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JSR、新規モノマーを活用したアートン®樹脂の用途拡大
~高画質デジタルカメラや薄型携帯端末用として最適~

製品情報 2010年10月15日
 JSR株式会社(社長:小柴満信)は、高機能で透明耐熱性にすぐれるアートン樹脂を、デジタルカメラやビデオカメラなどの光学機器に用いられるレンズや光学部品用途とともに、タブレット型PCやスマートフォーンの薄型の液晶画面の画質向上に役立つ極薄の位相差フィルムとして拡販を行います。

 アートン樹脂はシクロオレフィン系樹脂ですが、今回当社が開発した特殊なモノマーを使用することで、光学的に完全に均質な樹脂となり、透明性にすぐれ、150℃以上の耐熱性を有することを可能としました。また、そのモノマー構造より、他の樹脂や添加剤との相溶性にもすぐれ、樹脂の光学的な性能や機械的な性能を改良しやすい特徴も有します。一方、位相差フィルムなどの光学フィルムとして用いる場合、他のシクロオレフィン系樹脂に比較して、薄膜でも位相差が発現しやすいという特徴を持ちます。

 今回、JSRが開発・上市した製品は以下の通りです。すでに日本をふくむアジアのユーザーでの採用が決まっております。

① CMOSイメージセンサーなどの光学デバイス用のレンズに用いられる高屈折・高流動性樹脂と光学フィルター
 CMOSイメージセンサーは、携帯電話やデジタルカメラなどのデジタル家電のみならず車載や監視カメラ用途など、応用範囲がますます広がっています。CMOSイメージセンサーに対する市場要求は、最近、高画素数というよりも、高画質へと移行しています。今回、JSRが開発した樹脂は、屈折率やアッペ数などの光学的な必要条件を満たすだけでなく、成形性にすぐれ、非球面レンズなどの成型に最適です。

 またアートン樹脂の相溶性にすぐれる性質を利用して、アートンに添加剤を加え、光学的な膜を積層させて特定波長をカットするフィルターを開発・上市いたしました。この特殊な光学フィルターを使うと、例えばガラスの赤外線カットフィルターに比較して、大幅な薄膜化と軽量化が可能であり、CMOSイメージセンサーをもちいて撮像するときに発生する、入射角度の差によってしばしば発生するカラーシフトを防いで、綺麗な画像を撮影することができます。

② 極薄位相差フィルム
 急速に拡大するタブレット型PCやスマートフォーンなどの高性能化する携帯端末の液晶ディスプレーにおいては、薄型化の要求は大変強くなっています。このためには、液晶ディスプレーパネルを含めて、各部品の薄型化が必要となります。JSRが今回、開発・上市した極薄位相差フィルムは、薄膜での強度が極めて高く、また位相差が発現する特徴があるため、20ミクロンの厚さでも均質で大きな位相差を発揮します。このような高位相差は、アートン樹脂に含まれる特殊なモノマー構造により発現し、他のシクロオレフィン系樹脂で同じ高位相差を発現するのは30から40ミクロン以上の膜厚が必要であり、限界と言われています。

 当社は、中期経営計画JUMP2010の中で精密材料・加工事業を戦略事業のひとつとして定義し、革新素材の提供だけでなく、素材に加工を加えることで、更なる付加価値を提供するために、重点的な資源配分を行い、事業を推進しています。2008年度以降は精密加工技術を社内に構築し、素材の組み合わせで更なる価値を提供するだけでなく、ユーザーに対して、当社の革新素材を中心とした技術提案力を磨くことを狙っております。

 これからも企業理念のMaterials Innovationを事業活動の基盤として、革新かつコスト競争力にすぐれる材料開発を通じて、広く社会に貢献していきます。