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SRI指標と銘柄への組み入れ

ステークホルダーとの対話 次代のJSRグループを担う人材の育成および働き方を考える ①

ステークホルダーとの対話

JSRグループでは、経営とCSRの一体化を意識し、持続可能な地球環境や社会の実現に貢献するため、重要課題を特定しCSRレポートで開示しています。
このほど、「働き方改革」について、JSRグループはいかに取り組んでいくべきか、有識者をお招きして2つのテーマで議論しました。
一つは、「2025年、2030年といった未来の働き方、人材の育成」についてです。AIやIoTが普及する社会で求められる能力やスキル、従業員やマネジメント層が時代の変化に合わせて変わるべきこと、逆に変えてはならないことについて、“デジタル革命”や“サスティナビリティ”といった視点から考察を深めました。
もう一つは、「JSRグループが直面している働き方」の課題についてです。労働時間の削減やワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ、健康経営、安全管理といった重要な課題について検討を進めました。
今回の対話を通じて得られた新たな重要課題や、いただいたアドバイス、ご意見は、今後の活動計画の中に盛り込んでいこうと考えております。

未来の働き方

捫垣:
JSRグループでは、2017年度から2019年度までの新中期経営計画をスタートさせています。この推進を支えるものとして“働き方改革”を置いています。「活動の主役は社員」と位置付け、目的を共有し、意識や習慣を変え、全員で実行するという手法で進めていきます。その入り口として、人材開発部が主導して、会議やメールにおける無駄やムラを解消するルールを定め、外部コンサルタントを招いての「働き方見直しプロジェクト」を実施していきます。
また、このほど2017年度のCSRレポートの企画として、社長と外部有識者で対談を行いました。新中期経営計画や今後の長期ビジョン、JSRグループのあるべき従業員像や働き方などについて対話を行いましたが、そこで働き方改革に関する社長の考え方や問題意識が示されたのです。社長は「働き方改革とは単なる残業対策ではなく、テクノロジーを加えていかに労働生産性を高めていくかが重要である」と言っています。また、企業組織としてのチャレンジ精神の不足や、新しいテクノロジーに触れる機会をもっとつくっていくべきとの問題意識も示しました。さらに、新中期経営計画が2020年度ではなく2019年度までとしたのは、2020年度以降のJSRグループは次の世代が考えるべき、との思いを込めていると説明しました。
そこで、本日はまず、2025年や2030年といった未来の働き方について対話を進めていきたいと思います。

未来を、世の中の今、JSRグループの今から考える

中村:
未来の働き方を決めていく3つのインパクトがあると思います。1つ目は、産業構造の変化。GDPにおける製造業のシェアが低下し、サービス産業がますます伸展するという流れにあります。2つ目は、人口動態。少子高齢化が進展し、人口ピラミッドがどんどん逆三角形になっていくという情勢です。3つ目は、テクノロジーの進歩。AIやロボティクス、あるいはシェアリングエコノミーといった要素が、職場や日常生活にどんどん入り込んでくるということです。こういった要素を考え併せて未来の働き方を探っていく必要があると思います。
未来の働き方が変わるのは間違いないでしょうが、どう変わるのかはまだわかりません。AIやロボットで仕事がなくなるという人もいれば、なくならないという人もいます。例えば鉄道の改札口などのように機械化で完全になくなっていく仕事はいくつもあるでしょう。また、少子化で労働人口が減ることで、女性も高齢者も障がい者も外国人も、みんな働かなければならず、仕事がなくならないことも推察できます。そのように各論では見えても、社会全体でどうなるかまでは予測不能ではないかと思います。
藤井:
メーカーとしては、まずは製造現場の一部の業務はAIやロボットに置き換わっていくと思っています。一方、研究開発や営業、バックオフィスなどのホワイトカラーはどこまで置き換わるのかはわからないのが正直なところですね。
土居:
法務の仕事はAIに置き換わると言われていますが、すべてそうなるわけではなく、AIで省力化し最後は人間が判断する業務は残るのではないかとみています。いずれにしろ、来るべき時に備え、テクノロジーを使いこなせる能力は備えておく必要はあると思います。
川橋:
研究開発では、製品開発の競争力を高めるために“質”と“量”の向上が重要となりますが、手足を動かす“量”はロボティクスで、頭を動かす“質”はAIで、ある程度まで代替し、人間はイノベーションを起こすためのアイデアを考えるというように働き方を変えていく必要があると思います。肝心なのは、それをいち早くやることです。そうでなければ競争に負けてしまいます。
対話会の様子AIやロボティクスの導入は、需給バランスで決まっていくという側面があるのではないでしょうか。例えば、タクシーの運転手が減少すれば、自動運転のビークルがその分野で進展するでしょう。建築現場では、ドローンの導入で測量などの業務が一変していますね。介護スタッフが不足しているのならば、介護ロボットが代用されていくのではないかと思います。ニーズが開発動機になるということです。

