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CSRレポート2013

第三者意見/第三者検証

第三者意見

東京大学名誉教授安井氏




東京大学 名誉教授
安井至氏


今年のCSRレポートを手にして、まず、小柴社長のトップコミットメントを読むと、その経営の意図がやはり極めて明確であることが確認できる。ところで、現在の日本という国には、自分はこれを目標にしてこの地球上でこう生きたいという意図が明確な人は極めて少ない。せめて、企業のトップにはこれを求めたいと思う。そんな話を今年の「社会との対話」でも語らせていただいた。その裏には米国のGEの話を聞く経験があったからである。
現在の社長Jeffrey R. Immelt氏が前社長Jack Welch氏の後継になったのは、2000年のことである。1956年生まれで若い。それもそのはずで、社長の任期は15年を目処としているとのことである。それには、いくら遅くとも、50歳前後には社長に就任しなければならない。それは製造業としての長期的な成長を目指すためだという。
製造業、特に、材料系の企業の競争力を確保するには、長期的な視点に立って、研究開発能力を高く維持しておくことが必要不可欠である。しかし、研究開発は100%成功するとは限らない。一方、長期的に技術的能力を拡大することは、材料メーカーの社会的な責任(SR)でもあるので、まずはユーザニーズの的確な把握が鍵となる。当然、国際的な対応が絶対的な必須事項である。
当然、リスクもある。世界全体を把握することは、一個人では困難で、しかし、なんらかの判断を下すのはやはり個人でしかないからである。この課題は、本社の意図を最大限汲み上げる努力が行われるグループ体制を構築し、情報ネットワークを確立することによって、初めて克服できることだろう。
グループ体制がしっかりと確立している証拠の一つは、米国のJSR Micro, Inc.が本社に触発されて、『CSR Report』を発行したことではないだろうか。SRI指標への組入れも一つの目安になる。Dow Jonesのサステナビリティ・アジア・パシフィック・インデックスに2012年に選定されていることは、現在のグループ体制が正当に評価されていることを意味するだろう。
生物多様性にもすでに取り組み、日本の化学企業として、CSRの先頭を走るJSRであるが、後続に抜かれないために何をすべきなのだろうか。それは、まずもって本業での、すなわち、材料系製造業としてのCSRを再度確認すること、そして、より体系化された分かりやすい取り組みを目指すことであろう。
先頭を走っているという場合、外部から何かを学ぶことは無意味である。材料イノベーションを実現すると同様の方法論を、CSRのために社内で開発しなければならない。野中郁次郎著『知識創造企業』で指摘されていることであるが、それには、まずは場をつくり、そこで濃い会話を繰り返し、そこで表出してくる知恵を構造化し、そして広く一般に理解可能な形式知へと変換する。このような手法を継続することではないかと考える。


第三者検証

  • 第三者検証意見書 (PDF 434kb)
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