製造技術Manufacturing Technology

半導体や液晶ディスプレイの製造工程に欠かせない材料の一つに、レジストと呼ばれる主にポリマーを主成分とする製品がある。JSRは、内外の半導体メーカーに高性能なレジストを供給しているトップブランド。若杉は、この製品の海外事業で重要な役割を果たしている。

「私のミッションは、欧米の顧客が継続してJSRのレジストを採用いただくための、品質改善業務です。レジストの材料としての特性は半導体の微細な素子形成や配線加工に深く関わります。超高解像度品は高集積化に寄与し、品質の安定が歩留まりを左右する重要なマテリアルなのです。私は普段の顧客とのコミュニケーションの中で顧客の将来的なニーズを把握し、ポリマーの原料から感光剤や溶剤、添加剤など、レジストを構成するすべての原料にさかのぼって品質を磨き込んでいます。加えて、米国工場で新しいグレードのレジストを製造するために、国内の工場の製造技術・ノウハウを移転するサポート業務も行っています」

本来、半導体業界における品質管理とは、一度設定した設備、製造・試験条件等の工程を変更しないで品質を一定に保つというのが原則であり、それは材料や原料にも当てはまる。ところが競争力向上を図る半導体メーカーは、JSRのようなサプライヤーに通知をせずに、新たなプロセスで既存材料を使用するケースがある。また、半導体メーカー内の、歩留まり向上のためのプロセスのつくりこみにより、初期の品質バラツキが徐々に半導体メーカーの許容する品質バラツキに耐えられなくなるケースもある。必然的に、材料メーカーは新たな用途に合致する製品を先回りして準備する必要に迫られる。

「お客様が次にどんなレジストを求め、どのように使うのか。それをいち早く察知するには普段の関係性が重要。私も、海外拠点のメンバーと連携して、お客様の動向を探り、新たなニーズの把握に注力しています。同時に、要求仕様を満たすレジストを製造するための技術の確立や品質向上策をグローバルで進めなければなりません。この点で、4年目の米国での技術サポート業務の経験が、グローバルでのコミュニケーションの取り方や製造技術の理解において大きく役立っています」

「実は、私の米国勤務は通常のCDP制度を利用したものではありません。海外トレーニー制度と呼ばれる、育成を主眼とする1年間にわたる赴任でした。前々から海外で活躍したいと、飲み会の席などで上司に希望を伝えていたら、ある日突然、“そろそろ行ってみる？”と。後に正式な打診がありましたが、上司は常にメンバーのキャリアプランを考えているのだなと思いました」

そう若杉が語るように、CDP制度を用いなくても、能力開発や成長機会の提供などを目的に柔軟に社員を動かすことが多いJSR。若杉は、次はファイン製品とは違う分野の製造技術に触れたいと考えているが、さらにその先まで視界に捉えているようだ。

「大学で広く技術から経営まで俯瞰して学ぶ技術経営を専攻したので、化学材料の品質管理技術の領域を極めたら、次にそれを経営に活かしていくキャリアを歩みたいと考えています。具体的に目指しているのは、事業企画やマーケティングを担うポジションです」