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JSR、平成21年度第58回日本化学会化学技術賞受賞
―液晶テレビ用配向膜材料の開発と工業化に対して―

企業情報 2010年01月22日
 JSR株式会社(社長:小柴満信)はこの度、「ステロイド骨格を有する液晶テレビ用配向膜材料の開発と工業化」の実績により、社団法人日本化学会の、平成21年度第58回化学技術賞を受賞いたしました。液晶テレビの実現に向けた有用な材料を開発し、その材料を工業化したことにより、今日の液晶テレビの普及に大きく寄与したという技術的価値の高さ、および今後更なる適用拡大が見込まれることが評価されたものです。授賞式は、日本化学会第90春季年会(会期:3月26日~3月28日、会場:近畿大学本部キャンパス/東大阪市)において3月27日(土)に行われる予定です。また受賞内容に関しては同年会において3月28日(日)に講演します。

 配向膜材料とは、液晶パネルの内部に使われるガラス基板の間にある液晶分子を一定方向に並べるための材料で、表示性能を左右する重要な部材です(参考資料2)。液晶パネルが市場に登場した初期は、デジタル時計やパーソナルコンピュータなど小型の表示パネルに適用されましたが、その後、液晶パネルが大画面の液晶テレビに用途拡大するためには、配向膜の高性能化が必要不可欠でした。

 今回の受賞対象である配向膜材料は、当社が以前より所有していた低温形成可能な有機溶剤可溶型の特殊なポリイミドに新規開発したステロイド構造をもつ化合物を組み込んだもので、1990年頃の開発以来、改良を続けてきた製品です。本技術に関しては、日米を初め世界各国で特許(日本国内登録番号:特許第2893671号、米国内登録番号:US5276132など)を取得しています。
 この配向膜材料を液晶パネルに適用することで、液晶テレビの実用化に当たり大きな障害となっていたガラス基板の間にある液晶分子の傾斜角の制御を、任意かつ安定的に発現させることに成功しました。そして、この技術により、液晶テレビのコントラスト(白と黒の輝度比)を改良し、明るい部屋でも鮮やかな画像が実現できるようになりました。また、画面の色が見る角度によって変化するという課題も解決し、液晶テレビの視野角を広げることができました。さらに、当時の液晶テレビは、動きの早い動画などにおいて、残像が発生するという問題がありましたが、この技術により大幅に改善し、ブラウン管テレビと同等の動画の画質を得ることができるようになりました。現在では、大半の大型液晶テレビでこの技術を用いた配向膜が採用されています。

 日本化学会は、1878年(明治11年)に創立され、130年以上の歴史と伝統を持ち、会員約3万2千名を擁する日本で最大の化学関連の学会です。毎年、学術・産業分野において顕著な業績をあげた研究に携わった団体と個人に対して表彰を行っています。このうち化学技術賞は日本の化学工業の技術に関して特に顕著な業績のあった団体・個人に授与されるものです。


<参考資料>
1. 受賞者:
松木安生 JSR(株) 筑波研究所 主任研究員
西川通則 JSR(株) 四日市研究センター ディスプレイ研究所 LCD材料第二開発室 室長
河村繁生 JSR(株) ディスプレイ材料事業部 LCD材料部 主幹
山本圭一 JSR(株) 筑波研究所
六鹿泰顕 JSR(株) 四日市研究センター 機能樹脂開発室
2. 液晶パネルの断面図例
← 配向膜は液晶分子の配列状態を制御する薄膜材料
3. LCDの代表的な製造方法:
配向膜は、透明電極付基板上にポリマーを溶解させた溶液を塗工した後、焼成することで形成される。その後に、配向膜に液晶配向性能を付与する。
4. テレビ用液晶パネルの様々な種類: