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CSRレポート2012

特集1 グローバルな社会動向とマテリアルのかかわり

自動車とマテリアル

自動車業界を取り巻く環境変化

世界中でクルマ需要、特にエコカー需要が増加

新興国のモータリゼーションの進展などを受け、世界の自動車需要は伸び続けています。また、地球温暖化や石油資源の枯渇はグローバルな課題であること、各国で環境意識が高まっていることなどから、エコカーへの注目が高まっています。今後、各国での燃費規制が予想されるため、エコカーの需要拡大が進むと考えられます。

世界4極の乗用車販売台数とエコカー※1の占める割合の予測

世界4極の乗用車販売台数とエコカーの占める割合の予測


※1:世界4極(日本、米国、欧州、中国)の販売台数。エコカーには、「ハイブリッド車(HEV)」「プラグインハイブリッド車(PHEV)」「電気自動車(EV)」の3つのタイプが含まれる。
出典:野村総合研究所 ニュースリリース(2011年11月30日)

燃費効率UPのための車体軽量化・タイヤの性能向上

自動車の燃費は、コストだけでなく環境負荷にも直結しています。燃費の向上には、エンジンの効率アップや車体の空気抵抗の低減、駆動系の改良のほか、アルミニウムや樹脂などを採用して車体を軽量化したり、転がり抵抗の低いタイヤにすることが有効といわれており、各自動車メーカーが素材の面から見直しを図り、技術を積み重ねています。

乗用車の原材料の変化

乗用車の原材料の変化

各地域の規制やラベリング

欧 州
欧州国旗
自動車のCO2排出量規制の強化 2012年から段階的に、走行距離1kmあたりの二酸化炭素の排出量を130g以下に抑える規制強化が始まり、2015年には完全実施が義務づけられています。
米 国
欧州国旗
環境対応車販売の義務づけ カリフォルニアの大気資源委員会は、2025年までに同州内で販売される新車の15%を、電気自動車などの環境対応車にすることを自動車メーカーに義務づけました。新規制は2017年モデルから適用されます。
日 本
欧州国旗
低燃費タイヤのラベリング制度 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会によるラベリング制度では、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能の両性能をグレーディングシステム(等級制度)に基づいて表示します。性能が一定以上のタイヤを「低燃費タイヤ」と定義しています。

自動車の性能向上をマテリアルの面から支えます

自動車の車体や燃料、タイヤなどに従来とは異なる機能が求められるようになると、素材から見直しが必要となることも少なくありません。JSRグループは従来から、タイヤをはじめ、自動車のさまざまな部分で使われる素材を提供してきました。そうした素材の機能を更に向上させることで、自動車全体の性能向上に貢献していきます。ここでは、当社グループの製品が自動車のどのような部分で使われているか、その一端をご紹介します。

自動車の燃費を左右するタイヤの「転がり抵抗」を
ゴムの分子によってコントロールします。

近年需要が高まっている「低燃費タイヤ」は、タイヤの転がり抵抗を低減して燃費を向上させたタイヤです。タイヤの転がり抵抗が燃費に与える影響はおよそ15%で、走行時の「タイヤに使われるゴムの変形」「接地している部分の摩擦」「前方からの空気抵抗」の3つの要因によって起こります。このうち「変形」は9割を占める主要因で、それに伴ってエネルギーロスが生じることが抵抗の原因となります。
タイヤ部材のうち特に重要なのが、唯一路面と接地する部材、タイヤトレッドです。タイヤの転がり抵抗におけるトレッド部分の影響は約50%なので、自動車全体で見ると燃費に約7.5%もの影響を与えます。
トレッド部分の転がり抵抗を低くしようとすると、一般にタイヤの摩擦力も低下するため、グリップ力が弱まって安全性に影響が出てしまいます。実用のためには「転がり抵抗を低くしつつも、グリップ力を高くする」という相反する性能を満たさねばなりません。
JSRの開発した低燃費タイヤ向け溶液重合SBR(S-SBR)は、グリップ力を左右するゴムの材質自体は変えずに、ゴムの分子と補強材の分子同士が結びつきやすくなるように分子の末端に変化を加えています。これにより、走行時の変形によるエネルギーロスを従来の45%減まで抑え、転がり抵抗が低くなるように設計されています。

トピック 需要増に応えるために、世界各地でゴムの生産を増強

タイの合弁会社の起工式

低燃費タイヤの需要拡大を受け、S-SBRの需要は世界的にますます拡大することが見込まれています。JSRは、2011年12月に四日市工場のS-SBRの生産能力を増強して、6万トン/年としました。欧州でもS-SBRの生産拠点を持ち、Styron Europe GmbHにて3万トン/年の引取権契約に基づいた生産を行っています。これにより、グローバルでの生産能力は、合計で9万トンとなりました。
また、タイでは新プラントが着工し、より一層の生産増強を図ります(第1期 2013年:5万トン、第2期 2015年予定:5万トン、計10万トン/年)。タイは自動車産業として広い裾野を基盤に持ち、大手タイヤメーカーの工場も立地していて国内市場が大きいことや、アジア域内への輸出拠点としての利便性も高いことから、グローバルでの供給拠点のひとつとして体制を強化していきます。

営業担当者の声
石化事業部 竹之内康雅

石化事業部 エラストマー部
竹之内 康雅

各国でのCO2削減のためのタイヤラベリング制度開始や新興国でのタイヤ需要増加により近年S-SBR需要が増加しており、お客様からの生産能力増強ニーズに応えるためタイの新プラント稼動を2013年より行います。また、品質面では安全性能を維持したまま低燃費性能のより良いS-SBRへ改良ニーズがあり開発を行っています。これらお客様のニーズに応えることで、より低燃費のタイヤが増え、CO2削減に貢献できればと考えています。

完成車の、目には見えないさまざまな場所で
マテリアルが性能向上に貢献しています。

自動車のJSRグループの製品

開発担当者の声
四日市研究センター 鼎健太郎

四日市研究センター 機能高分子研究所
鼎 健太郎

熱可塑性エラストマー開発においては、リサイクル性や軽量化などの最終製品に求められるニーズに加え、中間加工での工程簡略化・生産時間短縮等の環境負荷低減を意識した材料設計を心がけています。また、今後の電気自動車のような次世代エコカーには、従来技術の延長線上にない、新しい発想の素材が求められます。JSRの持つコア技術をベースに新しい技術を開発し、社会に貢献していきたいと思います。

海外営業担当者の声
Techno Polymer America, Inc. 片出真也

Techno Polymer America, Inc.
片出 真也

米国自動車マーケットでは、品質はもちろん、コストダウン要求が一層強まってきていると感じています。しかし、単に「材料単価の安い」製品を提供するのではなく、品質を維持・向上させながらユーザーの「トータルコストダウン」に繋がるような製品を提供することにより差別化を図り、自動車産業の発展に貢献しています。

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