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CSRレポート

SRI指標と銘柄への組み入れ

トップコミットメント

取締役社長 小柴満信

グループ全体で社会に貢献するための
経営とCSRの一体化

企業理念の実現に向けたCSRの見直し

JSRグループとして、2014年度のCSRの取り組みをご報告するにあたり、最初に、2014年7月に四日市工場で発生した重大な労働災害事故につきまして、お亡くなりになった従業員の方のご冥福をあらためてお祈りいたしますとともに、ご遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。今回の労働災害事故を重く受け止め、二度とこのような事故を起こさぬよう再発防止に努めて、安全の確保を徹底してまいります。
今回のCSRレポートは、「経営とCSRは一体」であることをテーマに据えています。企業理念「Materials Innovation—マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」の具現化に向け、事業活動のあらゆる場面での判断基準がCSRであることを、グループ全体、社員一人ひとりが認識して、今一度これまでに構築してきた様々な体制、制度、システム等が確実に機能していることを再確認いたします。まさに、経営と現場が一体となって企業理念の実現を推進してまいります。
JSRグループは、再来年に創立60周年を迎えます。持続可能な地球環境や社会の実現に今後も貢献するため、自らも持続的な成長を続ける企業体として、安全は最も大切なものです。事業活動の大前提とし、設備だけでなく、しくみや概念も強化していかねばなりません。

事業活動と不可分な攻めと守りの二つのCSR

JSRグループでは、CSRについて、事業を通じて社会的な課題に応える「攻めのCSR」と、持続可能な事業活動を支える基盤となる「守りのCSR」の二つの側面を重要視しています。具体的な例として、環境とエネルギー問題に対しては、「Eco-innovation」による新たな事業機会の創出と「Energy Management」による環境負荷低減の二つの「E」からなる「E2イニシアティブ®」という考え方を基盤とした化学会社なりの取り組みを行っています。
現在、この「E2イニシアティブ®」の考え方に基づいて上市された環境配慮型製品は、低燃費タイヤ用合成ゴムをはじめ全製品の20%に及んでいますが、これらの製品は投資採算計算の際に、環境コストを反映させた上で製品化を実現しています。さらには自社で開発した素材を使った遮熱塗料や蓄熱材、LED照明導光板などを自社で使用して効果を実証するとともに、自社のCO2排出量削減にもつなげています。
また、お客様に「本当に良い製品」を供給することは、メーカーとして果たすべき最も重要な責任です。JSRグループが作る製品の機能や品質がお客様の目的に適合しているという基本に加え、サステナブルに供給できる体制の構築を確実なものにするため、サプライチェーンマネジメントを強化しています。またCSR調達の観点から紛争鉱物の有無や、生物由来原料では製造元が持続可能性や生物多様性に配慮しているかまで管理しています。JSRグループでは、このような取り組みが、あらためてCSRであると強調されることなく、当たり前のように業務プロセスに落とし込まれており、付加価値を生みだすことや、製品やサービスの差別化につながっています。
この「当たり前」を実践するための意識を従業員が身に着け続けるため、企業理念や経営方針について役員と従業員との対話会などにも力を入れており、理解は進んでいると思います。
これからは、さらに人材育成を積極的に実践する「場」を提供していきたいと考えています。一人ひとりが枠に収まり、その中だけで結果を追求しても、チャレンジする姿勢やイノベーションは生まれてきません。新しいものを創出していくためには、古い枠組みや概念にとらわれず「働き方」を根本から見直す必要があります。
具体的には、オフィスや研究所が多様な人材や考え方がぶつかる「場」として機能するようにあり方を見直すことで、JSRグループの行動指針である4C( Challenge(挑戦), Communication(対話), Collaboration(協働), Cultivation(共育))実践のための「機会」や「場」を創出したいと考えています。従業員が、企業理念体系を理解することによって自らの行動を変えていく。一人ひとりが能力を発揮しながら、協働しやすい環境で事業活動を進めていく。それにより社会課題に対するソリューションを提供できるようになり、さらにはその先に社会に貢献するイノベーションが生みだされる。このような循環を目指しています。「E2イニシアティブ®」という考え方も、このような流れの中で従業員一人ひとりに自然に浸透するはずです。
こうしたポジティブな循環を作ることで、事業を成長させ収益を拡大し、株主や投資家の皆様への利益の還元につながることを目指していきます。

グローバル化を踏まえた
今後の展開について

前回の中期経営計画「JSR20i3」(2011年度〜2013年度)では、2020年を目標に、石油化学系事業、ファイン事業、戦略事業の三つの事業を強力に推し進め、収益拡大の基盤を整えました。
それを受け継ぐ「JSR20i6」(2014年度〜2016年度)では、これまでの布石を確実に収益につなげることを目標にしています。
JSRグループが今後20年、30年にわたり持続的に事業を続けて、JSRグループのありたい姿に近づくため、建設後40年前後経過した設備の更新、地震対策、労働安全確保など工場製造設備の強靭化も進めていきます。
2014年度の海外売上高比率は50%を超えていますが、そのうちの約半分を海外で製造・販売しています。製造・販売の海外比率は今後ますます高まるとともに現地での雇用も増え、2020年の目標が達成されるころには、グループの全従業員に占める日本人比率は50%を切っていると想定されます。今、世界で言われる「多様化」は、JSRグループにおいても事業を推進する中で当然のように起こってくる状況であり、地域、人種、言語、文化、商習慣などが異なる人たちが各自の実力を発揮して事業を行っていくためには、多様な価値観を受容していく必要があります。現在は、東京本社が経営と事業の中心になっていますが、今後、それぞれの事業について顧客起点、原料起点で考えていくと、事業ごとに統括機能をより適した場所に移していくことも考えられます。ガバナンスや監査機能などは、それぞれの地域ごとにやっていくことになり、多様化も含めて様々なローカルガイドラインを採用することになります。そうなったときのよりどころや判断基準として、グループ全体が一つの企業理念に立ち返ることが重要になります。
経営とCSRは常に一体であり、攻めと守りのCSRを事業活動の中で実践し続けていくことが大切です。20年、30年先を見据えて社会課題を捉え、「Materials Innovation」を通じて人間社会に貢献していく。JSRグループは常にこのことを意識していきます。

JSR株式会社 代表取締役社長
小柴 満信