる一方、事業の機会でもあります。こうした考えを踏まえて、環境に対する「攻め」と「守り」の両面から価値創出を追求する取り組み「E2イニシアティブ®」の展開を進めています。「E2イニシアティブ®」では新たな事業機会創出である「Eco-innovation」と、CO2排出量削減を中心とした「Energy management」の両立を目指しています。
ここで言う「innovation」とは、新しいものを生み出すのはもちろんですが、それだけではありません。例えば、低燃費タイヤ用の合成ゴムは、従来型の合成ゴムに比べて製造時のCO2の負荷は大きいのですが、自動車という製品のライフサイクル全体でCO2の負荷を検討すると、低燃費タイヤによって走行時のガソリン消費量を大幅に減らすことができるため、トータルでは環境負荷を大きく減らすことができます。自動車の燃費向上はヨーロッパなどで法制化も進み、その解決には低燃費タイヤが不可欠になっています。このようにJSR20i3では、これまであった素材がこうしたマクロトレンドの中で新しい価値や用途を生み出しています。これも「innovation」の形です。
当社グループの事業活動にも深く関係する生物多様性の保全にも力を入れていきます。2011年度は事業活動が生物多様性にどのように影響・依存しているのかを分析したうえで、調達原料と工場の土地利用についての取り組みを開始しました。これを踏まえて、「生物多様性方針」を策定して企業としての方向性を定めました。
これまでの当社グループは「Innovation One-on-One (イノベーション ワンオンワン)」という考え方で、自動車タイヤや半導体、液晶ディスプレイ(LCD)などの分野で世界のトップクラス企業が必要とするマテリアルを1対1で提供し、顧客と共に価値を生み出していく独自のすり合わせともいえる技術が評価されてきました。しかし、今後成長が見込まれる環境・エネルギーやライフサイエンスの分野は、取引先の数も規模も多岐にわたります。そうしたバリューチェーンの中で素材メーカーとしての存在感を高めていくためには、世界標準の技術や材料を有した会社になる必要があると考えています。今までの成功パターンを維持しながら、それを超えるビジネスモデルも目指すというのが、2020年に向けたJSRグループのチャレンジです。JSR20i3の1年目を振り返ると、マクロトレンドは想定した方向に進んでいますが、その速度は想定を超えています。自信と勇気を持って、JSR20i3を更に加速させていきたいと感じているところです。

多様な人材が自由闊達に挑戦できる風土づくり

社内風景

2010年代前半のキーワードは「不確実性」と「多様化」だと考えています。現在の当社グループの海外売上比率は約45%ですが、2020年には、これが約70%になる見込みです。そのとき、企業の成長力を支えるのは多様な人材です。いろいろな人材がバリアなく、従業員みんなが活躍できるような会社にしていきたいと思っています。そのような組織の価値判断の軸となるのが、2011年に見直した企業理念体系です。
新しい企業理念体系により、当社グループの目指すものを全従業員が共有できるようになりました。しかし、理念は掲げるだけでは意味がなく、一人ひとりに浸透させることが大切です。私自身からメッセージを発信し、社内で説明会を行うなど、理解度を高める取り組みを行っています。グループ全体でアンケートも実施しました。理念は着実に浸透しはじめていますが、まだまだ十分でないと実感しています。こうした浸透施策は5年、10年という長い時間をかけて、グループ全体で進めていきます。
事業環境が大きく変化する中では、従業員一人ひとりがそれぞれの分野で、グローバルレベルの競争力を持ちチャレンジすることが大切です。加えて、不確実な状況に柔軟に対応して変革し続け、多様な人材がお互いの価値観や文化の違いを受け入れることも重要となります。そうした人材が、規律を守りながらも自由闊達に挑戦できる企業風土を築いていきたいと考えています。

ステークホルダーへの責任を果たすための挑戦

企業理念体系の見直しの際、「ステークホルダーへの責任」についても改めて整理しました。
JSRグループは、例えるなら「ステルス・カンパニー」といえる存在です。例えばスマートフォンや液晶ディスプレイに使われている当社グループの製品は消費者の目に直接は触れませんが、どれも欠くことができないマテリアルです。顧客が革新的な製品を作りあげるために欠かせない、安心感や期待感を抱いていただける素材メーカーでありたい。BtoBのビジネスではこれまでプロダクトアウトの考え方が強かったのですが、性能や品質、サービス、コスト競争力を磨いて顧客満足につなげることが、これからの持続可能な企業成長には不可欠です。そうした観点で、まず重要なのは「顧客・取引先」、そして事業を動かす「従業員」と地球環境を含む「社会」が重要です。それらのステークホルダーに対しての責任をしっかり果たせればおのずと「株主」への責任も果たすことができると考えています。このステークホルダーに対する責任は、グローバルにビジネス展開をするどの場面においても重要なものです。当社グループは国連グローバル・コンパクトに参加し、国際社会でもより積極的に企業の社会的責任を果たしていきます。

事業を通じてお客様の課題を解決できるマテリアルや、あっと驚くようなマテリアルを提供することで、社会をよりよいものに変えていく。そのような存在を目指し、JSRグループはこれからもチャレンジを続けていきます。

JSR株式会社 取締役社長
小柴 満信

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