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JSRグループ、創薬支援市場向けにExosome (エクソソーム) 迅速分離用研究試薬キット「ExoCap™」(エクソキャップ)の販売を決定
~メディカル材料事業における新展開~

製品情報 2012年12月11日
 JSR株式会社(社長:小柴 満信)は、創薬支援市場向けに、ライフサイエンス系グループ企業であるJSRライフサイエンス株式会社と米国現地法人のJSR Micro, Inc.がExosome(エクソソーム)迅速分離用研究試薬キット「ExoCap™」(エクソキャップ)を開発し、来春をめどに販売開始することを決定しました。
 Exosomeは体内の細胞から発生して血液や尿中に存在する小粒子で、癌などの病気の有無や状態を知る手がかりが豊富に含まれているものです。これを迅速かつ簡便に分離して得ることで、診断の新たな手段となることが期待されています。
 今回発表した「ExoCap™」は、従来からあるExosome単離手法と比較して、Exosomeをその成分や機能を損なうことなく短時間で収量よく得ることができる画期的製品です。通常、単離の品質と処理時間とはトレードオフの関係にありますが、従来の最短の手法と同等の処理時間で、従来手法の最高レベルを上回る単離品質を得られます。バイオマーカー探索の素材として注目されているExosomeの捕捉を効率化することで、Exosome内バイオマーカー(生物指標化合物)の探索を活発化して、今後急激な伸長が期待される個別化医療のための創薬研究等に貢献することが期待されます。
 「ExoCap™」は、JSR独自の磁性粒子Magnosphere™(マグノスフィア)を用いた分離担体と、標的物質の捕捉・洗浄・溶出の各ステップで用いる薬液とを組み合わせた研究試薬キットとして販売いたします。(参考資料 図1、図2を参照ください。)
 JSRグループにとって当製品は創薬支援市場への本格参入の足がかりとなるものであり、当製品でのExosome分離手段の提供にとどまらず、Exosomeに関連した各種バイオマーカー等検出試薬群の展開も視野に入れております。

 近年、生体関連物質を分析して薬の開発や個別化診断・コンパニオン診断につなげようとする研究開発が活発に行われており、中でも、血液や尿、羊水などの体液に含まれるExosomeという小胞が研究対象として注目されています。Exosomeは体内の細胞から分泌される、脂質二重膜で囲まれた直径50~100nm(ナノメートル)の小胞で、それを分泌した細胞の細胞質成分に由来するmiRNA(マイクロRNA)やたんぱく質等を含んでいます。含まれるmiRNAやたんぱく質の種類は生理条件等により異なるため、それら物質を分析することで各種の疾患に関係するバイオマーカー(生物指標化合物)を発見できると期待されており、市場ではExosomeを短時間で効率よく単離する方法について非常に高いニーズがあるといわれています。今回JSRグループが開発した「ExoCap™」キットは、このニーズに応える製品です。
 なお、Exosome関連市場は現在 $12~15Mの規模で、今後の成長率は25~50%/年と見込まれています。

 Exosomeを単離する方法としては、従来から、超遠心分離やフィルターを用いた分離、沈殿させて分離する方法などがあります。従来の方法と比較して、今回JSRグループが開発した「ExoCap™」は次のような優れた特長を備えています。
 ・ JSR独自の技術により、Exosomeのみを選択的に捕捉する能力が極めて優れている
 ・ 分離担体は超親水性を備えており、Exosome以外の夾雑物の吸着が極めて少ない
 ・ 微量の検体からでも感度よく捕捉することができる
 ・ 捕捉したExosomeを溶出して得るステップにおいてもExosomeの成分や機能を損なわない
 ・ 超遠心分離法やフィルター法に比べて短時間で得ることができる
 ・ 特別な装置を必要としない

 2012年9月29日から10月2日に米国フロリダ州で開催されたExosome and Micro Vesicle 2012学会において、「ExoCap™」について発表したところ、数多くのExosomeの研究者から大きな関心が寄せられ、現在、欧米の40機関ほどの大学・専門機関等で実用に向けての評価中です。
 今後、日本では第35回日本分子生物学会年会(12/11~14福岡)、米国ではAmerican Society for Cell Biology Annual Meeting(12/15~19 サンフランシスコ)での発表を予定しております。
 なお、当製品は研究用であり、臨床用途には使用できません。

 JSRグループでは、JSRライフサイエンス株式会社を中核として欧米およびアジア(中国・韓国)の事業拠点が連携し、グローバルなサポート体制を整えております。今後も研究開発から技術サポートまで一貫した体制により、世界市場のニーズに迅速に対応してまいります。

 企業理念「Materials Innovation -マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」の下、高い競争力を有している各種粒子やポリマーの技術を核に、外部との積極的な連携を行いつつ、事業創造と社会への貢献にチャレンジしてまいります。
                                                            以上

<参考資料>
[図1] ExoCap™の使用手順 [図2] Magnosphere™ 写真
1. Exosomeを捕捉します。
2. 不要なものを洗い流します。
3. Exosomeを溶出します。
磁性粒子Magnosphere™(マグノスフィア)
の断面図