大事にすべきことは企業自らが決め、自らがステップをつくる

中村:
皆さん、未来は読み切れないとおっしゃいましたが、読まなくてもいいのではないでしょうか。社会全体がどうなるのかよりも、JSRグループがどうするかのほうが大事だからです。読み切れない時代で求められるのは、自分で次のステップを決め、次のステージをつくっていくことです。
藤井:
人材開発として悩んでいることがあります。リンダ・グラットン氏の『ワーク・シフト』という本に、今後は一つの分野のプロフェッショナルが求められ、ジェネラリストが不要になると書かれていました。本当にそうなのかと。JSRはむしろジェネラリストを重視し、ローテーション人事を行っています。変化が激しい時代だからこそ、欧米のような一つの分野のプロフェッショナルでいても仕事がなくなるのではないか。むしろ、あいまいなジェネラリストのほうが生き残れるのではないかという気もしています。
中村:
リクルートワークス研究所では、2016年11月に発行した『Work Model 2030』というレポートで、雇用されている人が90%を占める日本はフリーランス(雇われない働き方をする人)や起業家の層を厚くする必要性があるということと、ジェネラリスト的人材は“プロデューサー”に変わるべき、と提言しています。そして、リンダ・グラットンさんの言う「一つの分野のプロフェッショナル」は、“テクノロジスト”と定義しています。テクノロジストとは、特定の専門領域を狭く深く持った高度な専門職であり、テクノロジーを生み出し活用することで仕事の付加価値を高める人、言い換えれば競争力の源泉を生み出す人を指しています。つまり、自らの専門領域を開発できる人です。プロデューサーとは、こうしたテクノロジストを束ねて、新しい価値やビジネスモデルを生み出す人です。自分のアイデアを形にするために、グローバルにもローカルにも活躍の場を求め、経済を活性化させる働きをするわけです。従来のジェネラリストには“社内調整に長けている人”というイメージがありますが、一線を画しているといえますね。

人材をどうデザインして製品やビジネスに落とし込むか

川橋:
プロデューサーとテクノロジストが必要とのお話には同感です。私は、世の中のニーズを素材、製品やビジネスに落とし込むことや、それに必要な人材を育成し、適所に配置させる“デザイン力”が重要であると捉えています。
中村:
なるほど。デザイナーという言葉は役割や機能をうまく言い表していますね。ところで、プロデューサーとテクノロジストには共通点があります。「自身が知らないことがあることを知っている」ということです。だからこそ、学習能力や吸収力が並大抵ではなく、底力があります。前述のとおり大きなインパクトが起きる中、両者に最も重要な能力は、自ら変化をつくり出せることです。自らが速いスピードで変化していくためには、テクノロジストはより高度な専門性を持つ必要があります。プロデューサーはオープンイノベーションの考え方で、新たなテクノロジストのネットワークを広げていく必要があるでしょう。テクノロジストを極めるとプロデューサーになります。重要なポイントは、その取り組みを競争力に転換させることです。
土居:
JSRグループとして、プロデューサーとテクノロジストをどう育てていくかが重要ですね。その前に、JSRグループが必要とするプロデューサーとテクノロジストとはどういうものか、明らかにしておく必要があると思います。
対話会の様子

対話 ② 「直面している課題」へ