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CSRレポート2013

トップコミットメント

取締役社長 小柴満信

変化し続ける時代を見通しながら、
「Materials Innovation」で
人間社会への貢献に挑戦します。


時代の変化を捉え、成長シナリオを描く

JSRグループでは、2020年のありたい姿を描き、2011年度からの3カ年を「成長への始動」と位置づけた中期経営計画「JSR20i3」を進めてきました。この間、リーマンショックに端を発した「不確実性」と「多様化」を時代のキーワードと考えてきましたが、2012年度以降、世界が新しい枠組みを迎えつつあるサインを感じています。その兆候のひとつが「シェールガス革命」です。シェールガスの安定的な生産・調達が可能になれば、原料の多様化と地政学的なバランスの変化が間違いなく訪れます。また世界景気も、今後は悪化よりも好転の可能性が高く、この機会を確実に捉えなければなりません。2014年度をスタートとする次期中期経営計画では、今後数年で起こり得るこうした変化を敏感に捉え、確固たる成長シナリオを構築していきます。
私たちの基盤事業のひとつである石化事業では、量・価格ともに安定した原料の調達が事業の成否を左右します。主要原料であるブタジエンの安定的確保は将来にわたっても課題です。これまで用いられていなかったブタジエン原料の活用に加え、合成ブタジエンの製造技術も開発中です。実はJSRでは、40年ほど前に合成ブタジエンを研究していました。しかし当時は資源問題は社会課題になっておらず、経済合理性の観点からも有効とは考えられていませんでした。過去から続く研究開発の蓄積が、今この時代に、新しい価値を生み出そうとしているのです。
もうひとつの基盤事業であるファイン事業は、日本中心の事業形態からの転換が迫られています。市場の変化を捉えながら、フラットパネル・ディスプレイ材料は韓国・台湾を中心に、半導体材料はグローバルに、顧客のニーズに応えていく必要があります。
ふたつの基盤事業は収益の要ですが、今のままの連続的な成長だけでグローバルに存在感のある地位の獲得は困難です。私たちがさらなる成長を遂げるには、地球規模の課題解決に役立つJSRグループの素材や技術を次の事業の柱として確かなものにする必要があります。

社会課題の解決を成長のドライバーに

この新しい柱が「戦略事業」です。石化事業やファイン事業を通じて蓄積した数々のオンリーワン技術や品質管理の手法を活用し、融合することで、グローバルな課題の解決に貢献できると確信しています。
戦略事業では「精密材料・加工」を共通の基盤技術としています。JSRが持つ素材に、どんな機能を付与し、どうやって高精度な加工をするか。その掛け合わせで、単なる素材を提供するよりも高い価値を生み出すことができます。そしてその技術力をベースに、「環境・エネルギー」と「ライフサイエンス」のふたつの分野で事業を展開しています。
環境・エネルギーの領域で主軸に据えているのは、省エネルギーやエネルギー回生、蓄熱、遮熱など、最終的に電力消費を下げることにつながる分野です。特に力を入れているリチウムイオンキャパシタは、電極の性能や安全性を向上させるために独自の精密加工技術を活かし、より高性能の製品づくりを目指しています。また遮熱塗料用材料などは、以前から研究していた技術を改良して製品化につなげました。このような製品群は、環境配慮と事業を結びつけるJSR独自のコンセプト「E2イニシアティ
®」で掲げた「Eco-innovation」とも合致しており、積極的に取り組んでいきます。
一方、ライフサイエンスの領域では、2012年2月にJSRライフサイエンス株式会社を設立しました。これまでも医療用ポリマーや診断薬用粒子の製造・供給を行っていましたが、抗体医薬の精製工程で用いるバイオプロセス材料の提供にも業容を拡大します。創薬のプロセスは高い品質や安全性が求められますが、半導体材料事業などで培ってきた品質管理や製造技術のノウハウがここに応用できます。ライフサイエンスと半導体、一見関係がなさそうなふたつの技術を融合して利用者の利便性を高めるチャレンジが進んでいます。これらを積み重ね、将来的には薬の製造コストを下げて安価な医薬品の製造に貢献したり、一人ひとりに最適化した治療や投薬を行うパーソナル医療の進展に貢献することで、企業理念「Materials Innovation」を実践していきます。
また、生物多様性の保全については、2012年度に策定した全社方針のもとで取り組みを着実に推進しながら、どのように事業活動に組み込んでいくかさらに検討を進める予定です。

多様な従業員一人ひとりの挑戦が、未来を創る

社内風景

石化事業からファイン事業、戦略事業へと事業分野も活動地域も拡大を続ける中で、人材の育成は経営のナンバーワン課題です。
これまでの事業を通じて、グローバルな視点で仕事に取り組むというマインドセットが従業員一人ひとりに徹底してきたと感じています。企業理念体系の浸透を目指した役員と従業員の対話会も繰り返し行い、認知も進みました。今後は、行動指針「4C」のChallenge(挑戦)、Communication(対話)、Collaboration (協働)、Cultivation(共育)の実践がますます重要になると考えています。例えばライフサイエンスの分野では、研究機関との連携や他企業への戦略的投資を積極的に行っており、さまざまな社外パートナーと力を合わせた取り組みを推進しています。互いの意見を尊重し合いながら新しいビジネスモデルを築くには、ChallengeやCollaborationの重要度はさらに高まります。
加えて、多様な価値観への理解も不可欠です。現在、グループ人員約5,800人のうち約1,200人が海外拠点の従業員で、その比率は今後ますます高まっていきます。女性の活躍や中途採用者の活用も推進しています。さまざまなバックグラウンドを持つ従業員が、実力次第で管理職や経営幹部にチャレンジできる機会をつくることが経営陣の役割だと考えています。同時に、会社と共に成長し続けようと強くコミットする従業員に対して報いることができるような仕組みの導入も検討しているところです。

持続可能な社会の実現に向けて、価値創造の挑戦を続ける

2012年11月、四日市工場の乳化重合SBRプラントで火災が発生しました。幸い負傷者はなかったものの、近隣住民の皆様や関係当局に多大なご迷惑をおかけいたしましたこと、改めて深くお詫びを申し上げます。日頃から安全活動に取り組んできましたが「安全に絶対はない」と改めて思い知る機会となりました。
JSRグループは、国連グローバル・コンパクトに参加し、グローバルに事業活動を展開する企業グループとして国際社会の中で、より責任ある行動の実践を目指しています。
2013年3月には、米国のグループ企業であるJSR Micro, Inc.が『2012 CSR Report』を発行しました。JSRグループのCSRレポートに触発され、社会に向き合うことが競争力になると自覚し自主的にレポートをまとめたのは、非常に喜ばしいことです。こうした意識や行動が、グローバルに展開していくことに期待しています。
JSRは半官半民の企業としてスタートし、他の企業グループに属さない企業として独立性を維持してきました。今後、グローバルな競争を勝ち抜き、JSRグループとしての個性を持って存在感を示していくためには規模の拡大が必要で、時価総額1兆円規模で評価される企業となることを目指しています。この高い目標を達成するには、今までの考え方やビジネスモデルまでも変革し続ける覚悟です。持続可能な社会の実現への貢献と、JSRグループのたゆみない成長を目指して、私たちは「Materials Innovation」による価値創造への挑戦を続けていきます。

JSR株式会社 取締役社長
小柴 満信

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