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CSRレポート2012

JSRグループの生物多様性保全に向けた取り組み

事業活動の生物多様性への依存と影響を把握

事業活動がどのように生物多様性に依存し、影響を与えているかを把握するために、「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」が開発した「企業と生物多様性の関係性マップ®」を参考にJSRと生物多様性の関係を整理しました。これは、事業活動の「原材料の調達」「開発・製造」「輸送・販売」「使用・保守」「回収・リサイクル」「土地利用」の各工程での生態系サービスへの依存と生物多様性への影響を図に表すもので、2010年度に合成ゴムについて、また2011年度にはファイン製品について作成しました。

その結果、JSRグループの事業では「原材料の調達」と「事業所の土地利用」が特に着目すべき課題であることがわかりました。他のプロセスについては、環境対策や「E2イニシアティブ®」を中心に対応を進めていきます。

生物多様性関係性マップ

生物多様性関係性マップ(合成ゴム)

原材料の調達状況調査

JSRグループが使用している原材料の調査を行ったところ、石油化学事業、ファイン事業とも、量は多くないものの必要不可欠な天然由来のものがあることがわかりました。

事業所の土地利用評価の実施

JBIBが開発した『いきもの共生事業所®推進ガイドライン』の「土地利用通信簿®」を活用して、事業所敷地の生物多様性を評価する試みを進めています。2010年度は千葉工場と筑波研究所で、2011年度は四日市工場、千葉工場、鹿島工場、筑波研究所、JSRマイクロ九州(株)で実施しました。各事業所の敷地を実際に観察し、緑地の量や植生、どんな虫や鳥が生息しているかなどを確認して、どのくらい生物多様性に配慮した土地であるかを調査しました。

その結果、各事業所で雨水の有効利用などの水循環への配慮はできている一方で、緑の構造や植生を支える土壌、周辺環境との生態系ネットワーク創出等は得点が低い傾向が見られました。こうした観点で敷地を評価するのはJSRグループにとっても新しい取り組みであるため、2011年度の結果をベースに毎年評価を行い、PDCAサイクルを回すことで徐々に点数を上げていくことを目指します。

調査結果のまとめ

(1)各事業所の緑地(工場立地法などに対応)の中に、それぞれ生物多様性に貢献し得るまとまりのある緑地が存在することがわかった。
(2)ただし、生物多様性の保全を意識した維持管理は、現状行っていない。
(3)上記を踏まえて、生物多様性に貢献し得るまとまりのある緑地を中心に、生物多様性の保全を意識した維持管理を推進していく。

各事業所での評価風景 各事業所調査風景
筑波研究所 事務チーム 五十嵐久夫

筑波研究所 事務チーム
五十嵐 久夫

土地利用通信簿、いきものモニタリングシートを用いて生物多様性の視点で緑地の評価を行いました。これらのツールは素人の私たちにもわかりやすいものでした。調査の結果から緑地の改善点が見出せ、除草剤の削減など早速2012年度の計画として取り組んでいます。

生物多様性方針の策定

これまでの取り組みを通じて見えてきた課題を整理し、生物多様性方針を策定しました。今後はこの方針に基づいて、具体的活動を推進していきます。

JSRグループの生物多様性方針

JSRグループは、持続可能な社会の構築に貢献するために、事業活動がどのように生物多様性に依存し、影響を与えているかの把握に努め、生物多様性保全への配慮を推進していきます。

1. 天然由来の原料資材等の調達において、生物多様性保全への配慮に努めます
2. 事業所の緑地を生物多様性に配慮したものにするための取り組みを推進します
3. 生物多様性に配慮した製品開発を推進します
4. 社員の参画や地域社会との連携を重視した取り組みを推進します

※3,4については2014年度以降に注力

社外での講演

日本ゴム工業会の勉強会

日本ゴム工業会の勉強会

日本ゴム工業会の「これからのビジネスに欠かせない視点〜生物多様性と企業のかかわり〜」というテーマの勉強会にて「JSRの生物多様性における取り組み」について講演しました。合成ゴムの生態系への依存と影響を考える手法として「関係性マップ」を作成したこと、「土地利用通信簿®」「いきものモニタリングシート」を用いて、JSRの複数事業所で、緑地の評価や敷地内の生態系調査を実施したことなどを説明し、活発な質疑が行われました。


シンポジウム「企業が語るいきものがたりPart 5」

企業が語るいきものがたり Part 5

生物多様性に関する企業向けのシンポジウムとしては国内で最も実績のある「企業が語るいきものがたり Part 5」の分科会で、JSRの筑波研究所員が講演しました。筑波研究所での「いきもの共生事業所® 推進ガイドライン」を活用した調査を通して得られた知見を「管理者からみた推進ツールの使い勝手について」というテーマで紹介するとともに、当社の積極的な取り組み姿勢をアピールしました。


CSR部 久保達哉

CSR部長
久保 達哉

「生物多様性の保全」は企業が取り組むべき大きな社会課題のひとつと認識しています。生物多様性の保全と言うと、「絶滅危惧種の保護」と捉えられるケースが多く、そうした社会貢献的な活動ももちろん大切なのですが、私たちは事業を行う企業として、何よりも事業活動を通じて生物多様性の保全に貢献していきたいと考えています。
当面は、原料調達における生物多様性への配慮と事業所の緑地改善を軸に取り組みを推進していきます。こうした活動により、地球の持続可能性向上に少しでも貢献できればと考えています。また、取引先や地域の他企業と連携した取り組みも進めていきたいですね。

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