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ハイライト

特集1 未来へつながるものづくりとE2イニシアティブTM 深刻化する地球環境問題に対して、JSRグループは社会の一員として、今後どのように行動していくべきなのか。「攻め」と「守り」の両面から、価値の創出を追求する――JSRグループの環境への取り組みの方向性を示す「E2イニシアティブ」についてご説明します。

E2イニシアティブのコンセプト

JSRでは2009年にプロジェクトを立ち上げ、環境・エネルギー問題に関して、地球温暖化をはじめとする規制対応などのリスクと、新規事業機会創出の二つの側面から有効な対応策を求めて検討を重ねてきました。その成果として生まれたのが、「Eco-innovation」と「Energy management」の二つの頭文字を取った「E2イニシアティブ」です。環境配慮型製品開発などの「攻め」、工場のCO2排出量削減などの「守り」の両面から価値の創出を目指すという、JSRの全社的な取り組みの姿勢を示しています。

JSRが目指すE2イニシアティブ・コンセプト

E2マトリックス

 E2イニシアティブを具体化させるための指標となるのが「E2マトリックス」。製品開発時のチェック指標に、従来の「経済性」に加え、製品の使用段階までを含めた「LCA(ライフサイクルアセスメント)」評価による「環境負荷」を組み込むというものです。今後の製品開発においては、この双方の両立が基本となり、経済性が高くても環境負荷の高い製品は原則として許容されないことになります。これを通じ、環境配慮型製品の拡大を目指すとともに、「環境性能」という価値観の社内への浸透を図っていきます。

JSRの環境経営 = E2イニシアティブのシンボル指標:E2 マトリックス
【攻め】Eco-innovation

環境性能という価値を社会に提供する環境配慮型製品を拡大することで、新しい事業機会を創出する取り組みです。ここでは、その代表例として蓄熱・遮熱材料とリチウムイオンキャパシタをご紹介します。

●蓄熱・遮熱材料

現在、「攻め」と位置づけている分野の一つが「蓄熱・遮熱材料」です。蓄熱・遮熱材料とは、熱をコントロール(有効利用)することによってエネルギー使用量削減に貢献できる製品群です。現在、温度を一定に保つ蓄熱材および熱を遮断する遮熱塗料用素材の分野で開発を進めています。
蓄熱材は、有機化合物の一種・パラフィンに当社独自の特殊ポリマーを付加したものです。熱を保ったり逃がしたりといった「熱の管理」を可能にし、エネルギーの効率的利用につなげようというものです。また、当社が遮熱塗料用に開発した素材「SIFCLEAR」を使用した遮熱塗料では、倉庫の屋根部分に塗布したところ、温度上昇を6度抑えられたという実験結果も出ています。高分子のトップメーカーとしてのJSRの強みを、最大限に活かした製品群です。

遮熱塗料用JSR「SIFCLEARTM」の効果

●リチウムイオンキャパシタ(LiC)

次世代蓄電デバイスとして注目されるリチウムイオンキャパシタの開発にも早い時期から取り組み、2008年には、JSRグループのJMエナジー(株)が他社に先駆けて量産を開始しました。
2011年春には、内部抵抗値を従来の3分の1までに低減した、ラミネートセルの新製品を上市するとともに、より放熱効果が高く振動にも強い、扁平角缶型セルおよびモジュールのサンプル出荷を開始。大きな反響を得ています。

観測ブイ((独)海洋研究開発機構)

LiCを搭載したCO2観測ブイ
((独)海洋研究開発機構)

電池に比べて高速での蓄電・放電が可能で、従来の電気二重層キャパシタよりも蓄電量がはるかに大きいリチウムイオンキャパシタは、太陽光発電や風力発電などの代替エネルギーと組み合わせての利用にも適しています。発電量が不安定なこれらの代替エネルギーも、リチウムイオンキャパシタと組み合わせることで発電量が平準化され、安定的・効率的な利用が可能になるのです。今後、エネルギー転換の必要性が高まる中、さらに多くのニーズが生まれる技術として、引き続き開発に注力していきます。

【守り】Energy management

効率化推進プロジェクト「E-100Plus」の中で、省エネ技術の高度化による自社のCO2排出量削減などを目指し、全社を挙げて取り組んでいます。各事業部、各製品についての月ごとのCO2排出量を数値で提示して「見える化」を図るとともに、特に優秀な部門・製品を表彰する制度を設定。また、新たな研究開発や量産化をスタートさせる際には、その予算にCO2排出のコストも反映させるなど、CO2削減への取り組みを事業活動の一部として定着させることを目指しています。
さらに、新たに開発した省エネ効果をもたらす製品については、まず自社工場で実証実験し、CO2削減の効果が得られたものはマーケットにも投入するという形で、「攻め」との連携も目指しています。

第三者からの提言
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 理事長 東京大学名誉教授 安井至 氏
独立行政法人
製品評価技術基盤機構 理事長
東京大学名誉教授
安井至 氏

Eco-innovationとEnergy managementを一体化することは、企業の基礎体力を強化することでもあり、必須である。東日本大震災により、CO2原単位の低い電力を得ることは困難になる。そこで、2011年12月のCOP17での日本の立場と2020年中期目標の動向を注視しつつ、企業としての責任の範囲を見極める必要がある。同時に、いかなる状況下でも有効な対応は、徹底した省エネの実現であり、特に、顧客の使用段階での省エネを実現できる製品の強化が望まれる。全体として、E2イニシアティブは、意欲的な取り組みであり、実効ある成果が期待できる。

ご意見を受けて
執行役員 経営企画部長 井上勝也
執行役員
経営企画部長 井上勝也

安井先生からE2イニシアティブの本質について、社会的課題の解決と企業の競争力強化同時追求との評価をいただき、意を強くしています。これは、社会的課題の解決を責任ととらえるCSRの考え方に加え、機会ともとらえるCSV(Creating Shared Value:共有価値の創出)の考え方に通じると思います。最も大切な視座は、価値の軸がこれまでの「差別化」か「コスト」かの二元論から転換し、「差別化」、「コスト」のいずれにせよ、「環境性能」という軸との両立が不可欠になった、という点だと考えます。E2イニシアティブの指針を徹底し、ご提言にあるような東日本大震災以降の構造的変化にも迅速に対応することで、社会的課題の解決に貢献していきます。


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