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ハイライト

特集1 未来へつながるものづくり

合成ゴムの専業メーカーとしてスタートしたJSRグループは、素材という面で新しい分野に果敢に挑戦し、「豊かさ」の実現に貢献してきました。ここではその代表例として液晶ディスプレイ材料についてご紹介します。

ブラウン管から液晶ディスプレイへ

近年、テレビやコンピュータのディスプレイ(表示装置)の主流となっている液晶ディスプレイは、かつて一般的だったブラウン管式に比べ、軽量でスペースを取らないことからシェアを広げています。最近では日本で販売されるテレビの約9割が液晶型となっています。

JSRは、この液晶ディスプレイの誕生当初から、材料の開発・製品化を通じてその技術進歩に貢献し続けてきました。

液晶ディスプレイの高品質を支えるJSRの技術

下図に示したのは、現在JSRが生産・提供している多種多様な液晶ディスプレイ材料です。その多くが、高い品質を評価されて業界シェア1位となっています。

液晶表面の反射を抑えて「映り込み」を低減するコーティング材、液晶画面のカラー色彩をつくり出すための着色レジストなど、直接消費者の目に触れることはありませんが、いずれも美しい画像を提供するのに欠かせない、重要な役割を果たす素材です。JSRのものづくりの技術が、さまざまな面から液晶ディスプレイの品質を支えています。

液晶ディスプレイの材料

顧客のニーズに耳を傾ける――配向膜の開発

ディスプレイ研究所 LCD材料第二開発室 西川通則

そうした、JSRが提供する液晶ディスプレイ材料の一つが「配向膜」です。液晶分子を一定方向に揃えて並べる機能を持ち、画面のコントラスト、ちらつきや残像の低減など、表示性能を大きく左右する重要な材料です。

JSRでは、お客様からの要望を受け、1985年に液晶ディスプレイ用配向膜の開発に着手。1988年に商品化を実現しました。その後、液晶テレビの普及とともに材料の拡販に成功し、現在では世界シェア1位の材料になっています。

当社のディスプレイ研究所でこの配向膜の研究開発に携わるLCD材料第二開発室長の西川通則は、「配向膜に求める機能や規格はお客様によっても大きく異なります。それに対応していくのが一番難しいですね」と語ります。「また、急速に進む大型化をはじめ、新しい機能や要求が出ればそこへの対応も必要になる。お客様のニーズを聞きながら、研究と改善を重ねています」。

さらに最近は、3Dなどのさらなる高画質や省エネを求める声も急速に高まる一方、新興国向けの低コスト製品の需要も増大。ニーズの多様化が進みつつあります。「それに対して、材料メーカーとしてのソリューションを提供していくのが私たちの役割。いかにお客様の声に耳を傾ける姿勢を持てるかが重要だと思っています」と西川。「お客様のニーズにきめ細かに応える」―― JSRのものづくりの精神が、そこに息づいているのです。

海外での事業展開と地域への貢献

ディスプレイ材料事業部 根本宏明

海外での液晶ディスプレイの生産規模拡大に伴い、近年は液晶ディスプレイ材料の生産・販売拠点を日本国外にも拡大。2004年には韓国、2006年には台湾での商業生産を開始しました。「現地に生産拠点を置くことで、現地ニーズをすばやく把握し、対応できる。これは大きな強みだと思います」。ディスプレイ材料事業部長の根本宏明はそう語ります。

そして、こうした海外での事業展開は、その地域の発展に寄与するものでなければならないというのが私たちの考えです。雇用の増大など経済面での貢献に加え、地元の学校行事への協力、交流会の開催などを通じて、地域の人々との信頼関係構築にも努めてきました。こうした姿勢が評価され、2009年にはグループ会社である「JSRマイクロ台湾」が、台湾経済部工業局の「産業貢献賞」を受賞しました。

JSRマイクロ台湾工場内
JSRマイクロ台湾工場内

次世代のディスプレイへ、「素材」で貢献する

「次世代」のディスプレイを視野に入れた研究開発も、次々に動き始めています。

例えば、LED搭載の液晶ディスプレイ。従来の蛍光管の代わりに環境負荷の低いLEDを光源として用いたもので、環境問題への関心の高まりを背景に注目が集まっています。すでに実用化が始まっているものの、より品質を高め、普及を加速させていくためには、着色レジストをはじめとしたそれぞれの材料分野で、LED搭載ディスプレイに対応した研究開発をより一層深めていく必要があります。

併せて、2010年春には、LED向けの新材料「LUMILONTM」シリーズを発売しました。これは、従来より簡易なプロセスで、しかも高性能のLEDを製造できる材料。LED製造時の環境負荷を低減するグレードも揃え、液晶ディスプレイ以外の分野も含めたLEDの使用拡大にも大きく貢献できるものだと考えています。

また、さらに先の未来に目をやれば、「ディスプレイ」の存在自体が、現在とは大きく違う位置づけになっていくことも考えられます。「すでに実用化が始まっている電子ペーパーのように、今後ディスプレイはテレビやパソコンにとどまらない幅広い場面で用いられる、より生活に密着した存在になっていくはずです。私たちは、『素材』の面でそこに貢献していきたいと考えています」と根本は言います。

技術と素材の開発を通じて、「豊かな社会」の実現に貢献する。JSRのその姿勢は、いまも、そして未来へ向かっても、変わることなくつながっているのです。

「こんなものがあれば」がものづくりの原点

JSRのものづくりの基本は「ユーザー・オリエンテッド」です。メーカーなど直接のお客様だけではなく、最終製品のユーザーの皆様のニーズにも応える製品を世に送り出すことを目指しています。同時に、自社の製造段階だけでなく最終製品への加工段階も含めた環境負荷削減を進めていくことも、中間素材メーカーとしての責任です。その両立は容易ではありませんが、ディスプレイに代表されるように、一つの最終製品に複数の部品を提供していることで、製造過程全体を見据えた総合的な視点で課題解決に挑めることが当社の強みだと考えています。

ディスプレイ分野は、今後さらなる高性能化に加えて、まったく新しいニーズが次々に登場してくるでしょう。そこに「材料」の面で大きく貢献するため、得意分野を活かすとともに、常に枠を打ち破るような研究開発を続けていきたいと思います。

上席執行役員 研究開発部長 熊野厚司

 


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